陸上・駅伝

國學院大・浦野雄平 青木・土方との約束を守る「有言実行」のクロカン優勝

優勝者インタビューに笑顔で答える浦野(すべて撮影・藤井みさ)

第103回日本選手権クロスカントリー

2月22日@福岡・国営海の中道海浜公園クロスカントリーコース
シニア男子10km
1位 浦野雄平(國學院大4年) 29分18秒
2位 田村和希(住友電工) 29分24秒
3位 田村友佑(黒崎播磨) 29分34秒

陸上のクロスカントリー日本選手権が2月22日、福岡・海の中道海浜公園であった。シニア男子10kmで初優勝を飾ったのは、國學院大の浦野雄平(4年、富山商)。学生最後のレースを笑顔で締めくくった。

國學院大・浦野雄平 4年間を糧に、自分の可能性をさらに広げる一歩へ

勝負どころを見極め、笑顔でゴール

晴天だが、海からの強い風が吹きつける中で始まったレース。浦野は最初から先頭集団につき、レースを進めていった。2kmのコースを5周するレースで、3周目が終わっても余裕があり、4周目でも余裕があったので勝負どころを探っていた。最後の1周、トップ争いは浦野と田村和希(青山学院大~住友電工)、田村友佑(ゆうすけ、黒崎播磨)の3人に絞られた。9kmを過ぎたところで浦野がスパートし、ふたりを引き離す。そのまま独走体制に入った浦野は、何度も後ろを振り返りながら最後の直線へ。両手を広げ、笑顔でゴールテープを切ったあと、大きくガッツポーズをした。

ゴール前から笑顔だった浦野。充実感あふれる表情を見せた

これで浦野は5月9日に国立競技場で開催される日本選手権10000mの参加資格を得た。自身にとって初めての日本選手権出場となり、ここで好結果を出せば東京オリンピックの代表も見えてくる。そのことについて問われると「まだ速さも強さも足りないですけど、自国開催のオリンピックということで限りなく可能性はあると思うので、チャレンジしていきたいです」と意気込みを語った。

恩師に優勝をプレゼントできた

ラストイヤーを振り返ると、関東インカレ2部の5000m、10000mで日本人トップ、7月のホクレンで5000m自己ベストを更新した浦野だが、駅伝シーズンは出雲駅伝3区区間3位、全日本大学駅伝は2区区間2位、箱根駅伝は5区区間3位と、本人いわく「不甲斐ないレースが続いた」。なんとかここで結果を出したいという気持ちで走り、つかみ取った優勝。自然と笑顔になった。

前田康弘監督からは、レース前に「風があるので勝負どころをしっかり見極めよう、最後スプリント勝負に持ち込もう」と言われていた。普段は先頭でレースを引っ張ることの多い浦野だが、その言葉を胸に我慢し、田村兄弟の背中を見て落ち着いて走った。「最後に前田さんにいい形で優勝をプレゼントできてよかったです」と恩師への思いも口にする。

田村和希(中央)、友佑(右)の兄弟が前を引っ張る展開になり、抑えてうしろにぴったりとついた

青木、土方と交わした「約束」

3月1日の東京マラソンには、4年間ともに戦ってきた土方英和(4年、埼玉栄)がエントリーしている。「青木(祐人、4年、愛知)が丸亀(ハーフマラソン)でいい走りをして(1時間1分32秒、日本学生歴代8位、國學院新記録)、僕が次つないで、土方の東京マラソンに弾みをつけるというのが、僕たちの間での約束事だったので。土方からも『優勝頼むよ』と言われてたんで、後押しできる走りができたんじゃないかと思います」

土方に期待することを聞くと「吉田くん(祐也、青山学院大)がいいタイム(2時間8分30秒)で走ってるので、それを超えるタイムと、日本学生トップは当たり前、というところで勝負してもらいたいです」と盟友にエールを送った。

レース後、田村和希(左)は「山をやってるから強い」と浦野を評した

卒業後は実業団・富士通に進む。2月17日に入寮したばかりだといい、なじめそうですか?と聞くと「これからですね」と笑った。「大学のチームとは違った、少し締まったようなところもありつつ、オンオフはしっかり切り替えていくという印象です」。チームにはトラックでは1500mから10000m、さらにはマラソンまで日本トップレベルの選手が揃う。幅広い競技で強さを見せるチームで、自らも幅を広げてチャレンジしたいとここを選んだ。最高の結果をもって、新しいステップに進むときがやってきた。

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