大学バレー

特集:全日本バレー大学選手権2019

筑波大・山口拓海、2番手だったリベロが7年ぶりのインカレ優勝を引き寄せる

山口は2年生のときまで2番手のリベロだった(すべて撮影・松永早弥香)

第72回 全日本大学男子選手権 準決勝

11月30日@東京・大田区総合体育館
筑波大3(25-16.20-25.23-25.25-20.15-13)2東海大

全日本インカレ5日目の11月30日、男女の準決勝4試合が大田区総合体育館で開催された。男子の第1試合は3連覇を狙う早稲田大が3-1で中央大に勝利。第2試合は筑波大が3-2で東海大に競り勝ち、2年ぶりとなる決勝進出を決めた。

一般受験であこがれの筑波へ、2番手に甘んじた日々

第2試合はまさに死闘と呼ぶにふさわしい大熱戦だった。

筑波大と東海大は昨年の準々決勝と同カード。そのときはフルセットの末、東海大が勝利した。筑波大にとってはリベンジを誓う機会であり、中でも「打倒東海」の思いを強く抱いていたのがリベロの山口拓海(4年、高崎)だ。「去年の全日本インカレだけでなく、今年の春秋リーグでも一回も勝てなかった。だから『東海に何としても勝ちたいという思いは強くありました」

山口はプレーだけでなく言葉でもチームを支える

高崎高在学時から「筑波でバレーがやりたい」と望み、推薦ではなく一般受験で筑波大に進学。バレーボール部の門をたたいた。練習や規律は厳しかったが、一つ上に同じ高崎高の先輩である樋口裕希(現・堺ブレイザーズ)や渡辺慎太郎(現・東レアローズ)がいたこともあり、「大変でもこれが筑波のバレー部だと話も聞いてたし、きつくても苦になることはなかった」と振り返る。

同学年には同じリベロの髙橋結人(4年、福井工大福井)がいて、入学時の力や経験値は髙橋の方が圧倒的に上。1年生のときから試合出場の機会もつかんだ髙橋に対し、山口はユニフォームを着ることもできない。最初は「結人の方がうまいからしかたない」と思っていた。

そんな山口に転機になったのが、2年生のときの全日本インカレだ。準決勝で石川祐希(現パッラヴォーロ・パドヴァ)らがいた中央大と死闘を繰り広げた末、筑波大は決勝進出を果たした。そのコートに髙橋がいて、自分はベンチにいるだけで出番がないまま。「めちゃくちゃいい試合だったのに、そこに出ることすらできないのが悔しくて。チームが勝って決勝にいけたのはうれしかったけど、それ以上に悔しさがありました」と当時を振り返る。

時間さえあれば練習する髙橋に負けぬよう、山口も必死で練習を積んだ。その成果は少しずつ現れ、3年生のときにはサーブレシーブ時は高橋、自チームのサーブ時は山口が交代でコートに入り、今季は山口がメインで試合に出場する機会が増えた。

二人のリベロがスパイカーを、チームを支える

全日本インカレも同様だ。2年連続となった東海大戦でも、相手エースの新井雄大(3年、上越総合技術)の強打をレシーブしたり、ブロックされて落ちたと思われたボールを拾ってつなげたり。「アタッカー陣はエリートばかり。打つ人間に目立つ役は任せて、自分は支えるのが役割だと思って徹した」という山口のレシーブが何度もチームの危機を救った。

つないだボールは“主役”となるスパイカーが決める。第2、3セットを連取された後、第4セットに気を吐いたのが主将の小澤宙輝(ひろき、4年、甲府工)だった。2枚、3枚とブロックが並ぼうと、ときには軟打を当てて出し、また別のときにはストレート方向に放つパワーあふれるスパイクで得点を重ねる。だがそれも、小澤は「自らの力ではなく、他の選手が攻守でフォローしてくれたからこそ得られたものだった」と強調する。

チームの支えがあるからこそ、エース小澤は思いっきり打ちきれる

「自分たち4年生はこの大会が最後なので、この1戦、この1球に込める思いは強くなります。でも後輩たちも常にセッターへコールして、“自分も打つ準備ができている”とアピールしてくれました。そのおかげで自分は一人じゃない、と思いきって攻められたし、たとえブロックされてもみんながフォローしてつないでくれた。攻撃のときだけじゃなくて、ブロックに跳ぶときも“必ず後ろで拾ってくれる”と安心できたので、思いっきり跳べました」

小澤が感じていたように、「一人じゃない」と安心感を抱いてプレーしていたのは山口も同じだ。リベロというポジションはスパイカーと異なり、直接得点が取れるわけではない。だが、だからこそ目立たぬ一本、一つの声かけが、ときにチームを救うこともある。

「第2セット目に雰囲気が悪くなったところで(髙橋)結人が出て、レシーブはもちろん、周りを盛り上げる声をかけてくれたおかげで雰囲気が変わりました。それは決勝という大きな舞台を経験している結人じゃないとできないことだし、僕もチームも、結人に助けてもらいました」

第2セット目には髙橋(6番)も出場し、チームの空気を変えた

ラストゲームは強い気持ちで

なかなか結果を出せず、最後まで苦しんでもがきながら戦い続けたシーズンも、残すはあと1試合。しかもそれは、3連覇がかかる早稲田との対戦で、奇しくも2年前の決勝と同じカードだ。個の力でも優れ、組織力も高い相手にただ向かっていく。それができるのは唯一、自分たちだけ。ラスト1試合。自身にとっては初めての全日本インカレ決勝。最高のフィナーレに向け、山口が言った。

「試合前は細かいデータを頭に入れて、ミーティングで共有して臨みます。でもいくら十分なデータがあっても、それを発揮するには強い気持ちが必要。『絶対勝つ』という気持ちを相手にぶつけるぐらい強く出しきって、最後まで戦いたいです」

いよいよフィナーレ。早稲田の3連覇か。それとも2012年以来となる筑波大の優勝か。日本一を決めるときは、間もなくだ。