アメフト

10年ぶりにアメフト復帰の応援団長コージさん、負けて終わった甲子園思い出し涙

観客席にあいさつしながら、涙を流した(撮影・すべて篠原大輔)

X1AREA西日本

11月1日@神戸・王子スタジアム
トーナメント1回戦
みらいふ福岡SUNS 34-20 アズワンブラックイーグルス

アメリカンフットボール応援団長のコージさんが現役復帰した。みらいふ福岡SUNSのDL(ディフェンスライン)コージ・トクダが11月1日に社会人Xリーグの試合に出場。10年ぶりの実戦だった。「初戦で必ず1回は決める」と話していたQBサック(パスに出たQBをタックルすること)も決めて勝利に貢献し、試合後には涙を流した。

試合前、関係者に配られたスターター表に「コージ・トクダ」の名があった。スタジアムの外には、明らかにこれまでのアメフトファンとは違う層の女性たちが列をつくった。

法大での甲子園ボウル以来のフィールドへ

アップを終えたコージは私に言った。「1プレー目は絶対に僕を狙ってくると思うんです。だって、僕やったらそうしますもん」。そして2009年12月の甲子園ボウル以来で、コージが公式戦のフィールドに入っていった。1プレー目。4人並んだDLの右端にセットしたコージに対して、相手は横からはじき出すようなブロックを打ってきた。鉄則通り相手より低く入ってつぶれこむコージ。ゲインは1yd。警戒していた最初のプレーで、しっかり役目を果たした。右腕で小さくガッツポーズするコージに、サイドラインの仲間から「コージさん、ナイス。玄人好み!」の声援が飛ぶ。

この日はずっと相手のOL池田(73番)と勝負した

この日、コージが対峙(たいじ)したのはアズワンのOL(オフェンスライン)で左タックルの池田幸多朗(京都産業大)。アサヒ飲料から移籍してきた選手で身長190cm、体重115kgと大きい。この半年で飛躍的にサイズアップしたコージだが、体重は100kg弱。法政大学時代より動きのスピードは落ちていて、池田に対して主導権をとれないケースが目立った。

あきらめず、プレー重ねる

ただ、どんなにやられても途中でプレーをやめることはしない。プレー直前に何度か「ウォーッ」と叫び、プレーが始まると最後までボールキャリアーを追った。そして念願のQBサックを狙って、プレーを重ねていった。第2クオーター(Q)には、この日初めてのタックルを相手RB(ランニングバック)に決めた。

第4クオーター、ついにQBサックを決めた瞬間

福岡SUNSは13-0で試合を折り返した。ほぼフル出場のコージに、待ちに待った瞬間がやって来る。第4Q6分すぎ、アズワンが自陣で第3ダウン残り5ydの局面を迎えた。狙い目だ。コージがこの日一番のスタートを切る。鋭く下から池田にぶちかまし、アオテン(相手を仰向けに倒すこと)した。そして相手QBが前に出てきたところをタックル。ずっと口にしてきた「最初の試合でQBサック」との言葉を現実にして、何度も何度もガッツポーズをした。598人の観衆を含めたスタジアム全体も盛り上がった。試合は34-20で勝った。

サックを決めて、いろんなガッツポーズを繰り出した

試合後、観客席に向けて福岡SUNSの代表兼主将の吉野至(関西大学)があいさつ。「せっかくなのでコージさんもお願いします」と促され、コージが列の真ん中に出てきた。しゃべろうとしてスタンドを見上げ、あるシーンが頭をよぎった。法政大学トマホークスの主将として関大に負け、いったんフットボール人生が終わった2009年の甲子園ボウルの光景だ。すると涙が出てきた。少し言葉に詰まりながら、コージは大きな声であいさつした。

「声援あったから、頑張れた」

「何かを10年ぶりに始めるということは、ほんとに僕自身不安もありましたし、ほんとにみなさんがちゃんと応援してくれるのかなという、いろんな思いがありました。きょう試合をして、ほんとに僕らが一生懸命練習してきた姿を見せたら、みなさんがちゃんと応援してくれて、ついて来てくれるんだなというのを感じました。みなさんの強い声援があったからこそ、僕たちはほんとに頑張れたと思います。これから(X1)スーパーという上の位に上がっていって、僕たちの名前を売っていこうかなと思ってます。みなさん、ぜひついて来てください。よろしくお願いします。本日は応援ありがとうございました!」

10年ぶりに戦うことを決め、やりきった男に大きな拍手が降りそそいだ。

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