大学陸上・駅伝

特集:うちの大学、ここに注目 2020

創部100周年の中大陸上部 箱根駅伝シード奪還へ、いまこそチームの結束を力に

田母神前主将(右)から池田主将へ、伝統の襷(たすき)が託された

中央大学体育連盟には50を超える部活が所属し、すべての中大アスリートがそれぞれの目標に向かって日々全力で競技に打ち込んでいる。昨年も複数の部活がインカレやリーグ戦で優勝するなど、中大は全国屈指のスポーツ強豪校の一つだ。本来であれば、東京オリンピックが開催され、スポーツイヤーになるはずだった2020年。現在、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、スポーツ界では数多くの試合で中止や延期が余儀なくされている。さらに、部活の練習や活動自体も制限され、厳しい状況が続く。

そんな中でも選手たちは試行錯誤を重ねながら、いまできることに全力で取り組み、来るべき試合に備えている。今年も数多くの部活で活躍が期待される中大体育会。今回の企画では、今年、創部100周年を迎え、箱根駅伝で9年振りにシード権を奪回し、3位以内を目標に掲げる陸上競技部の長距離ブロックに注目したい。

箱根駅伝12位の中央大 最後に見せた二井の走り、支えた舟津と田母神の笑顔
中央大、伝統の「C」復活のために 4年生から引き継がれた戦い続けるスピリッツ

2月中旬、宮崎合宿で手応えを感じ

中大は今年の箱根駅伝を12位で終えた。ゴール後の大手町で行われた結果報告会では、選手たちの表情が暗かった。目標の10位以内のシード権獲得には及ばず、下を向く選手たち。だが、次への戦いはもう始まっていた。報告会最後に選手スタッフ、マネージャー全員で円陣を組んだ。「来年絶対シードとるぞ!」。当時3年生で今年、長距離ブロック主将を務める池田勘汰(4年、玉野光南)が力強く宣言した。

「いざ自分がチームを引っ張っていくとなったとき、とくに1月のチームの立ち上がりに苦労した部分はあります」と池田は言う。実際にチームの先頭に立ってみると、これまでチームを引っ張ってきた先輩たちの思い、そして主将としての重圧を改めて実感した。主将という立場ゆえに悩みは付き物。だが、互いに仲のいい同期の4年生は、箱根経験者が7人と実績も十分。頼もしい同期が池田主将の脇をしっかりと固める。

今年の箱根駅伝を終え、新チームはスタートを切った

新チームは幸先のいいスタートを切った。2月2日に行われた神奈川マラソン(ハーフマラソン)と香川丸亀国際ハーフマラソンでは多くの選手が自己ベストを更新。中でも、今年の箱根で1年生ながら1区を任された千守倫央(2年、松山商業)は62分台をマークし、大幅に自己ベスト更新。1秒差で池田が続いた。2月12~20日には数名の新1年生も含め、宮崎合宿を実施。副将の畝(うね)拓夢(4年、倉敷)は「これまでにない充実した合宿だった」と手応えをにじませていた。

ルーキー吉居が快走、刺激し合う雰囲気に

しかし、この時期から徐々に新型コロナウイルスの影響が出始める。2月17日には東京マラソン一般の部の中止が発表された。多くの学生ランナーが照準に定めていた立川シティハーフマラソンも、2月下旬に中止が決まった。

そこで中大は立川ハーフが開催予定だった3月8日に、関係者のみでの10000m学内記録会を実施。マネージャーや部員たちが中心となり、記録会を運営した。冷たい雨が降る中、期待のルーキ―吉居大和(1年、仙台育英)が28分35秒65を記録し、いきなり学内トップでフィニッシュ。後輩に負けじと大森太楽(4年、鳥取城北)や三須健乃介(4年、韮山)も後に続き、自己ベストを大幅更新するなど、計6人が28分台をマークした。合宿の成果は結果となって表れた。

