東洋大・宮本が追い風参考で10秒02 桐生祥秀先輩と鍛えたエンジン
宮本大輔(東洋大2年、洛南)は前日の予選で10秒29(+1.6m)、この日の準決勝で10秒45(-0.8m)。左ひざを痛め、ともにゴールのかなり手前から流した。そして決勝。宮本の左ひざからテーピングがなくなっていた。スタートしてすぐ頭一つ抜け出した。ゴールした直後も、どこまでも走っていきそうな勢いがあった。自己ベストが10秒23の宮本が、追い風参考ながら10秒02という日本トップレベルの世界を初めて体験し、2連覇を果たした。
初めての10秒0台は「体がバラバラになる感じ」
10秒02のタイムに、会場からどよめきが起きた。宮本は言った。「連覇がかかってたレースだったので、しっかり勝ちきれてよかったですし、心配だった左ひざも走っていくにつれて、いい感じになってきました。中盤の加速がよくて、でも後半は崩れてしまって納得のいく感じじゃなかったので、タイムはちょっと意外でした。でもいまの自分の出せるスピードの最高が分かってよかったです」
宮本は5月12日の世界リレーのあと、左ひざに炎症を起こしていた。しかし走るのをやめるほどの状態ではないと判断し、出場を決めた。予選と準決勝を走る中で、次第に違和感が薄れてきたという。そして決勝、大きな追い風を受け、いままでに感じたことがないほどの加速が生まれた。加速に体が追いつかない。宮本はその経験をこう表現した。「本当に体がバラバラになる感じです。ブレてしまって、腕が飛んでいってしまうような感じでした」
冬から春にかけては、高校と大学の先輩にあたり、ずっとその背中を追い続ける桐生祥秀(洛南~東洋大~日本生命)の練習に合流した。桐生が9秒台を出す前から始めた、室伏広治仕込みのトレーニングだ。先輩が大台を突破する土台をつくったトレーニングで、宮本も変わった。「表向きはまだ筋肉がついてないかもしれないですけど、中の体幹はがっちりしてきた感じがあります。そういう意味ではエンジンが大きくなって、前よりも力強く走れるようになりました」。そのエンジンが今日の加速をもたらした。追い風参考ではあったが、10秒0台で走れたことに「桐生さんに少しでも近づけるレースができたので、よかったなと思ってます」と、喜びをかみしめた。
加速に耐えられる体をつくり、その先の世界へ
今後の課題は、決勝の走りで明確になった。「体が崩れてしまったので、10秒0台を安定して出せる力はまだないと実感できました。加速に耐えられる状態をつくることが課題です。トップの人たちは公認記録でこういう記録を出してるので、そことはまだまだ差があるなと思ってます。でも同じようなスピードを体感できたのは、自分にとって大きな経験になりました」
宮本は世界リレーの男子4×200mリレー決勝で1走を任された。結果は1分22秒67で5位。「まだ自分は勝負できる世界にいないです。まだ入り口にしか立ってないです。そこから東京オリンピックとかその次の世界大会とか、日本代表として走りたいです」。新しい世界に足を踏み入れた宮本が、桐生の背中を見て、駆けていく。