野球

連載: プロが語る4years.

苦しんだ先の明るい未来を思って進み続ける 千葉ロッテマリーンズ藤岡裕大3完

厳しいプロの世界で勝負するために、理想を追い求め続けます(撮影・佐伯航平)

連載「プロが語る4years.」の第8弾は、東都大学野球リーグ1部の亜細亜大からトヨタ自動車を経て千葉ロッテマリーンズで活躍する藤岡裕大(26)です。取材・執筆は4years.の野球応援団長である笠川真一朗さんが担当します。3回の連載の最終回は、夢だったプロの舞台に進み、いま考えることについてです。

指名漏れから立ち上がり、トヨタ自動車で活躍 千葉ロッテマリーンズ藤岡裕大2

ルーキーイヤー全試合出場も満足せず

ついに藤岡は、夢だったプロ野球の世界に進みました。

ルーキーイヤーから2番ショートの定位置を獲得し、開幕スタメン出場を果たします。終わってみれば2018年の全試合に出場。まさに即戦力としての役割を果たしました。ものすごく立派な活躍だと思いましたが、藤岡本人は決して納得してません。「全然何もできなかった。打席に立つと、いままで見たことのない、経験したことのない球が毎日やってくる。守っててもバッターの足が速いから、焦りも出る」。プロの壁にぶち当たっていたのです。

「いい結果が出てないのに試合に使ってもらえた。それが逆に申し訳ないなと思ったけど、プロは試合に出てナンボの世界だと思ってる」と藤岡は言います。「このありがたい経験を生かしていかないと意味がないし、それがチームへの恩返しになる。『いい経験させてもらったなぁ』で終わってはいけないから。(プロ2年目の)去年はけがで1軍から離脱したし、なおさらそう思う。しっかりとした結果を残して、チームを強くしていける選手になりたい」と、強い口調で語ってくれました。そんな思いを抱えながら、1月の自主トレで懸命に練習を重ねていました。

危機感と向上心は絶対に大切

どんな選手になりたいのかと尋ねてみると「打って投げて走って守れる選手になる。すべてを完璧に追い求めるのは難しい世界だけど、総合力で勝負できる選手になりたい」と返ってきました。

僕も自主トレをお手伝いして、藤岡の真剣さをビシビシ感じました(撮影・佐伯航平)

下からどんどん若い選手が入ってきて、定位置が確約されてはいません。プロは厳しい世界です。強い危機感の中で日々プレーしています。でも藤岡は言います。「いつ自分がトッププレイヤーになるかは、選手自身も誰も分からないと思う。でも、いつでも『なれる』と思ってやらないと、やりがいもない。向上心をなくしたらユニフォームを脱がないといけないから。いつどこできっかけをつかむか分からないからこそ、そこに向けての準備は常にしておきたい。だから日ごろの姿勢とか練習の取り組みを大事にする。危機感と向上心は選手にとって絶対に大切。いつ自分の人生が変わるか分からん世界やから」と。

指名漏れのときもそうですが、藤岡にだって何度も心が折れそうなときがあったはずです。それでも前を向き続けられたのは、夢を叶(かな)えたいという強い気持ちと、自分には野球しかない、これで食べていきたいと断言できるほど野球を愛しているからです。

だからこそ、これからも前を向いて頑張るのだと思います。嫌なこと、つらいことばっかりじゃないからです。勝てばうれしいし、打てたらうれしいという気持ちは大前提に持っています。やればやるだけ自分に返ってくるのがプロ野球の世界。どこまでも貪欲で、負けず嫌いな藤岡なら、これから先も何とかするんじゃないかと僕は確信するのです。

自分の可能性を信じて、心折らずに。野球でなくすべてのことにも通じることだと思います(撮影・藤井みさ)

簡単な世界じゃないというのも分かってるんですけど、「この人ならどうにかするんじゃないか」と思えるほどに強い気持ちを持ってる選手だと感じました。だから僕は応援します。同期の星です。

自分を信じてあげないと、終わってしまう

連載1回目の冒頭にも書きましたが、藤岡に取材をしていいか確認したときに「あんまりこういう経験してる人も少ないと思うから、俺でよかったら話すよ」と言ってくれました。そのあとに「自分みたいな経験をしてる人は少ないと思うけど、プロを目標にしてる人の励みになりたい」とも言いました。難しい経験をしたからこそ、野球をしている学生たちに伝えられることがあります。

「実力があるのに、心が折れてあきらめる人を何人も見てきた。自分の可能性を自分でつぶしてほしくない。すごくもったいないことだと思うから。自分を信じてあげないと終わってしまう。『これをやったからプロにいける!』というのはないし、努力を継続したからってうまくいくわけじゃない。でも苦しんだその先に明るい未来が待ってると思ったら、きっと乗り越えられるから。頑張ってほしい。俺も『絶対にプロにいく!』『絶対に活躍する!』っていう気持ちだけは忘れたことがないから」と、大学生のみなさんへのメッセージを預かりました。苦労してきた藤岡が言うからこそ響く言葉です。野球で食べていきたいと思ってるプレイヤーの方はどうか、あきらめずに頑張ってください。僕はそんな選手のみなさんを心から応援します。

「これで俺が結果を残さないと説得力も出ないから、こっから頑張るよ」と、藤岡は笑っていましたが、本当に頑張るのだと思います。

こっから先は気持ちだけじゃダメ

「プロにいく」という夢を叶えた藤岡ですが、「プロで活躍する」という夢はまだ叶えていません。「気持ちは間違いなく大切だけど、活躍するためには、こっから先は気持ちだけじゃダメ。しっかり技術を身につけたい」と、強い思いを語ってくれました。藤岡もまだまだ夢の途中です。

毎日危機感と向上心を持って野球に取り組む(ルーキーイヤーのキャンプにて、撮影・山口裕起)

「いけ! 藤岡裕大! 夢見たその先へ!」
彼の応援歌の一節です。取材していて、「これはほんまにピッタリやなぁ」と思いました。

僕もあきらめずくじけずにしつこく行動してたら、野球の仕事にたどりつきました。
まだまだ叶えたい夢や目標もあります。
そしてもっともっと人に勇気や希望を与えられる人間でいたいなと思います。
裕大の話を聞いてると、負けずに頑張ろうと強く思いました。
強く思ったというよりも、自分にもういちど頑張り続けるぞと強く誓いました。
下を向いてる時間は僕にはありません、くじけずに前進、前進です!
みなさんも一緒に頑張りましょう!

そして最後に!
ありがとう裕大!
お互い頑張ろうね!
俺も絶対、負けへんよ!

バスケがしたくて、少年は仲間を連れて街に出た 京都ハンナリーズ岡田優介1

プロが語る4years.