セレスポ・白石黄良々 大東大から世界へ「誰もが世界で活躍する可能性を秘めている」
2019年ドーハ世界陸上の男子4×100mリレーで、日本チームは銅メダルを獲得した。日本代表に選出され間もないものの、2走を務めて快挙に貢献したのが、白石黄良々(セレスポ/2019年大東文化大学卒、24)だ。陸上競技との出会いは中学生の時。当初は日本代表レベルで注目される選手ではなかった。しかし、「大きな成長ができた」と語る大学生活を経て、世界を舞台に活躍するトップ選手にまで駆け上がった。学生時代から現在の活躍に至るまでにどのような過程があったのか、大学で過ごした4年間を振り返る。
「継続することの大切さ」を学んだ大学4年間
高校までは地元・鹿児島で陸上を続けていたが、卒業後の進路について考える内に、関東の強豪校への進学を意識するようになったという。その後は地元の先輩の影響もあって、土井杏南(現・日本航空)など有力選手が所属する大東文化大学の門を叩いた。
大学入学後は、国体での優勝経験もある佐藤真太郎監督から多くのことを学んだ。4年生での日本インカレでは活躍を期待されながらもレース中に負傷。一緒に涙を流して悔しさを分かち合った熱い先生に、白石は全幅の信頼を寄せていた。その後の日本選手権男子4×100mリレーで初優勝を勝ち取ったが、それは悲願の日本一を達成した特別な勝利であると同時に、4年間お世話になった佐藤監督への恩返しのための「優勝」でもあった。
学生時代に苦しんだ時期も、「結果が出ない中でも継続をすることの大切さを学んだ」の言葉通り、集大成である4年生での大会で佐藤監督と積み重ねた努力が実を結んだ。白石は卒業後も佐藤監督の指導を受けており、現在もその感謝の思いは変わらない。
競技者としての成長のために、勉強もおろそかにしない
白石は陸上に力を入れるのはもちろん、「勉強をおろそかにしていては、陸上選手として成長できないと思っていた」と、学生の本業である勉学にも高い意識を持っていた。大東大ではスポーツ健康科学部スポーツ健康科学科に所属し、授業では筋肉の構造や疲労回復の仕組みなど一流のアスリートに求められる専門的な知識を身につけ、体育の教員免許も取得した。こうして学んだ知識はもちろん、何事にも高い意識を持って取り組んだ経験が現在の競技生活にも生かされているという。
世界での経験を経てさらなる高みへ
大学卒業後はYouTubeやInstagramなどのSNSで練習風景など、自身の情報を日々発信している。こうした活動を開始したのは「白石黄良々という自分自身を見てほしい」という思いがあったと語る。世界を舞台に活躍するアスリートには、前向きな言葉を発信することが求められると感じているが、「きつい時はきつい」という、リアルで人間的な部分を見てもらうことで、たくさんの人々を勇気づけたいと語る。
現在所属するセレスポでは、個々の好きな環境、指導者の下で日々練習を積んでいるが、昨シーズンはけがや新型コロナウイルスの影響で思うように練習ができず、「棒に振ってしまった」と振り返る。本来であれば、大学時代にお世話になった佐藤監督の指導の下で練習を行う予定だったが、実現できぬままシーズンを終えた。不完全燃焼に終わった1年を踏まえ、今シーズンは自己ベスト更新にも並々ならぬ闘志を見せ、東京オリンピックでは「リレーでメダル、個人でファイナルに残る」ことを目標に戦う。
後輩の活躍に喜びと期待
白石は世界で戦った経験から、学生時代の活躍に関係なく「誰もが世界で活躍する可能性を秘めている」ということを学生の選手に伝えたいと話す。また、陸上に限らずスポーツを継続していく中では、勝つことよりも負けることの方が多く、成長するためには「なぜその競技を続けているのか、常に自分自身と向き合うことが大切」だと話す。
後輩である現在の大東大短距離ブロックについては、自身の在学中に比べ「層が厚くなっている」と感じているという。現在は安田圭吾(4年、日本工業大駒場)や平野翔大(3年、熊本国府)といった、学生陸上界の最前線で戦う選手が多く在籍している。OBとして後輩達の活躍について「うれしい」と喜びを語るも、充実した戦力がそろっていることから「もっとやれるだろ!」と期待を込めて笑顔でエールを送った。また、新主将を務める安田に向けて「個人競技が多い中でも、チーム全体を背中で引っ張っていってほしい」と、在学中の主将経験を踏まえて大きな期待を寄せている。
大学での4年間で得た経験や知識を糧に更なる世界での活躍を誓う白石黄良々。今後の大きな舞台での飛躍、そしてレース中の強みであるという「後半の伸び」に注目したい。