30度目の頂点狙う関学「攻め抜いて日本一に」 15日に早稲田と甲子園ボウル
アメフト全日本大学選手権決勝・甲子園ボウル
12月15日@阪神甲子園球場
関西学院大(西日本代表、関西2位)vs 早稲田大(東日本代表、関東)
アメフトの学生日本一を決める甲子園ボウルが12月15日にキックオフを迎える。2年連続で関西学院大と早稲田大の顔合わせ。関学は2年連続30度目の優勝を、早稲田は6回目の舞台で初の頂点を狙う。12日は関学の鳥内秀晃監督(61)と5人の選手が阪神甲子園球場内で記者会見に臨んだ。そのあと選手たちはフィールドへ出て練習し、3日後の戦いへ向けて気持ちを高めた。
最後の舞台 鳥内監督「学生が勝って喜んでくれたらええ」
今シーズン限りでの退任を表明している鳥内秀晃監督は、珍しく神妙な表情で切り出した。「向こうは甲子園ボウルに向けて1年かけてやってきてる。リーグ戦では手の内見せてませんわ。QBはコントロールがいいし、いいレシーバーもおる。ランナーもいっぱいおる。オフェンスでは奥野が逃げ回る場面も増えてくる。大変ちゃうかな、というのはありますわ」。関学の学生時代に甲子園ボウルで日大に4年連続で負けたのが、指導者を志すきっかけだった。そして監督として迎える最後の甲子園ボウル。感慨深いですかと聞かれると、「全然?」とそっけなく言った。「力を全部出して負けたらしゃあない。でも負けるときはだいたい力を出せんまま負けてる。それだけはないようにせんとな」。常勝軍団の監督として、1年間で唯一ホッとできるのは甲子園ボウルに勝った瞬間だけだったという。「このために1年やってきてるからね。その一瞬のために。ほんでも主役は学生や。勝って喜んでくれたら、それでええんちゃうの?」
主将のDL寺岡「相手のオフェンスを破壊する」
主将でDL(ディフェンスライン)の寺岡芳樹(4年、関西学院)は、昨年の甲子園ボウルはけがで出られず、2年ぶりに聖地に立つ。西日本代表決定戦ではリーグ戦で敗れた立命にリベンジできたが、チームの現状には不安を抱いている。「2回目の立命戦に勝って、チームに緩い雰囲気が出てしまった」。早稲田のOL(オフェンスライン)の印象を聞かれると、「個が強いというより全体のコンビネーションがうまい」と返した。自分の武器を尋ねられると「当たり強さでしかないと思ってます。相手のOLのブロックに対して、LOSを破壊できるようにしたい」と言った。「ディフェンスとして攻めて攻めてタックルして、ランを通させない。攻めたプレーをしていきたい」。ひときわ大きな声で、そう宣言した。甲子園ボウルが学生同士で戦う最後のゲーム。今シーズンのチームの目標である「学生圧倒」を体現する最後のチャンスでもある。
DL板敷「ディフェンスで勝たせる」
全日本大学選手権に入ってから大暴れしているのがDL板敷勁至(いたしき・けいし、4年、池田)だ。西日本代表決定戦では3プレー連続でQBサックを決めた。もともとLBだった板敷は、ボールへの嗅覚を自分の武器として挙げた。パスラッシュで意識していることを問われると「しっかりスタートを切ることと、相手のOLを見ながらQBを見つつ、そこに最短でいくことです」と話した。昨年はディフェンスでの出番は少なかったが、敵陣で得意のパントブロックを決め、そこからオフェンスがタッチダウンした。今年はディフェンスの主軸として甲子園の芝を踏む。「QBサックやファンブルが起こると、チームにいい流れがくる。1年の集大成を出して、ディフェンスで勝たせたいです」
エースQB奥野「最初のオフェンスで先制する」
QB(クオーターバック)の奥野耕世(3年、関西学院)は今シーズンを通して「無理投げ」をしないのを意識してきた。昨年の西日本代表決定戦で体勢を崩しながら投げたり、カバーされているレシーバーに投げたりで三つのインターセプトを食らったからだ。「無理投げでのインターセプトは少なくなったと思います。我慢するところは我慢して、次のオフェンスをどうするか考えるようにしてます」。一方で自分の持ち味を存分に出せなくなっているとも感じている。「無理投げしないことを気にしすぎて、スクランブルの切れ味とか、動きながら投げるパスの精度が落ちたなと思います」と言った。昨年の甲子園ボウルでは、2回生ながらMVPと年間最優秀選手に輝いた。「去年もらった賞は去年のことと考えてて、たまたま運よくもらえた賞だと思ってます。今年は今年で自分のやることをやって、最初のオフェンスで先制点を取って、そのまま流れを持っていって勝ちます」
WR阿部「細かい振りで1対1に勝ってタッチダウンを」
副将のWR阿部拓朗(4年、池田)は2年前の甲子園での負けを口にした。「出場機会は少なかったんですけど、日大にやられて負けを知りました。いま、チームとしてホッとした感じがあって、2年前とすごく似てると思ってます。気の緩みがあると、甲子園で負けてしまう。現状として弱いので、やってきたことを出しきって勝ちたいです。スタートとフィニッシュにかけて戦います」。レシーバーとしての自分について「足が速いわけでも背がすごく高いわけでもない。何でもできるオールマイティさが自分の強みだと思ってます」と語った。身体能力でのアドバンテージがない中で、どうやってDB(ディフェンスバック)との1対1の勝負に勝つかと問われ、こう言った。「細かいことを大事にしてます。小さい振りを仕掛けてフリーになる。その細かい部分にこだわって、この2週間はやってきました」。昨年は早稲田相手に4回のパスキャッチで80ydを稼いだが、タッチダウンはなかった。今年は取りますか? との問いに「はい」と力強く返した。
エースRB三宅「1対1で勝つ」
エースRB(ランニングバック)の三宅昂輝(3年、関西学院)は、12月1日の西日本代表決定戦で二つの独走タッチダウンを決めた。持ち味は第一線を抜けた瞬間の加速だが、視野が広く、相手の裏をついてのカットバックも光る。「去年はスピードだけだったけど、今年は相手との1対1で勝って粘り強く走るようにしてます」。早稲田のディフェンスで警戒する選手として野城翔也(4年、都立西)と主将の池田直人(4年、早大学院)という二人のLB(ラインバッカー)を挙げた。「プレースピードが速いので負けないようにしたい」