3月8日に実施した中大記録会で、ルーキー吉居(右端)が力を見せつけた

このチームの結果について、三須は「(このチームは)ONとOFFの切り替えがはっきりしています。池田はみんなを縛って走る選手じゃなくて、みんなを楽しく鼓舞(こぶ)できる選手。そういうチームカラーが出ていて、いい雰囲気でできています。自分も4年生として、走りでキャプテンと副キャプテンを支えていきたい」と、引き締まった表情で答えてくれた。

一方、チームをまとめる主将の池田は、自己ベストを1秒更新するも悔しい表情を見せた。「チーム全体の結果は良くて、これまでやってきたことは間違ってないなと思いました。ただ、同じ宮崎合宿で一緒にやっていたメンバーがあれだけいい結果を残すと、個人としては悔しさしかないですね」

苦笑いを浮かべた池田と同様に、畝も自己ベスト更新を逃し、悔しさの残るレースとなった。それでも、どこかスッキリとした表情で話してくれた。「同じ練習ができていたので、僕たちも同じ走りができるんじゃないかと思わせてくれた。悔しさもありますが、自分の自信にもつながりました」。ともに練習をしている仲間たちの好結果はチーム全体にいい刺激を与え、相乗効果を生み出していた。

記録会で池田は自身の結果を悔しさとともに受け止めたが、チームの雰囲気のよさを実感した

離れて練習するいま、みんなで走る楽しさを再認識

その後は3月28日に予定されていた学内記録会やその他の試合に向け、選手たちは練習を重ねた。しかし、新型コロナウイルスの影響で記録会や試合は中止。大学側からは、全体で集まっての活動自粛がすべての部活に通達された。3月末、長距離ブロックの部員は実家に帰るか寮に残るかを各自が選択。約半数は実家に帰省したが、寮に残った選手も含め、いまは個人で練習を続けている。

困難な状況に直面している中でも、池田と畝はオンライン取材に快く応じてくれた。いまのチーム状況と自身の思いをたずねると、返ってきたのは「いまの期間をどう生かすか」といった前向きな言葉だった。池田は言う。

「箱根では単独走での力が求められます。個人練習は自分との戦いですし、実際、モチベーションの維持に苦労している選手が多いのは事実です。でもいまだからこそ気づくことがたくさんあって……。普段の練習での女子マネージャーのありがたさだったり、みんなで走ることが楽しかったり。当たり前のことが当たり前じゃないんだなと。チーム全体は離ればなれですが、オンラインで最低週に1回ミーティングをするなど、みんながどういう状況なのかは共有しています」

畝も続ける。「チーム状況が良かっただけに、正直もったいないなとは思います。でもどこの大学も選手たちも状況は一緒ですので、割り切っています。人それぞれではあると思いますが、僕はそこまで苦じゃないです。走ること以外も部屋でたくさんできる時間があるので、リフレッシュできています(笑)」

箱根駅伝がすべてではないけれど……

たくさんの不安はある。うまくいかないことも多い。でもこの期間をいかに自身の成長につなげられるか、選手たち自身が考え、過ごしている。今年の中大のスローガンは「〜新生藤原隊の逆襲〜100年目の挑戦」。藤原正和監督が2016年に監督就任後、初めてスカウトをした選手の1期生が現在の4年生たちだ。大学駅伝はまさしく群雄割拠(ぐんゆうかっきょ)の“戦国駅伝”ではあるが、中大も箱根で上位を争うだけの戦力はある。

寮の壁には今年のスローガンが掲げられている

現在、箱根駅伝が開催されるかもまだ分からない状況に変わりはない。しかし池田は笑顔で言う。「箱根がすべてではありません。でも今年はラストイヤーですし、箱根があると信じて練習し続けます」

創部100周年の挑戦は前途多難な逆境の最中。だがその逆境をはねのけた先に、新生藤原隊最高の笑顔が広がっているはずだ。