すべては団体戦勝利のために 関学バドミントン部主将・戸内佑亮の悲願
ラストイヤーが、まさかこのような記憶に残る形になるとは思わなかった。バドミントン部は、4月の春季リーグ戦を皮切りに、6月の関西インカレ、そして9月の西日本インカレの中止が決定。昨年度、シングルスにて関西制覇、西日本準優勝を果たした主将の戸内佑亮(4年、神戸村野工業)は落胆を隠せない。
忘れられない団体戦での勝利の美酒
「正直、仕方がないことだと思う。現状を受け入れるしかない」。今年度、戸内がこだわるのは団体戦での関西制覇。目標を達成できるかどうかは、秋季リーグ戦の有無に委ねられた。
戸内には団体戦での勝利にこだわる理由がある。それは、団体戦でチームを背負うプレッシャーも、仲間とともに戦う楽しさも学んだからだ。だからこそ、全員で勝ちたい。記録にも、記憶にも残るチームをつくりたい。主将として誓った思いだった。
2年前、関西学院大学は春季リーグ戦で55年ぶりの関西制覇を果たした。戸内もその舞台に立ち、三日月を背負った一人だった。7季連続王者の龍谷大学を破り、チーム全員で味わった勝利の美酒は忘れられない。「あのときのチームの雰囲気はとってもよかった」。まさに記録にも、記憶にも残るチームだった。
後輩たちにも歓喜の瞬間を味わわせたい
個人成績が「てんこ盛り」な1年間でさえ、団体戦の記憶には勝らない。昨年、シングルスで関西、西日本と好成績を残した戸内。だが、西日本インカレを準優勝で終えたわずか4日後に控えたリーグ戦まで体力は持たなかった。1、2戦は危なげなく勝利するも、第2シングルスとして出場した3戦目ではストレート負け。エースとして勝ち切れず、キャプテンへ謝罪の言葉が出た。
しかし、当時のキャプテンは「残り2戦、頑張ろう」と激励。決して戸内を責めることはなく、もう一度背中を押してくれた。先輩の言葉に奮い立った戸内は、強豪の龍大と2時間越えの激闘を見事制した。「チームに貢献できた。やっと先輩たちに恩返しができたかな」。勝利の記憶が感謝とともに戸内の胸に、深く刻まれた。
どうしても、団体戦を戦いたい。戸内には強い意志がある。2年前の関西制覇の記憶を知るのは、現在の3、4年生のみ。戸内は、後輩たちにも歓喜の瞬間を味わわせたい。シーズン前の練習では、自分たちでメニューを考え、徹底して下準備を進めてきた。「これだけ頑張ってきたのに、出せる場がなくてもったいないなあ。悔しい」と戸内。
目指すは「チーム一丸」
4月の緊急事態宣言の発令から2カ月間、バドミントンに触れる機会は激減した。「こんなにバドミントンに触れないことは、今まででなかった」と戸内。普段より顔を合わせる機会も減少。そのため、個々の状況を縦割りミーティングで把握。再始動に向け、徐々に準備を始める。
個性派集団が、最強集団へ名を変えるときがきた。今年度、戸内は選手たちそれぞれのカラーを大切にしてきた。それがチームの強さになる。秋季リーグ戦での優勝はいまだ経験がない関学だが、悲願の秋季初優勝を狙う。
「目指すは『チーム一丸』。最高のチームをつくりたいな」。戸内の目は、先を見すえている。記録にも、記憶にも残るチームへ。誰よりもバドミントン部を愛す戸内は、仲間とともに頂点に立つ。