陸上・駅伝

特集:東京オリンピック・パラリンピック

社会人1年目の坂東悠汰、「規格外」の男の快進撃が止まらない

両腕を大きく広げてゴールする坂東。10000mでも自己ベストを更新した(撮影・安本夏望)

第103回日本陸上競技選手権 男子10000m決勝

5月19日@ヤンマースタジアム長居
2位 坂東悠汰(法政大学~富士通)28分20秒72

坂東の快進撃が止まらない。2月に開催されたクロスカントリー日本選手権で初タイトルをとると、5月4日のゴールデンゲームズのべおか(GGN)では、5000mで13分26秒70の自己ベストをマークし、日本人トップに。この日の日本選手権10000mは28分20秒72で走り、これまた自己記録を更新してみせた。

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5000mから先は練習不足、でも粘った

レース前には富士通の福嶋正監督から「いけるところまでいけ」と言われていた。坂東はその教え通りに攻めた。27分40秒ペースで走るケニア人ランナーたちに食らいつき、先頭集団を形成。5000mを過ぎて徐々に離されたが、ラスト1周で村山紘太(城西大学~旭化成)、後ろから追い上げてきた相澤晃(東洋大4年、学法石川)を引き離し、田村和希(青山学院大学~住友電工)に次ぐ2位でフィニッシュした。

ラスト1周に入り、持ち前のラストスパートで2人を引き離した

「GGNで5000の自己ベストを出したので、そこまでは余裕を持っていけると思ってました。そこからは練習不足です。もともと5000で東京オリンピックを戦いたいと考えてて、直近の合宿でも5000の練習をメインにやってました。この10000は予定外のレースだったので、それに対応する練習ができてませんでした。欲を言えばトップにいきたかったです。見えてたので……。でも、前と離れてからも粘れたのは収穫でした」。クロカン日本選手権で優勝したことで転がり込んできた、日本選手権10000mの出場権。予定外、練習不足とはいいつつも自己ベスト。まさに地力が上がってきている証拠だ。

苦しんだ大学ラストイヤーが、いまに生きている

2月のクロカンから好調をキープし、明らかに走りのレベルが上がったと感じられる。坂東に好調の要因を尋ねると、大学4年生のときに苦しんだ経験がいま、生きているのだという。昨年、法大のエースとして迎えた学生ラストイヤーは、関東インカレでは入賞なし。出雲駅伝は1区の区間15位に沈んだ。「そんなときに坪田(智夫)監督やトレーナーさんに、すごく真摯に練習につきあっていただきました。体幹を中心に鍛えたことや、苦しんだときに頑張った成果がいま出てきてるんだと思います」

序盤から積極的にペースメーカーにつき、攻めるレースを展開した

体幹を鍛えたことにより、距離が伸びても体のブレが少なくなった。それが中盤以降大きく崩れることなく走りきれる要因になっていると、自己分析している。

刺激がある毎日、もっと強くなる

この春、富士通に入社した。大学時代との大きな違いは、自分より強い選手が常に周りにいる環境だという。「塩尻(和也、順天堂大学)や松枝さん(博輝、同)たちがいて、毎日刺激になってます。環境に慣れるのにもっと時間がかかるかなと思ったんですけど、先輩方も優しく接してくださって、楽しく練習ができてます。それから、ケニア人の方がチームメイトにいるのも初めてです。キメリさん(ベナード、キモニング高)が『一緒にポイント練習しよう』って声をかけてくれるので、それも楽しみです」

身長が高いことはストライドの広さにつながり、ラストスパートに活きるという

次のレースは6月末の日本選手権5000mの予定だ。「日本選手権では勝ちにいくレースをしたいです。松枝さんなんかもラストスパートが強いんですけど、まだ実際に競り合ったことがないから、展開をイメージしにくい。レースプランをしっかり考えていきたいです」。ここまで強くなるイメージがあったのかと問われると、「学生の時から(5000m)13分30秒は狙えると思ってたんですけど、一気にここまでとは。うまくいきすぎてますね」と笑う。

まだまだ先を見すえる坂東。日本選手権で勝ち、7月のホクレンディスタンスチャレンジで世界選手権の参加標準記録を狙いたいそうだ。

兵庫県の淡路島出身で、身長190cm、足のサイズは28cm。日本の長距離ランナーとしては「規格外」の男が、自分だけの道を切り拓いていく。

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