ラグビー 帝京-早稲田 大学選手権をも占う全勝対決
関東大学ラグビー対抗戦Aグループ(以下対抗戦)も11月に入り、全勝同士が激突。佳境を迎えようとしている。11月4日(日)、東京・秩父宮ラグビー場で対抗戦8連覇のかかった大学王者・帝京大学と創部100周年の早稲田大学が対戦する。
帝京、早稲田ともに開幕から4戦全勝で、この試合が5試合目となる。帝京は2週間前の第4戦で慶應に僅差で勝利しており、この試合に勝つと大きく優勝に近づく。早稲田はまだ慶應、明治と強豪との試合を残すが、8年ぶりに対抗戦で帝京に勝利すれば一気に勢いに乗ることができるはずだ。
なお対抗戦では過去7年、帝京が連勝しているが、夏合宿の練習試合では早稲田がディフェンスでプレッシャーを与え、28-14で勝利している。
◇帝京 対抗戦 結果
9月16日 ○帝京113-7(前半61-7)成蹊
9月23日 ○帝京141-7(前半68-7)青山学院
10月7日 ○帝京90-7(前半45-7)日体
10月21日 ○帝京24-19(前半24-7)慶應
◇早稲田 対抗戦 結果
9月9日 ○早稲田55-10(前半17-3)筑波
9月23日 ○早稲田99-5(47-5)成蹊
10月7日 ○早稲田123-0(59-0)青山学院
10月21日 ○早稲田68-10(21-10)日体
FW,BKともに戦力充実。指揮官の手腕に注目
まず「赤い旋風」こと帝京のメンバーを見ていこう。慶應との一戦は、試合巧者ぶりを見せて勝利したことでチーム力は上がっていると言えよう。春は明治に、そして夏も明治と早稲田に敗れたが、地力はやはり対抗戦No.1であることを証明して見せた。ケガ人も戻って来ており、FW、BKともに能力の高い選手が多く戦力は充実している。
◇帝京 先発メンバー
1 岡本慎太郎(4年、京都成章)
2 呉季依典(4年、京都成章)
3 淺岡俊亮(4年、京都成章)
4 今村陽良(4年、東福岡)
5 秋山大地(4年、つるぎ)
6 菅原貴人(4年、 御所実業)
7 安田司(2年、常翔学園)
8 ブロディ ・マクカラン(4年、ハミルトンボーイズ)
9 小畑健太郎(4年、伏見工業)
10 北村将大(2年、御所実業)
11 宮上廉(3年、佐賀工業)
12 ニコラス ・マクカラン (2年、ハミルトンボーイズ)
13 尾﨑泰雅(2年、伏見工業)
14 木村朋也(2年、伏見工業)
15 竹山晃暉(4年、御所実業)
リザーブ
16 清水岳(2年、大阪桐蔭)17 細木康太郎(1年、桐蔭学園)18 當眞琢(4年、コザ)19 矢澤蒼(4年、御所実業)20 リッチモンド ・トンガタマ(1年、オタフフカレッジ)21 末拓実(3年、長崎北陽台)22 本郷泰司(3年、京都成章)23 奥村翔(2年、伏見工業)
FWは主将のLO(ロック)秋山ら4年生が中心で、平均体重108kgとトップリーグ級の重さを誇る。FWで接点やセットプレーでしっかりプレッシャーをかけることが勝利には欠かせない。FL(フランカー)の7番には突破力が光る2年の安田がケガから復帰してきた。
BKはSO(スタンドオフ)北村、CTB(センター)ニコラス・マクカラン、尾﨑、木村と2年生が中心だが、SH(スクラハーフ)とFB(フルバック)のセンターラインに小畑、副将の一人である竹山が入った。慶應戦で大活躍した尾﨑、スピードスターの木村、そして控えの奥村と伏見工業出身の2年生トリオは3人ともアタック能力に長けており、一気にトライを取る力がある。
また控えにも高校時代から花園を湧かせてきた突破力の高いルーキーPR(プロップ)細木、体重129kgのFL/No.8(ナンバーエイト)トンガタマ(1年)、総合力の高いCTB本郷(3年)ら個々の能力が高い選手が控えており、指揮官の手腕も注目される。
