バスケ

中央大バスケットボール部主将・樋口雄気の高度な視点「3つの柱」と「人間関係」

24日の早稲田大戦でプレーする樋口

中止となったリーグ戦の代替大会として、トーナメント方式のオータムカップ2020が10月10日に開幕。2年ぶりに1部復帰を果たした中央大バスケットボール部は大会を9位で終え、インカレ上位進出に向けた準備を着々と進めている。

裏方の役割を引き受けていた下級生時代

インカレ上位常連校がひしめく1部で10年ぶりとなる9位の成績を残すことができた背景と、樋口雄気(4年、山形南)主将の大学バスケでの経験、そして考えを切り離して考えることはできない。

県有数の進学校である山形南高で勉学に励みながら、バスケに打ち込んでいた樋口。3年次には主将としてプレーし、現在青山学院大に在籍する斉藤諒馬(4年、山形南)らとインターハイでベスト4まで進出。2017年春に中央大の門をたたいた。

中央大に入り、下級生時代は裏方の役割をよく引き受けていた。「1年生のときからスカウティング(分析)班を任されました。チームに還元できたものは相当大きかったと思います」と語る樋口の脳裏には一つの成功体験が浮かんでいた。それは2年次、2018年の白鷗大とのリーグ戦での出来事だ。

バスケに向き合う姿勢

樋口は白鷗大との一戦を前に、相手のスカウティングとチームの練習メニュー作りを任された。白鷗大を徹底的に分析し、一つひとつの戦術をチーム全員に説明して共有。準備万端で試合に臨んだ。

練習時に徹底した戦術は強豪校を相手に見事的中し80-69で勝利。「裏方の仕事をずっとやってきて初めて大きな成功につながりました。高校でインターハイベスト4になったことよりも大きい成功」と、試合で身につけた経験を大きな自信へとつなげていった。

「自分が何かをやるというよりかは、ヒントをとにかく供給し続ける」。チーム本位の思考で学生バスケ最後の年を過ごす

3年次に1部昇格を果たし、年は明け2020年となった。最後のシーズンとなるにあたり、樋口は中央大の主将に就任。バスケに向き合う姿勢が同期からの信頼を勝ち取り、推薦で選出された。主将に就任して樋口はあることに取り掛かる。それは「文化」、「伝統」の構築だ。

樋口の在籍した4年間は中央大にとって、昇降格を毎年経験する変化の激しい期間であった。2部では好成績を残せるが1部では下位で低迷してしまう。身長や身体能力で負けてしまう面もあるが、樋口は別の側面から中央大に対して危機感を抱いていた。

樋口の取り組む「3つの柱」

「文化や伝統の構築というものがあまりなく、1年ごとに新しいチームに様変わりしていました。なので、他の大学に比べて積み上げてきたものが少し弱かったのかなと感じました」

樋口が目標として立てたのが創部100年となる2024年に日本一となること。今年を5カ年計画の最初の年と位置付け、今シーズンをその礎とするため率先して奮闘した。取り組んだことは「3つの柱」の形成だ。

コート上で指示を出す3年次の樋口(中央)

1部で通用するスター選手の養成、プロ意識をもつ集団の形成、一歩引いてエースを支える役回りに徹する意識の醸成。この3つを軸にチーム力を向上すべく、学生主導で「文化」、「伝統」の構築に努めた。

そして、10月10日。オータムカップ初戦の筑波大戦では53-71で敗れたが、試合開始直後から点差をつけられた昨年のインカレでの筑波大戦とは打って変わって粘りの戦いを見せた。樋口も積極的な指示出しでチームに貢献。「自分自身の役割を全うできた」と胸を張った。

24日と25日に行われた早稲田大戦、神奈川大戦では、樋口がスターにしたい選手として度々名を挙げていた渡部琉(2年、正智深谷)、濵野裕稀(2年、幕張総合)が多くのシュートを沈める活躍で2連勝。1部9位で大会を終えた。代替大会のため単純比較はできないが、1部での1桁順位は2010年以来10年ぶり。樋口の取り組む「3つの柱」は確実に形となりつつある。

11月13日のインカレ・チャレンジマッチでの勝利、そして12月のインカレではベスト8以上を狙う中央大。目標を達成すべく、樋口はインカレ上位8校を倒すための将来像を思い描いている。

重要視している4つめの柱

樋口が今、重要視していることは「3つの柱」に加わる4つ目の柱、「人間関係」だ。チームでは「阿吽(あうん)の呼吸」と称した練習で人間関係の構築を図っている。「コート上でこの瞬間に誰が攻めるのか、誰がシュートを打つのかをチームで言葉にしなくても表現できればもっと強い中央大学が、もっとよい文化が芽生えると思います」と練習の意図を明かす。

3年次の樋口

「バスケットボールは人間関係の中で生まれてくるものだと思います。互いに尊敬しあうところがないとチームとして一つになっていけない。隣のプレーヤーがプロ意識をもっているからこそお互いにプレーできる。プロ意識と人間関係を超えたその先をバスケットボールで表現していきたい」と高度な視点でこの先を見据えている。

「昨年のベスト16を超えていかないと、超えていくような姿勢を見せていかないといけない。これは僕たちに与えられた試練の一つでもあります。ここからのインカレまでの1カ月は本当に結果が出るようにチーム一丸となるよりは、4年生がその結果に連れていけるように必死に取り組む」

中央大に「文化」、「伝統」を浸透させるべく熱い思いを胸に覚悟を決めた樋口。2024年のインカレ優勝に向け、まずはインカレベスト8入りへ。中央大には夢を夢のままで終わらせない、頼れる主将がいる。

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