帝京大学・山中博生主将 「箱根3位」を達成し、歴代最強のチーム・最強の主将になる
今年1月に行われた箱根駅伝で2年ぶりにシード権を獲得した帝京大学駅伝競走部。今年度の主将には山中博生(4年、草津東)が就任した。チームは「箱根駅伝で大学最高順位の3位以内」という目標を掲げている。「歴代最強の主将になりたい」と山中は意気込んでおり、背中でチームを引っ張る。
箱根2区出走も「積極性が裏目に」
12月の中旬に中野孝行監督から「2区を山中に任せるから。頼んだぞ」という言葉をかけられた。11月の全日本大学駅伝以降から箱根の2区を意識していたこともあり、それほど驚きはなかったという。
昨年度主将の1区・西脇翔太(現・JR東日本)から7位で襷(たすき)を受け取ると、持ち味の「積極性」を生かして、予定よりも速いペースで走っていた。しかし、後半の上り坂で失速してしまい、14位で襷を渡す。タイムは1時間8分10秒。1時間7分台で走れなかったことを悔やみ、今回の走りを「65点」と自己分析した。「今回は積極性が裏目に出てしまったが、実際にコースを走ってわかったこともある。最後にもう1回リベンジしたいです」と花の2区でのリベンジを誓ってくれた。
高校では全国に届かず、ライバルに勝てず
山中は小学4年生から陸上を始めた。「球技とかはさっぱりダメで(笑)。やるなら陸上しかなかった」。本格的に長距離をやるようになったのは中学生の頃からだった。中学3年生になると、全国都道府県対抗男子駅伝の滋賀県代表として出場するところまで成長した。
高校は地元の草津東高校に進学。3年生の時は全国大会を狙えるチャンスだったが、新型コロナウイルスが流行し、インターハイは中止に。その後、全国高校駅伝出場を目指して練習に取り組んだが、夏に故障し、走り込みができないまま県予選を迎えることになってしまった。結果は2位。全国大会の舞台に立つことはできぬまま、山中の3年間が終わった。
この県予選で優勝したのは滋賀学園だった。主将は、現在東海大学で主将を務める梶谷優斗(4年、滋賀学園)。山中は中学生の頃から梶谷を意識していた。「中学生の頃は勝つことがあったが、高校に入ってからは梶谷に勝てなかった。追い越された感覚があった」と話し、「高校3年は苦しかった。チームとしても個人としても悔しい結果しか残せなかった」と当時を振り返った。
大学2年で転機「着実に力がついた感覚」
卒業後、山中は帝京大学に進学した。決めた理由の一つが、同じ草津東高校から帝京大学に進んだ中村風馬(現・富士通)の存在だった。「練習のことや日々の雰囲気を知りたかったので連絡を取り合っていました。中村さんが活躍しているのを見て、自分も成長できると思って進学を決めました」と明かしてくれた。大学入学直後は貧血や故障があったため練習を継続できず、「4年間ここでやっていけるのか心配だった」と不安もあった。しかし冬になると徐々に練習についていけるようになり、成長を感じる充実した日々を送っていた。
転機は大学2年の夏。夏合宿が始まる前のチーム内タイムトライアルで結果を残し、選抜合宿に帯同することになった。「自分が一番弱いと思って必死に食らいついた」と話すように、練習についていくので精いっぱいだったが、着実に力がついている感覚があったという。9月には5000mで約2年9カ月ぶりに自己ベストを記録(14分25秒26)し、その後も好調をキープしていた。10月の出雲駅伝(5区11位)で3大駅伝デビューを果たすと、直前合宿で絶好調だった勢いそのままに、箱根駅伝では8区6位と快走を見せた。
主力へと成長、ライバルにも久々勝利
3年生になると山中もチームを引っ張る立場になる。4月の記録会では10000mに出場し29分07秒15と自己ベストを更新。「28分台を出せなかったのは悔しかったが、次は絶対に出せる感覚があった」と確かな手応えを感じた。6月に行われた全日本大学駅伝関東地区選考会では3組目に抜擢(ばってき)。集団から飛び出すと、組3着でゴールし、チームの本戦出場に大きく貢献した。同じ組で走っていたライバル・梶谷にも先着し、「久しぶりに梶谷に勝つことができたのはうれしかった」と笑顔で話した。
その後の夏合宿こそ体調不良等もあり苦しんだものの、辛抱強く練習をこなした。駅伝シーズンでは重要な役割や区間を任されるようになることが増えていった。「2年目と違って、練習の強度が上がり、先頭で引っ張ることが増えた分苦しむことも多かった」と3年目の重圧を感じている部分がありながらも、「その経験が今の自分にとってもプラスになっている」と振り返る。
チームのためにも「箱根2区でリベンジを」
今年度のチーム目標は、過去最高順位を更新する「箱根駅伝総合3位」に決まった。4月に入ってからは練習の質も上がっているが、チーム全体で目標に向かって取り組んでいる。中でも山中は下級生の成長に目を見張る。「以前までは練習についていくだけの1年生が多かったが、今年の1年生はどんどん前に出てくる。上級生が下級生の成長をセーブしないように心がけていて、チーム内競争ができる環境を作れるようにしたい」と分析。1年生の中でも松井一(大分東明)の名前を挙げ、「練習でも積極的に前を走り、切れ味のあるスパートも持っている」と評価する。
チーム目標を達成するためには山中自身も成長しなければいけないと感じており、個人としての目標も立てている。「まずはトラックで10000mの大学最高記録(28分20秒63)を更新する。その中で27分台を狙っていきたい。駅伝ではエース区間を常に担って、最後は箱根の2区でリベンジしたい。今年の箱根が終わってからずっと2区を意識して練習しています」と力強く話してくれた。最後に、どんな主将になりたいかと尋ねたところ「強い選手、強いチーム、箱根が終わった時に強かったと言ってもらえる代になりたい」という答えが返ってきた。歴代最強のチーム、歴代最強の主将を目指す山中博生のラストイヤーから目が離せない。