陸上・駅伝

連載:M高史の陸上まるかじり

NTT西日本・竹ノ内佳樹選手 日大OBでMGC6位、「雑草魂」に燃える!

昨年9月のMGCで6位に入った竹ノ内佳樹選手(撮影・佐伯航平)

「M高史の駅伝まるかじり」今回はNTT西日本陸上競技部の竹ノ内佳樹選手です。東京オリンピック代表内定の座をかけたMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)で6位。自己記録は2時間10分01秒と他の出場選手たちに比べると注目度は決して高くありませんでしたが、下馬評を覆し上位に食い込みました。好きな言葉は「雑草魂」という竹ノ内選手にお話をうかがいました。

たまたま始めた陸上競技

大阪府出身の竹ノ内佳樹選手。中学まではサッカー部でした。関西大学第一高校に入学。当初、部活に入る予定はなかったそうですが「新入生のオリエンテーションで、たまたま友達に誘われて、なんとなく陸上部へ入りました(笑)」といいます。ちなみに、竹ノ内選手を誘って一緒に行った友達は1ヶ月でやめてしまったそうです(笑)。

MGC6位に入った竹ノ内佳樹選手にお話をうかがってきました(写真提供・NTT西日本陸上競技部)

関大一高は駅伝強豪校ではありませんでしたが、コツコツと練習を積み重ね、大阪府高校総体5000mで優勝。5000mの自己記録は14分42秒まで伸ばしましたが、全国的に目立つ成績はまったくなかったそうです。高校卒業後は日本大学へ進みます。

雑草魂で箱根、全日本、関東インカレに出場

高校時代、全国的な活躍のなかった竹ノ内選手の好きな言葉は「雑草魂」。
「雑草のようにたくましく育つ」と話す竹ノ内選手からは、いつか花を咲かせたいというメラメラとした闘志が伝わってきます。

ゼッケン02が竹ノ内選手。写真は全日本大学駅伝関東地区選考会(写真は本人提供)

途中で指導者が変わり、練習スタイルの変化もあったそうですが「トラックよりもロードの方が得意」「長い距離の方がより力を発揮できる」という特性もあって、関東インカレではハーフマラソンで7位入賞。箱根駅伝、全日本大学駅伝にはともに3回出場しました。

「特に箱根駅伝は沿道の応援が凄かったです。MGCも声援は凄かったですが、やはり箱根の大声援は衝撃的でした。アンカーの10区を走ったときは耳鳴りがするほどでした!」と振り返ります。

学生時代は競技も勉強も遊びも頑張り、オンオフの切り換えを意識されていたそうです。「メリハリを心がけていました。練習だけは絶対に妥協しなかったですし、そこだけはゆずれなかったです」。気分転換はしつつも競技に関してはこだわりと集中力を持っていました。

日本大学では箱根駅伝、全日本大学駅伝にそれぞれ3度ずつ出場しました。前列左から4番目が竹ノ内選手(写真は本人提供)

MGC出場を決めた福岡での激走

日大卒業後はNTT西日本に進みます。世界陸上男子マラソンで3度の日本代表経験のある清水康次監督のもとで練習を積み重ね、着実に力をつけていきました。

「清水監督ご自身も大学まで目立った実績がなく、実業団で力をつけられた方なので、選手のタイプとしても似ているところがあると思います」

初マラソンは2017年3月のびわ湖毎日マラソン。結果は2時間13分33秒です。「思っていたよりもきつくなくて、楽しかったですね! 長い距離に向いているなぁ、いけるかも」と思われたそうです。

その年の12月、福岡国際マラソンでは2時間10分01秒で7位(日本人3位)となり、MGC出場権を獲得しました。

福岡国際マラソンでMGC出場権を獲得しました(撮影・朝日新聞社)

「練習がパーフェクトにできていたので、いける感触はありました」と練習の段階から手ごたえがあったそうです。「周りからは『もうちょっとで10分を切れた』と言われましたが、実は終盤、足がつりそうでした。MGCとかタイムとかよりも、とにかくフィニッシュしようと必死で、無事に帰ってきてホッとしましたね(笑)」と激走の裏側を教えていただきました。

なんとかスタートラインに立てたMGCで6位

昨年9月に行われたMGCに向けては、決して順風満帆ではなかったそうです。「5、6月はよく練習もできていたのですが、7月に疲労骨折してしまいました。軽症だったんですが、決して順調ではなかったですね。8月中旬くらいからやっとポイント練習らしいのができ始めて、なんとか9月のMGCに間に合わせた感じでした。なので本番は足の痛みもなくスタート地点に立てたことが嬉しかったですね!」

MGCは独特の緊張感があったそうです。「スタート前にはいろいろなことが起きて、場の雰囲気も一回和んで逆にリラックスできたんですけど(笑)、みんな、またすぐ集中していましたね」。

レースではスタートしてすぐ、設楽悠太選手(HONDA)が飛び出しました。「速いな〜、最後までいくのかな」と思い、大集団についてレースを進めます。

暑さが話題になっていましたが「そんなに感じなかったですね。あとから聞いたらまわりは暑かったって言ってましたが、あまり何も考えなかったです。条件はまわりも一緒ですし」。暑さへの耐性、さらにブレないメンタルの強さも感じました。

レース中は「最初に遅れたら嫌だなと必死でしたよ(笑)。最後まで体力が持つかなと」。必死の思いで粘りを見せ、6位でフィニッシュ。東京オリンピックの補欠となった4位・大塚祥平選手(九電工)、5位・橋本崚選手(GMOアスリーツ)に次ぐ結果となりました。

充実した表情でゴールする竹ノ内選手(撮影・佐伯航平)

「すごく嬉しかったですね。直前の故障もあった中、なんとか走りきって、忘れられないレースとなりました」

MGCのあとは11月にニューヨークシティマラソンに出場し、8位。自身初の海外マラソンで納得いく走りができたそうです。

今後の目標と学生アスリートへのメッセージ

この4月でNTT西日本入社6年目となり、チームの主将にも就任しました。「チームとしてはニューイヤー駅伝入賞が目標ですね。個人ではマラソンでまずは2時間10分は切りたいです。ゆくゆくは日の丸をつけたいと思いますし、雑草のようにチャンスをうかがいたいですね!」

今年からNTT西日本陸上競技部の主将に就任。走りでチームを引っ張ります(写真提供・NTT西日本陸上競技部)

さらに「将来的には指導者になりたいです。そのためにひたすら結果を出そうとつとめているところです。特に大学生を指導したいですね。指導者として箱根駅伝に挑戦してみたいです!」と語る竹ノ内選手。

いつの日か「竹ノ内監督」として運営管理車に乗っている日が見られるのかもしれませんね!

学生アスリートの皆さんへの熱いメッセージもいただきました。竹ノ内選手、今後のますますの活躍に注目ですね!(写真提供・NTT西日本陸上競技部)

最後に現役の学生アスリートの皆さんにメッセージもいただきました。

「陸上だけに限らずいろんなものを見たり学んだりすることは大切です。自分は学生時代、ずば抜けた結果を出すことができませんでしたが、常に自分自身に『なぜ』を問い続けることが大事だと思います。今なぜ走れないのか、今なぜ記録が止まっているのか、どうして結果が出ないのか、そのためにいま何ができるのか、選択肢は無数にあると思うので、1つ1つクリアしていくことが大事だと思います」

好きな言葉「雑草魂」を胸に、常に「なぜ」を問い続け前に進む竹ノ内選手の挑戦は続きます。

M高史の陸上まるかじり