ラグビー

特集:第57回全国大学ラグビー選手権

早稲田大学のCTB平井亮佑、連覇へのラストピースは浪人生

早稲田大学のCTB平井亮佑は決勝が全国大学選手権の最初で最後の舞台になる(撮影・全て朝日新聞社)

ラグビーの全国大学選手権決勝(1月11日)で2年連続史上最多17度目の優勝を狙う早稲田大学は、先発の平井亮佑(4年、修猷館)が初出場で最後の舞台に立つ。大型ルーキーの伊藤大祐(桐蔭学園)に代わって起用されるセンターは両校先発メンバーで唯一の浪人生だ。

ルーキー伊藤に代わって先発へ

昨季まで秋の公式戦出場がなかった平井には難しい4年目だった。レギュラー定着に春の試合でのアピールは欠かせないが、コロナ禍で活動自体がなくなった。バックスには桐蔭学園高を日本一に導いた伊藤も加入してきた。「意識はしたんですけど、(伊藤)大祐にないところ、自分の強みをどれだけ見せていけるかで戦っていこうと思った。普段の練習で、(丸尾)主将も言っているバトルする。そこで自分をアピールする。例年より意識して取り組んだ」

関東対抗戦で成長

身長174cmと大きくはないが、低い姿勢からの縦へのボールキャリーと防御では何度でもしつこく繰り返すタックルを磨いた。関東対抗戦3試合目の日本体育大学戦(10月18日)で初先発。続く帝京大学戦(11月1日)では先制トライを挙げて快勝につなげた。筑波大学戦(同7日)では持ち味がさえてマン・オブ・ザ・マッチにも選ばれた。

低い姿勢からの突進が魅力の一つ

フル出場した慶應義塾大学戦(同23日)で負傷した。12月の全国大学選手権から復帰を目指していたが、決勝にようやく間に合った。「試合を重ねていく中で自分がどれくらいできるのか肌で感じることができた。こうしなければならないというところもみえてきた。ここで勝負すればチームにも勢いがつくという自分の役割が明確になった」。試合間隔が1カ月以上空きながら今季のチームの戦い方をより理解していることが、最後の大一番での起用につながった。

「全然、心配していないのが本音で、すごくリラックスしている。(相手に)誰がきても自分がやるべきことをやるだけですし、負ける気はない。正直な気持ちです」。まだ、調子が戻っていない2020年暮れも平井はひょうひょうと話していた。

県立高校で王者を倒した経験

高校時代の小さくない成功体験が湧き出るような自信を裏付けている。2014年5月、全九州高校大会福岡県予選準々決勝で修猷館は無敵を誇る東福岡を29-26で破った。県立高校の2年生センターだった平井は、この年、全国高校大会など高校三冠を達成することになる王者を倒すメンバーに名を連ねた。

高校時代の平井(修猷館高ラグビー部提供)

伝統校はこの大会で57年ぶりの優勝を飾った。「僕の中では大きな経験でした。『打倒ヒガシ』という感じでやっていても、本当に勝てるのか不安はある。でも、やってきたことを、防御だったらタックルにひたすら飛び込むなど全員が一貫してやり切り勝利に結びつけた。その経験は、今でも生きてます」。それでも、3年間、全国大会出場は遠かった。

筑波大学志望も河合塾へ

あの勝利もあり、大学でラグビーを続けたいと思ったが、早大を目指したわけではない。現役の時は筑波大学が第1志望だったが、筑波を含めて全滅した。浪人して河合塾に通い、受験で3教科に絞れる「早慶」に狙いを定めた。どちらかと言えば慶大志望だったが、1浪後、合格通知が届いたのは早大だった。

この4年間で最も思い出に残る試合を聞いた。「大学に入って最初の新人早慶戦(2017年6月)でトライをとったシーンが印象に残ってます。ラインアウトからのサインプレーで自分が結局、縦にボールをもらって。相手にコンタクトしながら抜けてトライしたシーンなんですけど。すごく気持ちがよかった」。昨日のことのように話した。受験で5kgほど太っていた浪人生が、大学レベルでもやっていける手応えをつかんだ。

高校時代に日本を代表したり全国大会に出たりした選手がチーム内のライバルでも臆することはなかった。いつかは俺もと、じっくり鍛えた。昨年の決勝は観客席にいた。ありきたりだが、「来年、この舞台に立って必ず優勝する」と思った。

関東対抗戦の慶大戦以来の復帰となる

建物や街づくりに興味があり、卒業後はゼネコン大手に就職する予定。本格的なラグビーは11日が最後になる。平井が欠場した間、新人の伊藤は戦術の理解を深め調子を上げている。いつ交代しても遜色はない。CTBシオサイア・フィフイタ(4年、日本航空石川)らの天理大学の強力バックスを相手に、最初から全力で臨める最高の舞台が用意された。

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