國學院大・土方英和 初マラソンで2時間10分切り、学生最後の目標達成
東京マラソン2020
3月1日@都庁前スタート、東京駅前をフィニッシュとする42.195km
第28位 土方英和(國學院大學) 2時間9分50秒
3月1日に都内のコースで東京マラソン2020があり、國學院大のキャプテンとしてチームをけん引してきた土方英和(4年、埼玉栄)が初マラソンに臨んだ。目標としていた2時間10分切り(サブテン)を達成し、学生最後のレースに花を添えた。
日本記録更新ペースに食らいつく
スタート時点で11.7度とこの時期にしては高い気温の中、レースはスタートした。ペースメーカーは1kmあたり2分55秒から56秒と2分58秒という、いずれも日本記録更新ペースの設定だった。先頭集団に海外招待選手とともに、大迫傑(ナイキ)、井上大仁(MHPS)らが走る。土方は設楽悠太(ホンダ)らとともに、大きな第2集団を形成した。
ハーフの通過は1時間2分23秒。ハーフマラソンの自己ベストが1時間2分2秒の土方にとって、かなりのハイペースだったことは間違いない。20kmから25kmまでの5kmで15分12秒かかると、そこから徐々にペースが落ちる。最後は力をふりしぼり、両手を広げてゴール。ゴール後、思わず地面に手をつく場面もあった。2時間9分50秒は、日本学生歴代3位のタイムだった。
自分だけ失敗するわけにはいかない
東京オリンピック代表選考もかかっていたこのレース。「ペースが速くなるのはわかってた」と土方は言う。「(1km)3分を切るのはわかってたので、とにかくいけるところまでいって、きつくなってから粘るしかないと思ってました」。どこからきついと感じましたか? と聞くと「けっこうもう序盤からきつくて……最後までもつかな? と思いながら走ってました。半分ぐらいからずっときつかったです」と苦笑いした。
走り込んで強くなることで知られている國學院大だが、土方にとってもマラソンの距離は未経験。「本当に長くて、いままで感じたことがないぐらいでした」と感想をもらす。35km地点のところに石川昌伸コーチがいて、「青木と浦野に続け!」と激励してくれた。
4年間ともに戦ってきた青木祐人(4年、愛知)は2月2日の丸亀ハーフマラソンで日本学生歴代9位の1時間1分32秒で走り、國學院大記録を塗り替えた。浦野雄平(4年、富山商)は22日のクロカン日本選手権男子シニア10kmで優勝し、日本選手権10000mの出場権を獲得した。青木、浦野、土方と学生最後のレースで好結果をつなげるのが、3人での約束。「本当に自分だけ失敗するレースをして、不甲斐ない結果で終わるわけにはいかないという思いで走りました。粘れた要因にもなったと思います」
記録とともに、学生トップになることも意識した。「30km過ぎで小森くん(稜太、4年、いなべ総合学院)と一緒になって、お互いキツい表情になってるなって。彼には勝たなきゃいけないと思って走ったので、勝ててよかったです」
初マラソンは「70点」も、大舞台が収穫に
2月17日に大学の寮を出てホンダの寮に移った土方だが、マラソンに向けては前田康弘監督がメニューを作ってくれた。最後の調整も國學院大で行った。先日、別府大分毎日マラソンで青山学院大の吉田祐也(4年、東農大第三)が2時間8分30秒で走った。浦野は「(土方には)吉田くんの記録を超えてほしい」と言い、今日のハイペースからは現在中央大の監督である藤原正和氏がもつ学生記録、2時間8分12秒の更新も期待された。しかしレース前に前田監督からは「あんまり意気込みすぎず、とにかく(2時間)10分切りを狙え」と言われていた。土方の目標もまず第一にそこにあった。「なんとかよかったなと思います」とホッとした表情だった。
初マラソンは何点ですか? と問われると「70点ぐらい」。「まだまだいけたなっていうところ、これから改善していけるところがたくさんあるなと思いました」という。今回は走り始めからいつもと少し感覚が違う、本調子ではないと感じていた。ここまでの体作り、調整も含めて70点だという。今後はマラソンでパリオリンピックを目指す。まずはトラックでしっかりスピードを強化してから、マラソンに進みたいと話してくれた。今回日本のトップ選手と走ったことは、新しい舞台に挑戦する上でこの上ない経験となった。
学生生活、悔いなく笑顔で終わる
これが國學院大のユニフォームで走る最後のレースとなった。「昨日の夜とかも、これで学生最後なんだなって思いがこみあげてきて……本当に思い入れのある、いい色ですね」とユニフォームに目をやり笑った。
最後に、笑顔で学生生活を終われますか? と聞いた。「最後の最後で悔いだけは残したくないという思いで走ったので。悔いなく走れました」。「歴史を変える挑戦」の先頭に立ち、結果を出し続けてきたキャプテンの、学生最後の挑戦が終わった。