戦わずして消えた夢、関学ヨット女子リーダー・伊東里菜のリスタート
女子だけで目指す日本一の夢も、今年は戦わずして消滅した。9月に愛知県豊田自動織機海陽ヨットハーバーにて開催予定だったヨット部の全日本学生女子ヨット選手権(全日本女子インカレ)が、今年は中止になった。
当初は葉山新港で行われる予定であったが、新型コロナウイルスと東京オリンピック延期の影響で変更。だが、大会中止が突然発表された。女子リーダーを務める伊東里菜(4年、啓明学院)は「大会がなくなってしまったな、という虚しい気持ちになった」。女子チームにとって、一つの指針がなくなってしまった。
「女子ももっとやらなあかん」
今年度、伊東が女子チームにかける思いは人一倍強かった。2年前の全日本女子インカレで、関学は4年ぶりに総合優勝を果たした。だが、チームに戻れば常に女子の主体性を問われた。
学生の大会では、ヨット競技は男女問わずペアを組んで出場できる。そのため、男女平等にチャンスはある。しかしレギュラーを勝ち取り、部の重要なポストにつくのは男子が多かった。この現状に、「女子ももっとやらなあかん。まずは女子チームのマネジメントから頑張ろう」。女子チーム改革への挑戦が始まった。
例年であれば、女子チームは全体練習の合間を縫って戦術を固めていた。だが今年度はミーティングを積極的に行い、女子チームとして活動する時間を増やした。自分の行動に主体性と責任感を持てるよう、トレーニングや気象情報など、伊東は一人ひとりに役割を振り分けた。「みんな積極的に動いてくれて、ミーティングでも少しずつ成果が出てきた」と感じられるほどになったという。
当初は発言も少なかったが、時間を重ねるにつれ、下級生からも意見が出始めた。マネジャーも含めた14人で決めた目標は「全日本女子インカレの総合優勝」。2年前掲げた優勝旗をもう一度全員で持って帰ることを誓うも、今年は舞台がなくなってしまった。
砂紀ちゃんとリベンジしたかった
伊東にはもう一つ、胸に秘める目標があった。それは、毎年女子インカレでペアを組む池淵砂紀(4年、 鳥取県立境)との勝利だ。競技経験者の池淵は、大学から競技を始めた伊東を常にリードしてくれた。2年次には、あと一歩で入賞が見えるも届かず。総合優勝を果たして喜ぶ先輩の姿を横目に、悔し涙も溢(あふ)れた。
昨年は上級生としてチームを引っ張る立場として出場。だがプレッシャーに飲まれ、思うような成績を残せなかった。「今年こそは、砂紀ちゃん(池淵)とリベンジしたかった」。悔しい気持ちは募る。
馴染みの西宮の海での全日本インカレに向けて
それでも下を向いてはいられない。次に女子チームの取り組むべきことは、来年度のチームづくり。伊東は「今年やってきたことが正解か分からないのが心残り。でも、次に生かしてくれたら」。後輩たちに思いを受け継ぐ。気持ちを切り替え、11月の全日本インカレに向けて全力で走り抜く。
「男子に負けず、使ってもらえるように妥協せずにやるだけ」と力強く言い切った伊東。全日本インカレの舞台は、馴染み深い西宮の海。たくさんの思いが詰まった場所で、三日月の艇を走らせてみせる。