バレー

特集:全日本バレー大学選手権2019

早稲田がインカレ3連覇 宮浦健人がいま思う4年生が残した“財産”の意味

全日本インカレは早稲田大の3年連続7回目の優勝で幕を閉じた(すべて撮影・松永早弥香)

第72回 全日本大学男子選手権 決勝

12月1日@東京・大田区総合体育館
早稲田大3(25-16.25-22.23-25.25-19)1筑波大
早稲田大が3年連続7回目の優勝

12月1日、全日本インカレ最終日を迎え、男女決勝と3位決定戦が実施された。男子は早稲田大が筑波大を3-1で破り3年連続7回目の優勝、女子は筑波大が福岡大をフルセットの末に下し、2連連続8回目の優勝を手にした。

準決勝の中央大戦、不安が顕著になった

やはり「王者・早稲田」は強かった。昨年、一昨年の全日本インカレを制しただけでなく、今シーズンの春と秋の関東リーグも制覇。3連覇は盤石だろうと言われる中で迎えた大会ではあったが、主将の堀江友裕(4年、和歌山・開智)は「トーナメントは何が起こるか分からない。3連覇ということは考えず、一つひとつの試合に向き合いたい」と一戦必勝を誓っていた。

開幕してからも、スコアだけを見ればどの試合も危なげなく勝利を収めているように見える。だが、決勝進出を決めた準決勝の中央大戦では相手の勢いに屈し、セットを失った。3-1で勝利はしたものの、試合後の松井泰二監督の評価は厳しかった。

準決勝の中央大戦は3-1で勝ちきったものの、課題が残る試合となった

「中大がよかったというのもありますけど、だからといってそのまま受けてしまうのはどうか。試合に対して向かっていく気持ち、その気持ちで相手よりも勝らないと小さなバレーになってしまう。まずはサーブから相手を崩す。『相手を押しきるんだ』と試合に臨まなければいけないと感じさせられる、反省の残る試合でした」

準決勝以降は1面のセンターコート。「負ければ終わり」の緊張感も加わり、ルーキーの大塚達宣(洛南)も「高校時代とは比べられないぐらい緊張した」と振り返ったほど。大塚だけでなく、全日本インカレでは初めてトスを上げたセッターの中村駿介(3年、大塚)や、秋リーグからレギュラーとして出場している吉田悠眞(2年、洛南)にも不安はあった。3連覇がかかる王者とはいえ、「崩れることもあるかもしれない」と堀江も危惧していた。

「秋リーグのときは『吉田をカバーしよう』という気持ちが多少なりともありましたけど、インカレでは吉田も自分の役割を把握して、ディフェンス面で貢献してくれたし、点を取って盛り上げてくれた。新しい軸ができつつあるのはいいことだけど、東日本インカレで負けたように、負けることもある。まずはどんな相手にも自分たちから攻める。それは絶対、忘れちゃダメだと思います」

宮浦健人の強気なサーブが空気を変えた

堀江の言葉通り、決勝は第1セットの立ち上がりから早稲田が攻めた。サーブが走り、相手の攻撃が単調になったところをブロックで仕留める。理想通りの展開で第1、2セットを連取したが、第3セットは筑波大の垂水優芽(1年、洛南)が「セットを取られて劣勢だったからこそ、『とにかく攻めるしかない』と思いきり打ちました」と言うように、サーブ、スパイクで筑波大が応戦。中盤まで早稲田がリードを奪いながらも、終盤の垂水のサーブから小澤宙輝(4年、甲府工)のスパイクで連続得点した筑波大が25-23で第3セットを奪取した。

宮浦(右)はサービスエースを何本も決め、早稲田に勢いをもたらした

セットを取られて意気消沈するのではなく、「今度は自分のサーブではね返す」と燃えたのが早稲田大の宮浦健人(3年、鎮西)だ。1本サービスエースを取れば24-24となる第3セットのラスト。筑波大はセッター以外の全選手が宮浦のサーブに備え、4人で守っているのが見えた。

「それだけ自分のサーブが嫌なんだ、と思うとうれしかったです。でもそこをぶち抜いて決めたかった。それができなかったのが悔しかったし、絶対次は決めてやると思いました」

再び早稲田に流れを引き寄せたのは、やはり宮浦のサーブだった。3枚、4枚入ろうと得意なコースへ打ち抜く。ノータッチを含むサービスエースでリードを広げた。

だが、筑波大は突き放してもまた粘り強く追ってくるかもしれない。リードを保ったまま終盤を迎えても、そんな不安がちらついた。その空気を払拭したのが堀江だ。フェンスにぶつかってもボールをつなぎ、セッターがレシーブした後の二段トスも迷わず宮浦に託す。堀江は「自分はリベロなので点が取れない分、宮浦が助けてくれる」と宮浦を信頼し、その宮浦は「つないでもらったボールは決めようと思ってました」と応える。3連覇を決めたビクトリーポイントも、堀江が後ろからブロック枚数をコールする中、宮浦が放ったバックアタックだった。

衝突しながらも、柱の大切さを知らされた

鉄壁な攻守の柱としてチームを牽引してきた2人だが、ぶつかり合ったこともある。堀江は宮浦に「自分のプレーだけでなくチームのことも考えて、できることをしろ」と伝えたつもりだったが、宮浦からすれば分かっているだけに耳が痛い。つい頭に血が上り、「うるさい」と言い返した。だがその一方で違う思いも抱いていた。

堀江(左)は試合中、誰よりも大きな声で仲間を鼓舞(こぶ)した

「調子が悪いときに『悪い』と言われて、だったら絶対決めてやると思いました。堀江さんは練習中から雰囲気が悪いときは自分がバッと言って空気を締めてくれるし、喝を入れてくれる。うるさいと思ったこともあったけど、来年はいないんだと思うとすごく不安だし、今日勝てたことはうれしいけど、僕らは次に向かわないといけない。背負うものが増える責任を感じてます」

3連覇という最高の置き土産を残し、4年生はチームを去る。勝利の後、満面の笑みを浮かべ堀江が言った。

「いつまでもこのメンバーでバレーがしたいので、もうできないのは残念です。でも後輩たちに何かできることがあれば、僕ができることは何でもするし、僕も早稲田で培ったものを生かして、次のステージで頑張ります」

これからも「ワンチーム」で。戦いのフィナーレは、新たな始まりへのスタートだ。

3連覇を成しとげた日、それは早稲田にとって新たなスタートでもある

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