大学バレー

柳田将洋から次世代へ 初のオンラインアカデミー“Garden”で広がる夢

「Yanagida Masahiro Academy “Garden”」は今後、オンラインだけでなくリアルな場でも実施していく(写真提供・アミューズ)

「日本代表やプロとして海外を経験するようになって、自分の経験をいかにしてこれからの世代に還元していくかを常に考えていました」。そう話すバレーボール男子日本代表の柳田将洋(27、ユナイテッド・バレーズ)は5月23、24日、自身の知識や経験を自ら発信する「Yanagida Masahiro Academy “Garden”」をオンラインで実施した。学生限定で実施した第1弾の1日目を終えての思いを柳田にたずねた。

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好調の中でリーグ中止となり帰国、コロナ禍のいまだからこそ

プロ3年目となった19-20シーズン、柳田はヨーロッパチャンピオンズリーグにも参戦するドイツの強豪、ユナイテッド・バレーズに移籍した。主力の一人として活躍し、チームはリーグ戦8連勝で2位と勢いに乗っていた。しかし新型コロナウイルスの感染拡大を受け、ブンデスリーガは3月半ばで中止。「こういう形で終わってしまったことは残念ですけど、それまでやってきたことは無駄ではないはずです。ここで得たものをしっかり思い出しながら、再開を待ちたいと思います」。複雑な思いを胸に、柳田は3月17日、帰国した。

プロ3年目の19-20シーズンはユナイテッド・バレーズでプレーした(写真提供・アミューズ)

その後、ホテルで2週間待機。それから数日は日本代表に合流したものの、4月7日の緊急事態宣言で代表活動も中止となった。いまは家の中でできるトレーニングに切り替え、来シーズン、そして来年の東京オリンピックに向け、心身ともに調整を続けている。

このコロナ禍の中でも新たな可能性を感じたのが、今回の「Yanagida Masahiro Academy “Garden”」だ。次世代に自分の経験を伝えるには、自分が直接、選手たちの元に行くのがベストだろうと考えていた。実は今年の3月には「柳田将洋選手フランクフルト応援ツアー 親子参加コース」と題したイベントも予定していた。ユナイテッド・バレーズの試合や練習の見学に加え、柳田が参加者にバレーボールレッスンをするというものだ。ツアーは中止になったものの、オンラインであれば全国の人を対象にインタラクティブ形式で実施できる。このメリットを生かすべく、自ら準備を進めた。

自分の感覚を言語化、伝えることで自分も学び

第1弾のテーマに選んだのは「スキル編:サーブ」。慶應義塾大時代から自身の強みとして磨いてきたサーブで始めるのが一番自分らしいだろう、という思いからだ。「考えてみたら、自分の感覚を言語化することを意外としてこなかったな、って。自分の感覚をいかに言葉にのせるかということが大事なので、それを改めて振り返るきっかけになりました。いろんな人に伝えるために、一貫した意見を言えるのかということにもつながりますし」。様々な競技歴の人にも分かりやすく伝えるためにはどうしたらいいか。写真や動画だけではなく、図も用いたパワーポイントも用意した。

5月23、24日に実施された回はそれぞれ定員40人とし、とくに1日目は学生限定で募集した。参加者からは事前に質問を求め、可能な範囲で自身のサーブ動画も送ってもらった。参加者は小学生から大学生まで幅が広く、質問はサーブに関する具体的なポイントやシーン、またメンタルなどと多岐に亘(わた)った。1時間半のアカデミーを終え、「いままで感覚で競技していたところを人に伝えるために形にすることで、僕自身も改めて学ぶことができましたし、有意義な時間を過ごせました」と柳田は振り返る。

柳田自身がパワーポイントを作り、“Garden”に臨んだ(写真提供・アミューズ)

6月6日の第2弾でも「スキル編:サーブ」を予定しており、今度は定員を250人まで拡大する(現在はすでに定員に達しているが、今後、追加募集する可能性あり)。「第1弾よりかはインタラクティブ性が下がると思われますが、僕から話せる範囲は増えますし、第1弾よりも(パワーポイントの)スライドも増やしながら、サーブのバリエーションなんかも増やせたらいいなと考えています」と、柳田自身も第2弾を楽しみにしている。

大学生へ、どんどん自分から手を伸ばして

「Yanagida Masahiro Academy “Garden”」は今後、オンラインだけではなくリアルな場での実施も構想している。「スキル編はサーブ以外でもやりたいですし、他のバレーボール選手と一緒に話したり、バレーボールの枠を飛び出して別の競技の選手とコラボしたりするのもやってみたいです。テーマもプロフェッショナルとかリーダーシップとか、枠を決めずに広くいろんな話を聞いてもらえる機会をつくれたら、“Garden”をやる意義も大きくなるんじゃないかな」

柳田自身、来シーズンの先行きはまだ見えず、東京オリンピックが延期になったことで、あらゆる準備を調整し直さなければいけなくなった。「直近だと、この状況が終わった後を見据えて自分の体をしっかりコントロールして調整し直す。もちろんその先には東京オリンピックがありますので、モチベーションを高めてベストな状況をつくっていきます」。未曽有(みぞう)の事態にも、いまできることを一つひとつ取り組む。坦々と発する言葉の裏に、日本代表主将の覚悟がうかがえた。

昨秋のワールドカップで日本は4位と躍進を遂げた(右が柳田、撮影・朝日新聞社)

最後に大学生へ、そしてラストイヤーを迎えた大学4年生へ、エールを送ってくれた。

「家の中で過ごすいまはできることが限られてしまうけど、それでもいまは情報がほしいと思ったらたくさん手に取れる時代です。だからどんどん自分から手を伸ばしてほしい。なんでそれなのか、将来どうしたいのかとか、そういうところまで落とし込んで手を伸ばすと、そのキャッチしたものの価値が高まると思う。いまは自分と向き合う時間としても使ってほしいです。とくに4年生はいろんな思いがあると思います。今後、どういう道を歩んでいくかは人それぞれ違うだろうけど、それまで競技を続けてきたことは事実として残るし、競技を通していろんなことを経験してきたと思う。もし今後、いまとは別の道を歩んだとしても、きっと生きる瞬間はある。それを信じて、次のステージでも頑張ってほしい。僕もそういった、違うステージにいっても感じられるような話やテーマも積極的に伝えていけたらと思っています」

DPstore「Yanagida Masahiro Academy "Garden"」

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