野球

大阪経済大学の吉安雄飛 ひたむきに楽しむラストシーズン

どっしりとした構えから長打を放つ大経大の吉安雄飛(撮影・沢井史)

身長182cm、体重108kgの体格は、数字以上に大きく見える。打席に立つだけでも威圧感たっぷりだ。鋭いスイングで打線をけん引する大阪経済大学の吉安雄飛(ゆうと)内野手(4年、秀岳館)は、関西六大学野球の京都産業大学との3回戦(4月20日)で勝利を手繰り寄せる一打を放った。大学野球でプレーするのは、この春のリーグ戦で最後と決めている。全力で駆け抜けることをテーマにするラストシーズンだ。

ドラフト候補の速球を中越え二塁打

京産大戦は初回に1死二、三塁のチャンスで打順が巡ってきた。マウンドには今秋のプロ野球ドラフト候補にも挙がるエース北山亘基(こうき、4年、京都成章)がいた。ここまで2試合18イニング無失点の怪腕を前に、吉安は冷静だった。

「あの場面は流れを作るためにもとにかく先制点が欲しかった。1戦目(4月18日)で対戦した時は(北山の)ストレートに振り負けていたので、しっかり振り切ろうと思いました。1戦目ではチームとしても攻めきれなかったので、初回から攻めることができて良かったです」。151km右腕の初球の高めストレートをしっかりとらえ、中越え2点適時二塁打を放った打席を振り返った。

前日の2回戦でも先制打を放ち、同点に追い付かれた三回には、2死一、三塁のチャンスでも右越え2点適時二塁打を放った。3安打3打点と大暴れし、勝利に貢献。チームに大きな流れを呼び込んでいる。

秀岳館で甲子園出場

大阪から熊本の強豪、秀岳館高に進み、3年生の夏は代打の切り札として背番号13をつけ甲子園(全国高校野球選手権)でベンチ入りした。大経大では昨年までリーグ戦の出場機会はなかったが、類いまれなパワーを生かした長打力を磨き、今季は中軸を任されている。初戦の大阪学院大学戦以降、全5試合で安打を放っており、21打数8安打と絶好調だ。一塁の守備でも軽快な動きを見せ、ベンチでは明るい表情でナインを出迎える。何よりボールを追う表情が実に楽しそうなのだ。

秀岳館高時代の吉安(撮影・朝日新聞社)

大阪桐蔭高から法大へ進んだ弟から刺激

3歳下の弟、遼哉は昨年、大阪桐蔭高で正捕手を務め、今春から法政大学へ進学した。野球を始めた頃から良きライバルのような間柄だった弟を「自分とは全く真逆の性格で、コツコツ努力するタイプ」と評し、存在の大きさを認める。どちらかと言えば自由気ままなタイプの自分とは違い、真面目で練習にしっかり向き合っているという。劣等感を持っている訳ではないが、そんな弟と白球を追い続ける日々は、幼い頃から刺激になってきた。

大阪桐蔭高に進学を決めた中学生の弟の姿に「厳しいところで勝負するというのはすごいと思いました」。実家に戻れば互いに野球の話をすることは多く、弟が悩んでいるときは声を掛け、自身が不調の際は弟にアドバイスを求めることもあった。がっちりした体格は兄弟似ている。兄は高校3年夏の甲子園で出場機会はなかった。遼哉は大阪桐蔭高では中軸に座り、昨夏の甲子園高校野球交流試合の東海大相模戦では先制打を含む3安打1打点の活躍だった。

弟の遼哉は大阪桐蔭高から法大へ。昨夏の甲子園では3安打した(撮影・朝日新聞社)

弟が上京する直前だった今年初めも野球談議に花が咲いた。ハイレベルな世界に常に挑戦し続ける弟の姿勢は頼もしく思えるが、「技術は弟に負けるかもしれないけれど、ひたむきに楽しくプレーするところは自分も負けていないと思います」と明るく笑う。

京産大戦で勝ち点を手にし、今週末(24、25日)は、昨秋のリーグ覇者で、ここまで開幕4連勝の大阪商業大学との対戦が待っている。現在、大商大は伊原陵人(3年、智辯学園)、上田大河(2年、大商大)ら投手陣は安定感があり、ドラフト候補の福元悠真外野手(4年、智辯学園)もパワフルな打撃が持ち味で、投打共にハイレベルだ。

大阪商業大学の福元悠真主将、フォア・ザ・チームのその先へ
悔いを残さぬよう春のリーグ戦に臨む(撮影・沢井史)

確かな手応えをつかみつつある吉安の一振りで、大経大にさらに勢いをもたらすことはできるのか。「そういう意味では、今日、打てたことは大きかったです」と話した目線は、すでに先に向けられていた。

秀岳館で明るいキャラ演じた裏で…母とのLINEが支え

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