同志社大ラクロス部・鎌田夏芽 悔いなき終幕を飾るための最後の1試合
学生日本一を夢見てラクロス部に入部した鎌田夏芽(4年、松山西)は、長い期間けがと病気で大会に出場できず、悔しい思いをしてきた。
2年生時に同期が試合で活躍している中、ひざの靭帯を断裂し、車椅子生活を余儀なくされた。3年生時にはチームが関西優勝を果たし全国大会へ出場したものの、彼女は持病の関係で欠場し、会場でチームメイトの勇姿を見ることすらできなかった。
日本一に貢献できることなら何だって
同期の活躍をただ遠くから見ている自分。これまでのラクロス生活の中で、彼女はそんな自分に対し、数多くの劣等感を感じてきた。
しかし、どんなに辛くても彼女の目標が変わることはなかった。ラクロスを始めたきっかけでもある全国優勝を、自分の力で必ず成し遂げる。療養中の悔しさや同期への劣等感すらもバネに変え、数少ない出場試合では持ち味である攻め気でアタッカーとしての存在感を表してきた。ところが、万全の体調でラストイヤーを迎えた今年、新型コロナウイルスの影響によって目指してきた日本一へとつながる全国大会の中止が決まった。
「それでもやっぱり、日本一に関わりたいと思いました」。これまで長い間、悔しい思いをしてきた分、彼女が全国大会に懸ける思いは人一倍強かった。目指してきた夢を簡単に断ち切れなかった彼女は、どうにか自分が日本一に関わることができないか考え、将来チームが日本一を成し遂げられるよう、後輩を育成しチームを底上げすることを決意した。
自分が全国の舞台に立つことはできなくても、少しでも日本一に貢献できることがあるならば何だってする。どんな時も一途に目標を追いかけてきた彼女は、そのひたむきな情熱を後輩に託すことを決めた。
最後の1試合に4年間の集大成を出す
今年度、出場できる試合は順位がつかない特別大会の3試合のみ。チームはその中で2〜4年生全員に出場機会を与え、全員の力で全試合を勝ち切ることを目標にしていた。しかし、10月24日に行われた初戦は関西大を相手にまさかの敗北。試合後に鎌田は「率直に申し訳ないし、情けない」と、チームを引っ張りきれなかった悔しさをにじませた。
7日に大阪教育大を倒し、今シーズン残された試合はあと1試合。共に戦う後輩たちに自分たちのやってきたラクロスを残すためにも、4年間の集大成を出しきらなければならない。
「技術だけでなく、ボールに食らいつく貪欲な姿勢も後輩に見せていきたい」。彼女の持ち味は、なんといってもボールへの執着心だ。一直線にボールを追いかけ、ディフェンスの枚数にひるむことなくゴールへ向かう姿勢は、同期の活躍を遠くから見ることしかできなかった辛い時期があったからこそ、短い時間でも惜しみなく実力を発揮するように染みついたプレースタイルなのかもしれない。
決してうまくいくことばかりではなかった4年間。しかし、どんな逆境も跳ね返し、悔しささえも原動力に変えて、自分が決めた目標に向かって努力する強さが、彼女を誰よりも貪欲な選手へと成長させてきた。
泣いても笑っても、あと1試合。11月23日、関西学院大学との試合がラストゲームになる。最後の年をこのまま終えるわけにはいかない。これまでの長いラクロス人生を悔いなく終幕させるべく、最後まで全力で戦い抜く。