大学アメフト

関学アメフトのエースRB三宅昂輝 飛躍の一年を経て、大爆発のラストイヤーへ

左サイドを抜け、社会人最強の富士通を相手で独走タッチダウン(撮影・安本夏望)

関西学院大アメフト部ファイターズは1月3日のライスボウルで富士通フロンティアーズに14-38で敗れ、2019-20年シーズンを終えた。4連覇を果たした富士通に完敗したが、東京ドームを埋めた3万人の観衆の度肝を抜いた走りがあった。関学のエースRB(ランニングバック)三宅昂輝(3年、関西学院)が64ydを駆け抜けたタッチダウン(TD)ランだ。 

最強の富士通を相手に独走タッチダウン

0-21で迎えた第2クオーター(Q11分すぎ。自陣36ydからの第2ダウン8ydで、関学は早稲田との甲子園ボウルで2点コンバージョンに使った「左カウンターピッチ」をコールした。QBFB(フルバック)、TB(テールバック)の3人がタテに並ぶIフォーメーションから、FBに入った鶴留輝斗(きらと、3年、啓明学院)が右のオフガードあたりに突っ込む。OL(オフェンスライン)の左ガードに入った高木慶太(3年、関西学院)も右へプルアウト。ボールを持ったQB奥野耕世(3年、関西学院)は軽く右へ展開するふりをして、左へ弧を描くように駆け出したTBの三宅へピッチした。 

三宅が左オープンに出る。その視線の先でWR鈴木海斗(3年、横浜南陵)が富士通のLBにナイスブロック。LBを外へ追いやり、三宅が縦に切れ上がる走路ができていた。さらにその前に、OLの森田陸斗(4年、関西学院)がセンターの位置から巨体を揺らしながらリードブロッカーとして参戦。富士通の最後尾を守るDBは、森田が邪魔で三宅をタックルしにいけない。森田がそのDBとぶつかる瞬間、三宅はその塊の左を駆け抜けた。左のサイドライン際を決死の形相で駆け上がり、追ってきた2016年度の関学主将である富士通LB山岸明生のタックルにも倒れず、エンドゾーンへ走り込んだ。 

ライスボウルで富士通のディフェンスを突破する(撮影・安本夏望)

このシーズン、学生相手に独走TDを重ねた力は本物だった。「個人的に技術の面で自信がついた1年でした。西日本代表決定戦の立命戦やライスボウルで自分のスピードが通用したのは、今年やっていく上で自信になりましたね」。4月25日の明治大との定期戦(神戸・王子スタジアム)から、春のシーズンが始まる予定だ。三宅が2020年の関学のキーマンであるのは間違いない。 

小学校まではラグビー、関学中学部からアメフト

スピードには絶対的な自信を持っている三宅は、関学の中学部から青ひとすじで10年目を迎える。小学校のころはクラブチームでラグビーをしていた。「ウィングでボールを持って外を走って、スピードが自慢でした」。運動会のリレーでもアンカーを何度も任された。とにかく走ることには自信があった。

関学中学部入学を機にアメフトの道へ。最初からRBで、ほかのポジションの経験はない。「昔は体重がなくて、とにかくスピードで相手を抜き去る感じでした」と話す。高等部に上がってOLの動きが分かってくると、もっとうまく走れるようになった。ラグビーをやめてから10年が経つが、ラグビー愛も冷めていない。いまもトップリーグや大学選手権の試合を見るし、ラグビーの動画もしょっちゅう見ている。「瞬間的な加速や跳ぶ動き、一歩の踏み出し方なんかが、僕がやってることと似てます」 

3回生の1年間で、相手を見て走れるようになった(撮影・安本夏望)

1回生でぶつかった壁、走りの強弱を覚えた

アメフトで最初に大きな壁にぶつかったのは、大学1回生のときだ。上回生のLBDBにスピード負けし、思うようにゲインできなかった。ルーキーイヤーから甲子園ボウルにも出たが、走れない。もどかしさを感じた。「(当時3回生だった)山口(祐介)さんたちがいる中で出させてもらったのに……」。いまのままの実力では通用しないと痛感した。常にフルスピードで走っていたのを、走りに強弱をつけるようにした。「基本的に8割のスピードです。相手のディフェンスやこっちのオフェンスの動きを判断した瞬間に、フルスピードになるようにしました。ほかの人がやると結構難しいみたいなんですけど、僕はスピードを持ち味にしてるから、できます」 

立命との西日本代表決定戦で先制の71yd独走タッチダウンを決めた(撮影・安本夏望)

さらに、昨シーズンは視野を広く持つようにした。OL5人がいない状態で走り方の練習を繰り返し、ディフェンス第三列の動きをつかもうとした。そして相手をブロックしてくれるWRの動きと、最後尾を守るセーフティーの動きを見る目を養った。それが生きたのが、昨年121日、西日本代表決定戦の立命戦だ。第1Qに2本の独走TDを決めたが、いずれも密集から抜け出す瞬間に空いているスペースを見つけ、フルスピードで走り抜けた。2本目は、右サイドを縦に上がってから左へカットバック。TDにした。「全体の状況を把握するのが速くなりました。(相手の)後ろの方までちゃんと見て走るようにしてます。下級生のときは目の前しか見られなくて足が止まってましたが、いまでは広い視野を持って走れるようになりましたね」。スピードとカットバックを武器とするランナーに変貌(へんぼう)した。 

西日本代表決定戦での2本目の独走タッチダウン。まずは右サイドを駆け上がった(撮影・安本夏望)
味方のレシーバーのブロックをよく見て、左へカットバックしてタッチダウン(撮影・篠原大輔)

日大フェニックスのRB川上をライバル視

挫折を味わった1回生の甲子園ボウルの相手は日大フェニックスだった。相手のルーキーRB川上理宇(みちたか、現3年、佼成学園)は、中央突破でTDを決めた。「1年目から活躍してる同期で、タイプも似てるところがあります。会ったことはないんですけど、ライバル視はしてます。高校の最後もクリスマスボウルで川上がいた佼成学園に負けたんで」と、闘志を燃やす。日大はこの秋、2年ぶりに関東1TOP8で戦う。「また甲子園ボウルで対戦できるチャンスがあるんで、リベンジしたい気持ちはあります」 

4回生としての覚悟も十分だ。「自分だけでなく、後輩の長所を伸ばしてあげたいと思います。僕が教えられることはできるだけ教えて、バック全体でうまくなっていきたいですね」。関学の21番のラストイヤーにどんな輝きを見せるのか。早くも楽しみになってきた。

甲子園ボウル出場を決め、喜ぶ三宅(21番、撮影・篠原大輔)

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