バレー

特集:全日本バレー大学選手権2019

コートに立てなくても 福山平成大・髙橋祐希主将が早稲田戦にかけた思い

一年越しのリベンジマッチ、髙橋(1番)はベンチから仲間を支えた(すべて撮影・松永早弥香)

第72回 全日本大学男子選手権 準々決勝

11月29日@東京・墨田区総合体育館
福山平成大0(22-25.17-25.21-25)3早稲田大

全日本インカレ4日目の11月29日は準々決勝4試合が実施され、3連覇を目指す早稲田大と福山平成大が激突。昨年の決勝カードの再現に、会場は沸いた。

王者・早稲田が主導権を握り、猛追をかわす

主導権を握ったのは、序盤から試合巧者ぶりを発揮した早稲田だった。ターゲットを狙い、相手の攻撃パターンを絞らせるサーブが走り、福山平成大の攻撃を切り返す。福山平成大は2-5と3点をリードされるも、セッターの福元浩太郎(3年、東福岡)は「焦りはなかった」と冷静に振り返る。

「早稲田のブロックはお手本通りのリードブロックで、組織力が高いです。スパイクを通すのは簡単ではないんですけど、それでも(センターからの)クイック、パイプ(後衛中央からのバックアタック)と、『自分たちの武器で挑もう』ということだけ意識してました」

そもそも組み合わせを見たときから、順当に勝ち進めば準々決勝で早稲田と当たる確率が高いと分かっていた。その時点から福元は「楽しみだったし、昨年のリベンジを含め、早稲田と戦いたかった」と言う。

福元(10番)は早稲田とまた戦えることが楽しみだったと言う

前回の全日本インカレ決勝で敗れてから1年。チームとして磨き上げてきた武器や力を試すべく、全力でぶつかる。これ以上の相手はいないと言っても過言ではない。序盤、中盤は早稲田にリードを許すも、当初のプラン通り、コート中央からのクイック、バックアタックで福山平成大も応戦。藤原幸一郎(1年、松江西)のスパイクやサーブで猛追し、21-21と一時は同点まで追い上げた。

しかし追い上げられたからといって、ここで崩れないのが王者・早稲田の強さでもある。福山平成大と同様に、コート中央からの攻撃を積極的に使い、終盤に再び連続得点。最後は福山平成大の三好佳介(3年、高松工芸)のスパイクが止められ、第1セットは早稲田が先取。2セット目からも主導権を握った早稲田が福山平成の追随を許さない。3-0で早稲田が勝利し、一番乗りで準決勝進出を決めた。

早稲田の高く厚い壁が立ちはだかった

史上初の決勝進出を果たした福山平成大は昨年、攻撃の軸を担った主将の迫田郭志(FC東京)がそのままチームの軸になっていた。苦しいときにトスを上げれば決めてくれたし、その背中でチームを引っ張る絶対的な存在だった。

迫田ら4年生が卒業し、新チームは昨年から試合出場経験を重ねてきた3年生が主軸を担った。東福岡高でもセッターとして全国大会で経験を重ねた福元や、ミドルブロッカーからアウトサイドヒッターに転向した三好など、器用な選手がそろい、戦力は充実していた。それでも中国リーグでは東亜大の壁に阻まれ2位に終わった。東福岡高で全国を制した先輩がそろう東亜大に対し、福元は「最後の全日本インカレでは、自分たちの方が(東亜より)上にいきたかった」と並々ならぬ闘志を抱いていた。

迫田郭志から受け継いだ「1」の重み

だが、それ以上に勝利を欲していた選手がいる。主将の髙橋祐希(4年、東北)だ。

2年生のから試合出場のチャンスをつかんで西日本インカレを制するも、昨年はけがに泣き、ポジションもミドルブロッカーに転向。3年生主体のチームの中で、なかなか試合に出場できず。この全日本インカレでも迫田から受け継いだ背番号「1」を背負い、髙橋はベンチから後輩たちを盛り立てた。

「去年の迫田さんのように、コートでプレーして自分の背中で引っ張れない分、自分はどうすべきか。すごく難しかったです。でも試合に出ないとできることはないのか、と言えばそうではない。誰がコートに立つべきか。どの攻撃を使うのが効果的か。広い視野でチームを見ながら、少しでもチームとしていい形になるように、というのをコーチと何度も話し合いながらやってきました」

東北高3年生のときにインターハイ宮城県予選で敗れた直後、チームを率いた江間良幸監督が急逝した。バレーボール界で「名門」と言われる東北高で全国大会出場すら果たせない現実に、自信を失いかけたこともある。だからこそ、その悔しさは大学で晴らす。そう誓った4年間。大学ラストゲームはコートに立つことも叶わなかったが、早稲田にストレートで敗れた後も笑顔で後輩たちに「ありがとう」と声をかけた。

髙橋(左端)は誰よりも大きな声で選手たちを鼓舞(こぶ)した

悔いがないと言えば嘘になる。全国優勝という目標を果たせず、負けたことは悔しい。だが、やるべきことはやった。相手が上手だっただけで、自分たちが劣っていたわけでは決してないと胸を張れる。

「去年も今年も悔しい思いをした3年生たちが、来年はきっともっとチームを磨き上げて勝ってくれる。優勝に向けて、頑張ってくれると信じてます」

夢の続きはまた来年。後輩たちへ託された。

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