アメフト

「打倒KG」神戸大のキーマンはLB山本将悟 関学の強力RB陣を止められるか

神戸大学のLB山本将悟は王者・関西学院大相手にビッグプレーを出せるか(撮影・北川直樹)

アメリカンフットボールの関西学生リーグ1部は11月8日にトーナメントの準決勝がある。1回戦で近畿大学を下した神戸大学は、5年連続の甲子園ボウル出場を狙う関西学院大学に挑む。昨年は王者・関学に2戦2敗。リーグ戦は15-17と肉薄したが、全日本大学選手権の西日本代表決定準決勝では7-26と完敗。リベンジに燃えるレイバンズのキーマンはディフェンス第2列のLB(ラインバッカー)、山本将悟(4年、松江南)だろう。

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近大との1回戦は15-10と苦しい試合だった。5点リードの第3クオーター(Q)終盤、神戸大は近大にゴール前14ydまで攻め込まれて第1ダウン10yd。タッチダウンを許せば、逆転される。

近大との1回戦では、ラン攻撃を連続で止めた後、FGをブロック(撮影・廣田光昭)

近大は3プレー続けて得意のランに出た。これを、すべて山本がタックル。8ydを残して第4ダウンに追い込まれた近大は、フィールドゴール(FG)で2点差にしようとした。しかし、これも真ん中から割って入った山本がキックをブロック。ゼロで切り抜けた。山本は次の相手のオフェンスシリーズでも、ギャンブルに出たQB(クオーターバック)の清水大和(2年、龍谷大平安)をサックに仕留めた。LBとしてレギュラーをつかんだ昨年のリーグ戦から、こうやって鋭い読みと速い動きでビッグプレーを起こしてきた。

兄の健悟さんと松江南高から同じ道

山本は島根県で生まれ育った。松江南高の野球部から神戸大のアメフト部というのは、兄の健悟さんと同じ歩みだ。3年生の夏の島根大会2回戦では、山本自身は途中出場だったが、前年優勝の開星を7-5で下した(3回戦で敗退)。

神戸大海事科学部に入ってアメフトを始めたのは、DL(ディフェンスライン)で活躍した兄の勧めもあったが、「どうせ大学で部活をやるなら、本気でやりたい。高い目標に向かって取り組みたい」と思ったからだ。3回生からスターターに名を連ねると、リーグ第2戦の関西大学戦で二つのQBサックを決めて勝利に貢献。シーズンが深まるにつれて、ボールのあるところに42番あり、という状態になっていった。

前述の近大戦。FGブロックを決めてサイドラインに戻った山本はベンチに腰かけることなく、観客のいない王子スタジアムのスタンドに置いた荷物のところへ走っていった。試合後に理由を尋ねると、FGの前のプレーでタックルしたとき、右目からコンタクトレンズが外れて落ちたそうだ。「途中では抜けられないんで」と笑った山本。視界不良の中で仲間が開けてくれた穴に走り込み、ボールを手に当てたのだ。彼は昨年の関学との2度目の対戦でも、相手のキックをブロックしている。

近大戦の最終盤に決めたQBサック(撮影・廣田光昭)

リーグ戦5勝2敗と躍進の昨シーズンが終わってから、レイバンズは関学と立命館大学に勝つため、フィジカル強化に励んできた。矢野川源ヘッドコーチは「体づくりへの意識が変わりました。いくら作戦を工夫したって、それだけでは関学と立命には勝てません」と話す。主将のDL杉野太郎(4年、岡山朝日)は「関学との差は埋まってる」と言い切る。

「関学に勝ちます。どんだけ抑えられるか」

山本は昨年のリーグ戦で関学に2点差まで迫ったことについて「去年のチームは去年のチーム」と取り合わなかった。その上で「接戦に持ち込んで関学に勝ちます。ディフェンスがどんだけ抑えられるかですね」と言った。関学のRB三宅昂輝(4年、関西学院)、前田公昭(3年、同)、齋藤陸(3年、江戸川学園取手)には決定力があり、第一線を軽々と抜けさせてしまうと一気にタッチダウンまで持っていく。DLが大きな穴を開けられないように踏ん張り、そこを山本たちLB陣が確実に仕留められるか。ランで好き放題やられると、大差での負けもある。

「関学に勝ったところを想像して」とお願いすると、山本はいい笑顔になった(撮影・篠原大輔)

例年のリーグ戦がトーナメントに変わり、負ければ終わりだ。しかし一方で今シーズンは全日本大学選手権もなく、3回続けて勝てば甲子園ボウルに進める。矢野川ヘッドコーチは「ある意味でチャンスの年」と言った。神戸大学レイバンズの大一番がやってくる。

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