大学アメフト

特集:第73回甲子園ボウル

エース“欠場”、関学は一つになった

ニーダウンのプレーでフィールドに立ったRB山口(34番)は、仲間の肩を借りて戻る

第73回甲子園ボウル

12月16日@兵庫・阪神甲子園球場
関西学院大(関西1位) 37-20 早稲田大(関東)
関学は2年ぶり29度目の優勝

アメフトの学生日本一を決める甲子園ボウルは12月16日、阪神甲子園球場であり、関学が早大に1度もリードを許さず、2年ぶりの優勝を飾った。年間最優秀選手と甲子園ボウル最優秀選手には関学のQB奥野耕世(2年、関西学院)が、甲子園ボウル敢闘選手には早大のQB柴崎哲平(3年、早大学院)が選ばれた。

この日は、西日本代表決定戦で負傷した絶対的なエースRB山口祐介(4年、横浜栄)が欠場。RBの仲間たちや同じ4回生たちは、自分の腕に山口の背番号である「34」と書いて試合に臨んだ。

DL三笠が輝いた

幕開けは関学のオフェンスから。まず奥野がWR阿部拓朗(3年、池田)へのパスを通して攻撃権を更新。次は山口と同じ4回生RBの中村行佑(4年、啓明学院)が14ydの前進。中央付近を鋭く抜け出す走りのキレに、「俺が勝たせる」の覚悟が見て取れた。さらに山口の思いを背負ったRBが続く。渡邊大(3年、神戸大付中教)が右オープンを48yd駆け抜け、ゴール前1ydへ。ここから中村の中央突破を2度続け、待望の先制タッチダウン(TD)を奪った。

続く早稲田のオフェンスシリーズで、この日の関学ディフェンスの主役が最初の輝きを放つ。DL三笠大輔(4年、追手門学院)が、早稲田のベストOLである香取大勇(3年、佼成学園)をブルラッシュで押し下げ、最後に内側からかわして柴崎に豪快なサックをお見舞いした。その後パスを決められ、RB元山伊織(4年、豊中)の7ydTDランで同点とされたが、関学としては早稲田のOLに三笠の強さを強く意識づけられたのが大きかった。関学は第1クオーター(Q)13分すぎ、キッカー安藤亘祐(3年、関西学院)が21ydのフィールドゴール(FG)を決めて10-7とする。

RB中村は右手のテーピングの上に、山口に「34」と書いてもらった

第2Qに入り、また安藤のFG成功で13-7としたあと、早稲田の自陣からのパントを関学のDL板敷勁至(いたしき・けいし、3年、池田)がブロック。ゴール前1ydからの攻撃につなげ、主将のQB光藤航哉(みつどう、4年、同志社国際)が楽々持ち込んでTD。20-7となった。オフェンスが攻めあぐね始めていただけに、「この試合はパントブロックにかけて、正確に手を出せるように練習してきました」という板敷の職人技が大きかった。

さらに関学は次のオフェンスシリーズで2年生RBの三宅昂輝(関西学院)が中央左を抜け、右へカットバック。41ydのTDランを決めて27-7と突き放した。三宅は今シーズンこれまで、自分の得意なプレーだけで出番をもらっていたが、山口が戦列を離れたためにエース級に抜擢(ばってき)され、一気にあらゆるランプレーに対応できるように仕上げてきた。山口もプレーのアサイメント(役割分担)について教えてくれた。そして甲子園で持ち前のスピードを生かし、チームトップの計103ydを駆けた。

試合中はインカムをつけて情報伝達に徹した山口(中央、赤のビブス)

次の早稲田の攻撃では、またDL三笠がやった。三笠の足をひっかけようと飛び込んできた2人を軽く処理。パスだと分かってすばやく両手を挙げる。基本通りの動きが功を奏し、この手にボールが当たる。焦らずにこのボールをつかみ、パスインターセプトだ。「向こうのQBはパスのリリースポイントが低いので、練習からハンズアップを徹底してました。僕自身下級生のときの経験から、ビッグゲームで4回生がビッグプレーをするとチームが変わるって知ってたので、今日は狙ってました」。その通りのパフォーマンスに、試合後の三笠は笑いが止まらなかった。

残り26秒、山口がフィールドへ

関学が27-7とリードして迎えた後半は、どちらが先に得点するかが焦点だったが、関学だった。第3Q12分すぎにQB光藤がランのフェイクからTE對馬隆太(4年、箕面自由学園)へ1ydのTDパスを決め、34-7に。これで大勢は決した。

関学は37-20とリードして迎えた試合残り26秒、ゴール前での第4ダウンを前にタイムアウトを取る。そして背番号34がこの日初めてヘルメットをかぶった。大けがで戦列を離れ、もう走れないエースRB山口を何とか甲子園ボウルのフィールドに立たせたいと、オフェンスの4回生たちが「ビクトリーフォーメーション」を提案した。大きくリードを奪えたために、そのチャンスが来たのだ。足を引きずり、山口が泣きながらフィールドに出て行った。このとき、関学は控えの4回生も投入していた。C(センター)以外のオフェンス10人が4回生で、甲子園ボウル最後のプレーに臨んだ。

スナップを受けたQB光藤がゆっくりとニーダウン。山口は苦労をともにしてきた4回生に両脇を抱えられ、サイドラインに下がった。そこからの早稲田のオフェンスを封じて、試合が終わった。

QB奥野(右)もRB渡邊も「34」とともに戦った

試合後、山口は報道陣に囲まれて言った。「これまでずっと大きなけがもなく来たのに、なんでこんな集大成のときにやってしもたんやろ、なんでやろと悩みました。でも、何とか切り替えて、同期や後輩に託すことにしました。みんなが僕をもう一回甲子園に立たせると言ってくれたので、そのためにチームを支える存在になろうと思いました。ほんとに甲子園に立たせてもらえて、最高でした。みんなに感謝してます」。何度も泣きそうになりながら、しっかりと話した。

関学のOLの5人は、春から山口にブロッキングに関してさまざまな注文をつけられながら、成長してきた。唯一の4回生である光岡昌典(箕面自由学園)は言った。「山口じゃなくても走れるように、早稲田のディフェンスをボコボコにしたろうと決めました。そのために後輩たちと必死で体を張りました。これまでチームを引っ張ってくれた山口をこのフィールドに立たせられて、ほんまによかった」

絶対的なエースの不在に、チーム全体がかみ合った。関学がチームの絆で29度目の甲子園ボウル制覇を果たした。