全員で勝つ 慶大主将、友岡阿美のラストスパート
前年度女王の慶大は、西の女王・関西学院大との決戦に臨んだ。結果は2-5での敗戦。関学に2年ぶりの優勝を許し、慶大は学生女王の座を守りきれなかった。
慶應らしくない試合
慶大を率いる主将の友岡阿美(4年、慶應女子)は試合後、「慶應ってこんなもんなのか、というような試合をしてしまったことが残念」と語り、勝てなかった悔しさ、不甲斐なさをあらわにした。常に関学にリードを許したまま進み、劣勢をはね返せずに終戦。とくに後半は、点を取っても取り返された。流れをつくりきれない、慶應らしくない試合運びとなった。
思い返せば、関東の決勝も苦しい展開だった。サドンビクトリーの末に5-4で青学を下した。前年のような圧倒的な強さを見せつけることはできなかった。友岡自身も、関東決勝とこの日はゴールがなく、持ち前のすばしっこさを生かした高い得点力は、やや鳴りを潜めた。そういった試合だったからこそ、自分たちの戦いぶりや自身のプレーへの情けなさを感じていたのだろう。
全員が日本一に貢献できるチームを
友岡にはこの一年、主将としてチームづくりの際に意識してきたことがある。それは「どうしたらチーム全員が日本一に貢献できるか」ということだ。きっかけは、昨年の全日本選手権のとき。劇的な勝利で優勝を成し遂げた慶大だったが、当時から主力で活躍していた友岡は、試合後にある後輩から「優勝おめでとうございます」と声をかけられたのだという。「同じチームなのに、あまりにも客観的で他人事のような気がして悔しかった」と友岡。たしかにプレーで優勝に貢献したのは、ごくわずかな選手だけかもしれない。しかし、チームメイトから「おめでとうございます」と祝福されることに、友岡は違和感を持った。
慶大ラクロス部女子の部員は、100人を超える。試合に出られるのは、トップチームに所属する数十人のみ。その中でも、活躍できるのはごくわずかに絞られる。大所帯の部には、活躍の場がない人の方が多い。しかし、そういった選手もラクロス部に所属する限りは必ず「日本一の一員」にならなければいけないと、友岡は考えたのだ。そんな考えのもと、新チームのスタートから友岡はなるべく多くの部員と向き合い、密にコミュニケーションを取ることで、100人を超える部員を一つにまとめ上げてきた。全員が日本一に貢献できたと実感できるように。
友岡が理想としてきたチームは、日を追うごとに完成に近づいていった。相手校の分析から広報活動に至るまで、すべての部員がプレーでもプレー以外でも、日本一へ向けた準備をしてきた。そういう組織になってきた実感があったからこそ、友岡はこの大会で学生日本一を逃したことをより悔しく感じたのだろう。トップチームで主将としてプレーする責任、部員全員の想いを背負ってきたからこその気持ちが、試合後の友岡の言葉には現れていた。
今年は今年
友岡を含め4年生の多くが口にするのが、「自分たちの代で日本一になる」という言葉だ。昨年は圧倒的な強さで学生日本一に輝き、その勢いのままに全日本選手権をも制した。もちろん今年もその座を狙って練習に励んできたが、「連覇」という言葉は使わない。それは、あくまで「今年は今年」という思いがあるから。友岡を筆頭に、昨年とは違う新たなチームで日本一になることは、彼女たちの中で「連覇」ではないのだろう。
学生日本一を逃した慶大ラクロス部女子だが、まだ終わっていない。まだ借りを返すチャンスがあるのだ。次に控えるのは、社会人も含めた全日本選手権。友岡のラストイヤーも、多くて残りは2試合だ。「自分たちはここまでできるんだぞ、という姿を見せる」。このままでは終われない、自分たちの強さを証明するまでは。部員全員の想いを背負い、強い覚悟を持って友岡がラストスパートをかけていく。