今年はFWの圧力、BKの展開力に加えて、キックも有効に織り交ぜた「トータルアタック」を標榜する。経験豊富な岩出雅之監督は「対抗戦で力をつけて、12月の(大学選手権の)戦いに向かっていきたい」と先を見据える一方で、夏合宿で負けた早稲田に対しては、チーム一丸”チャレンジャー”として臨む。
運動量と激しいタックル、ハーフ団のゲームコントロールが鍵
創部100周年を迎えている早稲田のメンバーを見てみよう。
今年から新たに相良南海夫監督が就任。相良監督が「春からディフェンスをしっかりやってきた」と語る通り、ディフェンスに注力し、夏合宿では8年ぶりに帝京大学に勝利。大きな自信になったと言えよう。「原点回帰」をコンセプトにした新ジャージで対抗戦を戦い、4試合で失トライは3とチーム力は上がってきている。
◇早稲田 先発メンバー
1 鶴川達彦(4年、桐蔭中等教育)
2 宮里侑樹(4年、名護商工)
3 小林賢太(1年、東福岡)
4 三浦駿平(3年、秋田中央)
5 下川甲嗣(2年、修猷館)
6 佐藤真吾(4年、本郷)
7 幸重天(3年、大分舞鶴)
8 丸尾崇真(2年、早稲田実業)
9 齋藤直人(3年、桐蔭学園)
10 岸岡智樹(3年、東海大仰星)
11 古賀由教(2年、東福岡)
12 中野将伍(3年、東筑)
13 長田智希(1年、東海大仰星)
14 桑山聖生(4年、鹿児島実業)
15 河瀬諒介(1年、東海大仰星)
リザーブ
16 千野健斗(4年、成蹊)17 峨家直也(4年、報徳学園)18 土田彬洋(2年、茗渓学園)19 中山匠(3年、成城学園)20 沖野玄(3年、函館ラ・サール)21 貝塚陸(4年、本郷)22 船越明義(4年、早大学院)23 佐々木尚(4年、桐蔭学園)
FWはFL佐藤主将を筆頭に、PR鶴川、HO(フッカー)宮里(いずれも4年)、FL幸重(3年)、丸尾(2年)ら機動力に長けた選手が揃い、相手の大きなFWに対して運動量で勝負する。スクラムも夏合宿から上向きであり、帝京相手に互角に組むことができるか。
SHは大学生で唯一日本代表候補に選出された齋藤、キックもパスも上手いSO岸岡(ともに3年)と1年時からコンビを組む2人がゲームをコントロール。他にも突破力に長けたCTB中野(3年)、U20日本代表経験したWTB(ウイング)古賀(2年)、大型WTB桑山(4年)と個々の能力は高い。
今年の早稲田で注目すべきは、東福岡出身のPR小林、昨年の花園で東海大仰星を優勝にもたらしたCTB長田&FB河瀬のルーキーたちがすでにチームの中心選手に成長していることだ。大学選手権9連覇中の王者にどこまでパフォーマンスを出すことができるか。
今年の早稲田のスローガンは「Moving」。グラウンドを走り回る、ボールを動かし続けるといった意味だけでなく、ファンを感動させるなどの意味を持つ。相良監督は「対抗戦や大学選手権で優勝する景色を今の学生たちは見たことがない。そういったことは、一つ一つ積み上げた先にある」と静かに打倒・帝京に闘志を燃やしている。
帝京がFWでしっかりプレッシャーを与えることができれば、快足BKを走らせてトライを挙げるシーンが増えるだろう。一方で、早稲田は運動量と激しいタックルで相手の攻撃の芽を摘み、ハーフ団がしっかりとゲームをコントロールできれば勝機は訪れるはずだ。
「深紅の王者」帝京が夏のリベンジを果たし、前人未踏の対抗戦8連覇に大きく歩を進めることができるか。はたまた、創部100周年というアニバーサリーイヤーの早稲田が8年ぶりに対抗戦で帝京から白星を挙げることができるか。今後の対抗戦、そして大学選手権をも占う全勝対決は11月4日(日)14時にキックオフを迎える。