大学アメフト

緊迫! アメフト選手に復帰するコージ・トクダさん、関学前監督の鳥内さんと面談

面談のあと、鳥内さんは「QBはやったことないで」と言いながら、コージさんにハンドオフ(すべて撮影・北川直樹)

4years.のアメフト応援団長であるコージ・トクダさん(32)がこのほど、10年ぶりに選手に復帰すると宣言しました。トレーニングは積んできているコージさんですが、競技に復帰となると不安もあります。そこで朝日新聞スポーツ部の記者で、かつて関西学院大ファイターズで活躍した榊原一生さん(40)が関学時代の恩師に依頼し、3月中旬にコージさんに会ってもらいました。動画もあわせてお楽しみ下さい。

【学生必見】アメフト選手に復帰するコージさんが、恐怖の「鳥内面談」を体験。ふたりが交わした男と男の約束とは?

 

監督時代は新4回生と1対1で向き合った

恩師とは2019-20年シーズンまで関学の監督を28年間務め、12度の学生日本一に導いた鳥内秀晃さん(61)です。鳥内さんは1990年代後半から、新チーム発足と同時に新4回生と1対1で面談してきました。そこで「どんな男になんねん」と問いかけ、学生ラストイヤーをどう生きるのか、男と男の約束をしてきたのです。では、面談スタート!

 鳥内 「ほな、いこか。ケータイ出して」

コージ 「えっ?」

鳥内 「録音せな。言うたことに責任持たせるためや。面談が終わったら、紙に書いて毎日見なあかん。そうせな成長できひん」 

アメフトに関しては本気でやります、と答えるコージさん

コージさんは法政大学アメフト部で甲子園ボウルに3度出場し、4年生のときは主将を務めました。卒業後にお笑い芸人になり、杉浦大毅さんとコンビ「ブリリアン」を結成すると、2017年に「ブルぞんちえみ with B」としてブレーク。このほどコンビ解散と選手復帰を発表しました。今後はタレントを続けながら、アメフトの社会人Xリーグでプレーする予定です。 

Xリーグで真剣にやんの?

鳥内 「Xリーグでやるのは分かんねんけど、真剣にやんの?」

コージ 「真剣に。ベースは芸能界で頑張っていくことですが、アメフトには助けてもらった部分があります。いまの自分に何ができるのか考えた結果が、Xリーグ挑戦でした」

鳥内 「聞きたいのは、メインの芸能界の仕事もある中、アメフトをどこまで本気でやんの、ってことやな。練習に何時間費やせて、技術練習とけがをしない体をどうつくんの、と。知名度があって注目されるんはええことや。でも、けがしたら意味ない。メインの仕事に支障が出る。具体的に計画を練らんと、人間はサボりやからやめてまう。そこまでできるんやったら、やってくれたらええ」

コージ 「フットボールにおいては真剣にやります。そして観戦に来てくれるお客さんを増やしたいです。楽しんでもらえように、何かできるのか考えていきたいです」 

鳥内さんの面談がクローズアップされたのは、20185月に日大の選手による関学の選手への反則問題が起きたときでした。日大と対比される形で、選手の自主性を引き出す鳥内監督の指導哲学に光が当たったのです。昨年末には、鳥内さんの歩んできた道をまとめた著書『どんな男になんねん』(ベースボール・マガジン社)も発売されました。 

楽しい、ってどういうことやと思う?

鳥内 「さっき『楽しんでもらえるように』って言うたけど、楽しいってどういうことやと考えてるん?」

アメフトの1対1の勝負に目を向けてもらえるようにしてほしい、と訴える鳥内さん

コージ 「最初に観戦したのが楽しくて、2回目も行きたくなるってことです。1回目は誘われて行ったけど、よく分からないまま終わっちゃうのがよくあると思うんです。誘われた人が『もう一回行きたい』と言ってもらえるような、そんな試合がしたいです。最近でいうとプロバスケットボールのBリーグです。音楽をガンガン流して、コートなのに火も出る。ああいう盛り上がりがアメフトにもあれば、だいぶ楽しくなるはずです」

鳥内 「選手にとっての『楽しい』は、笑いながらやるってことやない。いろんなポジションごとの勝負、そこにえげつない迫力が出てくる。我々もライバル相手にニコニコ勝負はできへん。楽しい、いうのを勘違いしたらあかん。選手にとっての『楽しい』いうのはそういうこと。迫力のある勝負に、お客さんも感動する。えげつない1対1の勝負を見たいねん。本番の中身を見てや、と。フィールドのあちこちで常に1対1の勝負があるんやから」

コージ 「はい。僕の役目はそういう部分もあるんだなと思います」 

アメフトファンに伝えるべきことが、はっきりした

鳥内さんの迫力に押され気味だったコージさん。面談を終え「なぜアメフト復帰を決めたのか、アメフトファンのみなさんに何を伝えるべきなのか、はっきりしました」と話しました。 

鳥内さんは1992年に関学の監督に就任。当時はコーチの人数が少なく、鳥内さんが一人で指導しているような状態でした。94年から3年続けて甲子園ボウル出場を逃したことから「4回生がコーチの役目をできるとこまで育てなあかん」と、面談を始めました。この記事を書いている私も、関学アメフト部の副将になったばかりの20011月に、この面談を受けました。

「目標はどこやねん?」と問われ「日本一です。社会人に勝っての日本一です」と返すと、「ほんなら、お前はそのために何ができんねん」と、具体的な行動目標を求められました。

この面談のおかげもあって、チーム史上初めて、社会人チームを破っての日本一までたどりつけました。 

榊原記者(右)の提案で、緊迫の面談が実現した

面談について、コージさんが鳥内さんに尋ねました。 

コージ 「監督時代の学生との面談時間はどれぐらいだったんですか?」

鳥内 「1時間かかるヤツもおるし、人それぞれや」

コージ 「関学の学生にも、うまく話せない選手はいるんですか?」

鳥内 「それはな、こっちが聞き出さなあかんねん。本当はどう思ってるねん? 言うてるけど、ほんまにやる気あんの? できへんかったらどうするねん? って」

コージ 「いまなら監督のひとことが重いって理解できるんですけど、学生だったら結構プレッシャーかも、と思いました」

鳥内 「早い段階から経験しとく方が得やねん。4回生はリミットが決まってる。時間は増えない。考えて毎日過ごして『はよ気付けよ』と。人生は一回しかない。4回生の一年も一回だけ。終わって後悔するやつも、ぎょうさんおる。並の人間はそれでええかもしれんけど、お前の人生は並でええの? と。そういうこっちゃ。頑張って」

コージ 「これだから関学はずっと強いんですね。アメフトだけでなく、すべてがつながってる。今日は人生について話したような感じです」 

帰り際、ちゃっかりサインをお願いした鳥内さん

独特の緊張感がある面談を終えた鳥内さんとコージさん。

「応援してるで」

鳥内さんが言うと、ふたりはがっちり握手を交わしました。

ブリリアン解散、アメフト復帰……。コージさんがすべて語りました