55番とともに戦う甲子園 関学LB大竹泰生
DLを経験して当たり強く
寒空の下で満面の笑みを浮かべた。12月2日の西日本代表決定戦。立命館大に劇的な逆転勝利を収めた直後、活躍の光った関学のLB(ラインバッカー)大竹泰生(3年、関西学院)の元へ行くと、「僕でいいですか?」と控えめなひとこと。昨春の日大戦以来の取材に「久々でうれしいです」。戦いを終えたばかりのファイターは、汗をしたたらせ、愛くるしい表情を見せた。
普段の穏やかさは、フィールドに出ると一変する。再戦となった立命との戦いは、先制を許す苦しい展開に。「ビッグプレーを狙おうと思った」と大竹。相手のラインを突破し、QB(クオーターバック)荒木優也(3年、立命館守山)に襲いかかり、QBサック。この日は2度のQBサックを決めた。ボールキャリアへ果敢に迫り、タックル数もチーム最多の9。「最後まで狙い続けて、投げるまで追いかけました」
今春は、守備の最前線に立った。中学からアメフトを始め、LB一筋。大学3回生で初めて転向したポジションはDL(ディフェンスライン)だった。DLの中でも、大外のDE(ディフェンスエンド)を任された。当初は地面に手をついて低くセットすることに違和感があったという。「OLがデカくて強いし、勝負できなかった」。だが、春を通して挑み続けると、当たり負けしなくなった。器用さと高いプレーの理解度を武器にしていた大竹が、DLを経験してフィジカル面も強化できた。
秋になり、本職の第2列に帰ってきた。今シーズンは関大戦を除き、開幕戦から先発出場。だが、同じLBの海崎悠(2年、追手門学院)や繁治亮依(しげじ、2年、関西学院)ほどの活躍はなかった。「試合に出てただけで、目立ったプレーができてなかった。フラストレーションはたまってましたね」。2週間前、リーグ最終節の立命戦でも同じだった。「1年下の2人が活躍しててうれしいんですけど、自分も絶対に活躍したい」。闘争心を燃やしていた。甲子園ボウルをかけた大一番で、たまっていたものをすべてぶつけた。
影で支えてくれた4回生
「4回生をここで負けさせたくない」。この試合には特別な思いがあった。LBの4回生は、パートリーダーの倉西康太(明治学院)だけ。試合前には倉西に「責任は俺が取るから、思い切ってやってこい」と背中を押してもらった。他のパートは複数の4回生がいる。最上級生としての役割を分担するところを、倉西は一人で担ってきた。しかも、試合に出るわけでもない。高校時に副将だった大竹は、プレーで見せられない倉西の苦労が痛いほど理解できた。「倉西さんが影で支えてくれた。プレーで見せられるのは僕らなんで、本当に倉西さんを甲子園に連れていけてよかった」。心底うれしそうに、大竹は言った。
今シーズンの飛躍の原点となった地へ戻る。1回生からLBの交代要員やキッキングチームのメンバーとして試合に出てきた。昨春からスターターとなったが、秋はけがに悩まされた。昨年の甲子園ボウルは、スタンドから敗戦を見つめることしかできなかった。「情けなかった。去年の甲子園ボウルが、この1年の原動力です」。今年は大きなけがなく過ごしてきた。先輩や同期、後輩とともに飛躍を遂げた1年。最高の舞台で、最高の笑顔を咲かせる。