淡路島から世界へ!! 法大4年・坂東悠汰
2月23日に開催されたクロスカントリー日本選手権シニア男子10kmは、法政大学4年の坂東悠汰(津名)が29分36秒で初優勝した。強風注意報も出た日だったが、昨年優勝した大迫傑(ナイキオレゴンプロジェクト)の記録を27秒も上回る好記録で駆け抜けた。
4years.の最後に初タイトル
これが坂東にとって、法大のユニフォームで走る最後のレース。そこで自身初のタイトルをグイッとつかんだ。実はクロカンも、日本選手権と冠されたレースも初めてだった。「いろんな指導者の方に『クロカン向きだと思うよ』とは言われてたんですけど、自分はトラックで勝負していきたいということもあって、いままで走る機会がなかったんです」と坂東。身長190cm、体重65kgの堂々たる体で、アップダウンも砂地も物ともせず、終始先頭集団でレースを引っ張った。残り1kmで青山学院大出身の田村和希(住友電工)に先行されても、粘った。最後のアップダウンを乗り切ったタイミングでラストスパートをかけ、ガッツポーズでゴールテープを切った。
春からのチームメイトと競り合って
坂東は4月から実業団の富士通で陸上を続ける。この日、中盤までトップで競り合った塩尻和也(順天堂大4年、伊勢崎清明)と同じだ。レース中を振り返って、坂東は「違うユニフォームだけどチームメイトなんだよなと思って、ちょっと不思議な感覚でした」と笑った。
「塩尻がレースを引っ張ると思ってて、まずは彼についてけばと思ってました。でも思ったより自分が動けてたのと、塩尻が落ちてきたので、いけると思って前に出ました」。5kmすぎで塩尻を置き去りにした。
すでに2月6日から富士通陸上部の寮に入り、スピード練習に取り組んでいる。「周りのレベルが高くて、いままでよりも質の高い練習ができてると思います。塩尻は同期になるので、もっとたくさん彼からも勉強していきたいなと思います」。塩尻と一緒に練習したのか聞かれると、「いや、彼はまだ順大で練習してたんで」。大学での実績は塩尻の方が上だが、彼らがどんな切磋琢磨を繰り広げていくのか楽しみだ。
ユニフォームには心残り
福岡クロカンに照準を合わせて臨んだわけではなく、スピード練習の一環という位置づけだった。レース前日に彼自身がTwitterでもつぶやいていたが、法大の紺にオレンジの正式ユニフォームは箱根で“引退”し、今回は赤のサブユニフォームで走って「サブユニ納め」にしようと考えていた。そのことについては「いや、こんなこと(優勝)になるなら、正式ユニで走ればよかったです。なんていうか残念で、心残りになっちゃいました……」と苦笑いで言った。この日の結果で3月30日に開かれる「世界クロスカントリー選手権」への出場権を手にしたが、これは日本代表のユニフォームで出るため、〝リベンジ〟のチャンスはない。
強気で世界に挑む
世界クロカンへの抱負を聞かれると「世界大会に出るのは初めてなので、いまの自分がどれぐらい通用するのか楽しみです。世界の選手たちに強気で挑みたいです」と、早くもアツい言葉が出てきた。
タマネギの特産地である兵庫県の淡路島で生まれ育った。190cmの長身は日本の長距離界では異色の存在感を放つ。ほかの選手より圧倒的にストライドが大きいため、集団の中で走っていると足を踏まれることもしばしば。それでも「人より有利だと思います」と、自分の武器と認識している。規格外のランナーが初めてつかんだ栄冠、そして世界への切符。いまは「目標は5000mで日の丸を背負うこと」とはっきり言うが、トラック以外にもあらゆる可能性を秘めた存在なのは間違いない。