ラグビー

特集:第57回全国大学ラグビー選手権

帝京大学のFB奥村翔、王座奪還へ最後尾から駆け回る 2日に早稲田大学戦

FB奥村翔のスピード豊かな攻撃は帝京大学に欠かせない(撮影・全て朝日新聞社)

ラグビーの第57回全国大学選手権は1月2日、準決勝を迎える。3季ぶりの王座奪還を狙う帝京大学(関東対抗戦4位)は、前人未到の9連覇を知るFB奥村翔(4年、伏見工)が最後尾からチームを引っ張り、連覇を目指す早稲田大学(関東対抗戦2位)と対戦する。

「新しい文化を作る」

帝京大が9連覇を達成した第54回大会、奥村は明大に競り勝った決勝こそ出番はなかったが、バックスの交代メンバーとして最強世代を身近に感じた。当時は1年生、今季王者を逃すと優勝を知るメンバーがいなくなるが、奥村は「自分たちは、経験をさせてもらった側で、4年生の力で優勝させてもらった。実際には自分たちの力ではなかった。(優勝を)途切らせてはいけないというより、新しい文化を作っていけるよう優勝したいと思っている」と言う。

勝負強さと粘り戻る

フッカーの江良颯(大阪桐蔭)ら大型新人も加入した今季、前評判は高かったが、関東大学対抗戦では3敗を喫した。早大戦は同点で折り返したが後半に突き放された。明治大学には16点リードしながら試合をひっくり返され、慶應義塾大学にも終了間際に逆転サヨナラトライを浴びた。「ペナルティーが多かった。それで、相手の強みを出させてしまった」

3試合とも試合中の修正がきかず、反則数が増えていった。「自分たち一人ひとりの甘さですね。変えようとしても練習から変えられていないので、試合では変えられない。自分たちの首を自分たちで締めていた。ディフェンスの部分もそうですし、特にブレイクダウン周りでのペナルティーをいかに減らすかに取り組みました」。選手権の初戦となった関東リーグ戦王者の東海大学との準々決勝は初めてロースコアの競り合いとなり14-8で粘り勝ちした。

受け継ぐ伏見の魂

三つ上の兄の影響で5歳から洛西ラグビースクール(京都)でだ円球に触れた。京都市立伏見中では全国大会で3位になった。CTB尾﨑泰雅とWTB木村朋也、FW加地王虎とは中学から同じチームでやってきた。

CTB尾﨑泰雅らとは中学から10年間同じチーム

伏見工高に進み、2年生の時は全国大会に出場した。主将を任された最後のシーズンは注目を集めた。春に学校統合で「伏見工・京都工学院」として新たなスタートを切った。全国大会の京都予選前には伏見工OBで元日本代表の平尾誠二さんが亡くなった。周囲の期待は膨らんだが、決勝で京都成章に3点差で敗れ、全国大会を逃した。「キャプテンとしての力不足を感じました」

奥村は、フランカーの松本健留主将(4年、大阪桐蔭)に代わりゲーム主将を務めてる。「練習でもキャプテンをやらせてもらっていて、いかに(チームを)本気にさせるかがキャプテンの役割。優勝をいかに一緒にイメージさせられるかが大事。感触もいいですし、帝京の強みを出せれば」と手応えをつかんでいる。

関東対抗戦の得点王

ゴールキッカーも務める。開幕戦の日本体育大学戦で14本全てのゴールキックを成功させるなど対抗戦では1試合欠場したが、得点王にもなった。「去年、流経大戦で全部決めていれば勝てていた。責任感を強く持ってやるようにしています」。前回大会の準々決勝で、帝京大は流通経済大学に4点差で敗れた。チームが4強に進めなかったのは13季ぶりだった。奥村が前半に外したゴールキックは3本。敗因はそこではないが、これを全て決めていれば勝てていたと本人は感じている。「普段通りに蹴る」ことを心掛け、試合のように負荷をかけて本数を決めて練習するなどしてキックの精度を高めてきた。

ゴールキックの精度も高くなった

名前は、「かける」と読む。「(プロ野球日本ハムの)中田翔(しょう)さんらがいて、よく間違えられます。親からも『しょう』にした方がよかったかな、なんて言われますが、気に入ってます」。2年の時はWTBもこなすなどスピード豊かなアタックが最大の魅力だ。新春、奥村が秩父宮ラグビー場を縦横無尽に駆け回れば、チームでは初めての新しくなった国立競技場での決勝もぐっと近づく。

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