陸上・駅伝

特集:駆け抜けた4years. 2020

箱根駅伝優勝の財産を後輩に “ダメダメ”世代の青山学院大主将・鈴木塁人

箱根駅伝優勝パレードでカメラに向かってガッツポーズを見せる鈴木主将

青山学院大は今年、箱根駅伝で2年ぶり5度目の総合優勝を果たした。今シーズンはなかなか結果が残せなかった中、シーズン最後に強い青学を見せつけた。そんなチームを作り上げた主将・鈴木塁人(4年、流通経大柏)は、自らを“ダメダメ”世代と呼んでいた。

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苦しい日々が続いたシーズン前半

連覇のかかった昨年の箱根駅伝、青学は東海大に負け、惜しくも2位だった。そのゴールテープを切ったのが鈴木だ。鈴木はそのとき、青学らしく笑顔でゴールをしたが、その裏には人一倍悔しい思いをしていた。

箱根駅伝後の香川丸亀ハーフマラソンでは4位で日本人トップ。1時間1分45秒の記録をたたき出した。しかし、トラックシーズンはなかなか調子が上がらなかった。

日本インカレで懸命に前を走る選手を追う鈴木

5月の関東インカレでは男子2部5000mと10000mに出場したが、それぞれ14位と17位。9月の日本インカレでは10000mに出場し、13位に終わった。

鈴木は突っ込んで先頭で走り、留学生にも積極的についていくのが特徴だ。しかしシーズンの前半はなかなかその走りができなかった。主将としても厳しくすると心に決めてラストイヤーを迎えたが、うまくチームをまとめられず、苦しい日々が続いていた。

駅伝シーズン開幕、それでも思い通りにいかず

三大駅伝の最初である出雲駅伝は貧血気味という状況もあり、直前に区間エントリーから外れた。区間エントリーに漏れてしまった選手たちは、出雲市陸協記録会に出場する。これは「もう一つの出雲駅伝」とも言われ、鈴木も出走した。

しかし結果は思い通りにいかず、13位。続く全日本大学駅伝は4区を任されたものの、後半苦しい走りで区間7位。チームとしても出雲は5位、全日本は2位と、不甲斐ない結果に終わった。

世間からはいつしか青学の一強の時代から、東海大・東洋大・駒沢大・國學院大を含めた「五強の時代」と言われるようになっていった。

青山キャンパスであった箱根駅伝壮行会、主将として意気込みを語った

全日本大学駅伝後、鈴木は「青学が弱くなったって言われないように、4年生みんなで団結して後輩たちに何か残せたらいいなと思う」と箱根駅伝に向け意気込みを語った。

ついに強い青学が復活、箱根優勝!

そして迎えた今年の箱根路。「戦国駅伝」とも言われ、一区間でもミスが許されない状況だった。

鈴木は3区にエントリーされた。岸本大紀(1年、三条)から1位で襷(たすき)を受け取り、先頭でガンガン走る鈴木らしい走りを取り戻した。東京国際大のイェゴン・ヴィンセント(1年、ケニア)に首位を譲ったものの、後続のライバル校を突き放す好走を見せた。

「(昨年11月末の)学連記録会後の合宿から調子が上がってきていると感じてて、4年目にして初めて箱根にピークを合わせられた。やっと主将として走りでチームに貢献することができました」と安堵の表情を浮かべた。

青学は4年生の頑張りが身を結び、往路優勝。さらに復路でも快走を続け、総合優勝をなし遂げた。見事、昨年の雪辱を果たした。

学内のアイビーホールで優勝報告会。鈴木もまた、喜びを口にした

鈴木は今年のチームを「4年生がだらしなかった分、1年生から4年生までが近かったのでまとまることができた。箱根駅伝優勝という形で一生語り継がれるチームの財産を残し、“ダメダメ”世代でもこれだけやったらこれだけ結果を出せることが証明できた」と振り返った。

卒業後は実業団に進み、競技を続ける。青学の卒業生が日本選手権やニューイヤー駅伝で活躍する姿に刺激を受けている鈴木は「まずは10000mのペースを上げ、ゆくゆくはマラソンに」と抱負を語った。次は実業団でも、青学の主将として培ったものを発揮していくだろう。

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