剣道

特集:駆け抜けた4years. 2020

中央大の本間渉と丸山大輔、65年ぶりのインカレ連覇を支えた2人の4年生

65年ぶりのインカレ連覇の喜びを北原監督(中央)とともに。本間と丸山はレギュラー9人の内、唯一の4年生だった

大学剣道界の日本一を決めるインカレ男子団体戦で、中央大は昨年度に続く連覇を達成した。レギュラー9人の内、4年生は2人、3年生は4人、2年生は3人。このチームをまとめあげ、主力としても活躍したのが、主将の本間渉(4年、九州学院)と副将の丸山大輔(4年、高輪)だ。卒業後は別々の進路先で剣道を続ける2人の、これまでの軌跡をたどる。

個人戦での活躍も光った2人の存在

本間は大学4年間をこう振り返る。「本当に楽しかったです。正直入学当初はこんなに結果を残せるとは思ってませんでした。周りの方々に恵まれていました。ただそれだけです」

インカレ連覇を達成。千葉ポートアリーナの中心で校歌・中大応援歌を響かせた

謙虚に語る本間だが、大事な場面で勝利を収める勝負強さは圧倒的だった。特に光ったのが、男子団体のインカレ決勝戦。昨年度も今年度も、本間の白星がチームの優勝を引き寄せた。勝因について問うと、本間はこう語る。

「昨年もそうでしたけど『チームワーク』だと思います。このチームワークの言葉の中には選手間だけではなく、組織全体のことを指してます。部員と監督の間にも深い信頼関係がありますし、部員同士は私生活でも1年生から4年生までコミュニケーションをとり、仲よくワイワイやっていたことが勝因だと思います」

2人は個人戦での活躍も光った。近年の中大旋風を巻き起こした立役者と言えるのが丸山だ。

大学3年生のとき、丸山が関東インカレで準優勝を、本間も3位入賞を果たした。この年のインカレ準々決勝で本間と丸山は相まみえ、この一戦を制した丸山が3位、本間がベスト8位入賞を収めた。

昨年度のインカレ個人戦、本間と丸山は準々決勝で対戦した

当時4年生で、中大のエースだった染矢椋太郎(現・宮崎県警)は、「後輩が頑張ってくれている。もっと4年生も頑張らなくては」と当時の3年生2人に信頼を寄せた。2人の活躍は、一層チーム内競争の激化を生むとともに、その後の団体戦に向け、期待を募らせる結果となった。

互いが「一番信頼できる存在」に

2人の剣道歴はとても長く、人生の5分の4以上に及ぶ約16年にもなる。丸山は「剣道をやっている父親に勧められ、家から近い道場に誘われたのが剣道を始めたきっかけだった」と振り返る。

高輪高校時代、丸山は3年生のときの関東大会で個人優勝を収め、インターハイも中堅として団体ベスト8へと導いた。中大を選んだ理由は「同じ道場、同じ高校、同じ中大に入った強い先輩方にあこがれて、昔から自分も入りたいと思ってました」と明かした。

一方、本間も「7つと5つ上にいる兄の影響を受けて、物心ついたときには自然と剣道を始めました。両親は剣道経験者ではなかったので、怒られるとかなく、伸び伸びとやってましたね。これが現在まで楽しく剣道を続けている要因の一つだと思います」と語る。

「高校時代はトップクラスの成績を残すような選手ではなかった」と口にした本間だが、高校剣道界の常勝軍団である九州学院高校で礼儀や技術に磨きをかけた。そして、中大出身の高校時代の監督に勧められ、中大への入学を希望。「正直、自信はまったくなかったけど、入学できたからには結果で高校時代の監督に恩返ししたいと思って、必死に頑張りました」と振り返った。

入学当初から、2人は中大同期の中で頭一つ抜き出ていた。「剣道部のことを一番に考えてくれている」という北原修監督の元、下級生の内から試合の経験を重ねた。そして、切磋琢磨(せっさたくま)し合ううちに、互いが「一番信頼できる存在」になっていった。

印象深いのが、試合後に選手たちが整列する場面。大学3年生のときの関東インカレ準々決勝で、前年の覇者・筑波大に代表者戦の末、丸山が勝利すると、人一倍喜んで丸山を笑顔で迎えたのが本間だった。

昨年度の関カレ準々決勝戦後。代表者戦を勝利した丸山に、本間が笑顔で駆け寄る

そして、学生最後の団体戦である今年度のインカレ決勝戦後、チームを優勝に導いた大将・本間の元に丸山が真っ先に駆け寄り、笑顔でねぎらった。レギュラーである同期2人の間柄が見える瞬間だった。

中大は平成最後の年にも、そして令和最初の年にも日本一として名を刻んだ。昨年度は24年ぶりの優勝に湧き、今回の連覇は中大勢にとって第1回、2回大会(1953、54年)以来、実に65年ぶりの快挙だった。

今年度のインカレ決勝戦後。逆転優勝を収めた本間を丸山が笑顔でねぎらう

社会人として更なる高みを目指す2人

主将としての1年間を振り返り、「助けられることの連続でした。監督をはじめ、同期にも後輩にも」と本間。主将として意識したことは「自由と規律」の線引きだという。

「剣道の練習以上に私生活が大事であると思ってて、挨拶から掃除、あらゆる『当たり前のこと』を徹底するように呼びかけました。チーム全体としてここを共通認識できたことが、今年度の優勝につながったんじゃないかなと少しばかり思います」

2連覇をなし遂げ、次は大学史上初の大会3連覇へ

有終の美を飾り、4年生は引退。主力として活躍した2人の存在は大きかったが、今回の連覇を経験した7人もの選手が在籍するため、選手層はまだまだ厚い。大学史上初の大会3連覇に向け、すでに新チームは動き出した。

「世界大会で優勝することが目標です」と、本間も更なる高みを目指す。社会人として剣道を続けていく4年生たちの今後の活躍にも注目したい。また選手の強化を始めて4年目を迎える中大女子剣士の活躍にも期待がかかる。

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