國學院大・藤木宏太 関東インカレ10000m5位、仲間への信頼で変わった走り
國學院大學のエース・藤木宏太(4年、北海道栄)は関東インカレ初日の男子2部10000mに出場し、全体で5位、日本選手では3位。28分10秒30のタイムは自己ベストだった。
負けても次につながる走り
藤木の目標は、日本人トップをとって勝ち切ることだった。前田康弘監督からの指示は「勝負は5000mまで取っておけ」「どんなに(ペースが)速くても、リラックスして自分のリズムを作っていけ」。その通り、藤木は集団の前方に位置取り、淡々と周回を刻んだ。
4000mをすぎて先頭は東京国際大学のイェゴン・ヴィンセント(3年、チェビルべレク)、創価大学のフィリップ・ムルワ(3年、キテタボーイズ)、日本薬科大学のノア・キプリモ(3年)の3人に。つづく第2集団に藤木はつき、拓殖大学のジョセフ・ラジニ(3年、オファファ・ジョリショ)、駒澤大学の唐澤拓海(2年、花咲徳栄)、明治大学の鈴木聖人(4年、水城)と手嶋杏丞(4年、宮崎日大)の5人で走り続けた。キプリモがペースを落とし後方に下がり、3位争いとなった集団。残り500mとなったところで唐澤が仕掛けた。猛烈なスパートに追いつけず、唐澤、鈴木に次いでのゴールとなった。
「ラスト、唐澤くんとか(鈴木)聖人とかにやられてしまって悔しいです。3月のハーフ(13日の学生ハーフマラソン)のあとから思うように走れなかったんですが、今日はけっこう気持ちよく走れて、負けてもすがすがしい、次につながるなという気持ちです」。藤木の表情は明るかった。
仲間への信頼で変わった考え「自分をありったけ出す」
昨年度は國學院の躍進を支えていた主将の土方秀和(現Honda)、浦野雄平(現富士通)、青木祐人(現トヨタ自動車)らチームを支えた強い上級生が抜け、藤木は3年生ながらエースとして期待される立場にあった。「チームのために自分が頑張らないと」と意識しすぎ、空回りしてしまうことが続いたという。昨年11月の全日本大学駅伝では7区7位、年始の箱根駅伝では1区12位と、「エース」としては悔しい結果となってしまった。
「『チームのために頑張る』というのが自分を縛る言葉になってしまっていました。抱え込んでしまっていたのでそれをなくしたくて。自分の結果をとにかく求めて、それがチームに反映されたらいいなと考えを変えました。とりあえずまず、自分が走れることが大前提で、レースの時とかも縮こまらずにいこうと思って。自分をありったけ出そうという気持ちに変わって、今日は特にうまくいったなと思います」
それはチームの他の選手達の力がついてきたことも大きい。同学年の島﨑慎愛(よしのり、4年、藤岡中央)は学生ハーフマラソンで藤木を上回る3位に入り、「自分も國學院のエースという気持ちで」とはっきり表明した。3年生から主将を務めている木付琳(4年、大分東明)のほか、中西大翔(3年、金沢龍谷)、伊地知賢造(2年、松山)も着実に力をつけてきている。
学生ハーフのあとには「周りにも頼っていいんだと気づいた」と話していたが、自分は自分の走りをしっかりやっていけば他の選手もしっかり走ってくれる、とチームの他の選手を信頼できるようになったことが、確実に藤木の中に良い変化をもたらしている。「いまは自分の走りも見つめ直しながら、チームのみんなに目を配りつつという感じになっています」
駅伝シーズンを見すえて
上半期の大きな目標は、6月19日の全日本大学駅伝関東地区選考会をトップで通過すること。駅伝の本番で戦うためには、予選ぐらいトップ通過しないと戦えない、とチーム全体で決めた。「各大学戦力が揃っているので、自分だけが走れたとしてもチームのみんなが上の方で走ってくれないと(達成できない)。一人ひとりが最大限の出力を発揮して、失敗は許されないかなと思います」
自分に集中すること、そしてチームの他の選手を信じること。集大成の駅伝シーズンに向けて、藤木の目はしっかりと前を向いている。