陸上・駅伝

特集:第100回関東学生陸上競技対校選手権

早稲田大・菖蒲敦司、1500m2位と3000mSC1位 三浦龍司という壁に挑む

菖蒲は関東インカレ4日間で4本のレースをこなした(撮影・全て藤井みさ)

第100回関東学生陸上競技対校選手権

5月20~23日@相模原ギオンスタジアム
菖蒲敦司(早稲田大2年)
男子1部1500m 2位 3分50秒87
男子1部3000mSC 1位 8分45秒95

早稲田大学の菖蒲敦司(2年、西京)は元々、関東インカレには5000mでの出場を希望していた。しかし10000m27分台が3人もいる今年の早稲田大は、層が厚い。3000mSC一本の予定だったが、急きょ、1500mも決まった。1500mは1週間前に練習を始めた程度。それでも2日目の1500m決勝は3分50秒87の記録で2位、最終日の3000mSC決勝では8分45秒95の自己ベストで優勝をつかんだ。

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1500mは三浦を徹底マーク

早稲田大の長距離は「全種目表彰台」を目指していた。そんな中、相楽豊監督から言われたのは「優勝してこい」という言葉。1500mのメンバーを見ると、三浦龍司(順天堂大2年、洛南)の名前もあった。高3のインターハイで菖蒲は1500mと3000mSCで三浦と相まみえ、1500mでは三浦に次ぐ7位、3000mSCでは4位で三浦は2位だった。三浦は現在、3000mSCの日本記録保持者であるが、やっぱり負けたくない。1500mの優勝争いは三浦との勝負になるだろうと予想していた。

1500m決勝ではスタートしてからすぐに三浦(453番)の後ろについた

迎えた1500m決勝、小島優作(順大4年、仙台育英)を先頭に1周目は65秒。菖蒲は三浦の後ろにつき、集団の後方に位置取っていた。集団のスピードが上がり、2周目は60秒を刻む。三浦が徐々に前に出ると菖蒲も一緒に上がる。ラスト1周で小島が加速。バックストレートで追い風に乗った三浦のペースが速まったのを見て、菖蒲はラスト200mで三浦を抜き、小島を追った。しかしラスト100mで三浦につかまり、菖蒲は2位でゴールした。

「異次元でした」。菖蒲は三浦のラストをそう表現した。三浦が仕掛ける前に出ると決めていた菖蒲にとっては、イメージ通りのレース展開ではあったが、そのイメージを超える走りを三浦にされてしまった。スタート前、三浦とは「(インターハイ1500m決勝と同じく)今回も横のレーンだね」と話した。その結果も同じ1つ下。負けたことに悔しさはあったが、「ラスト300mから思い切っていくことができたので悔いはないです」と言う。

3000mSCはラスト1000mで勝負

初日に1500m予選、2日目に1500m決勝、3日目に3000mSC予選と続いての最終日は3000mSC決勝。「三浦が出ないなら優勝は絶対条件」と菖蒲も心に決めていた。これまでの3戦で疲労もあったため、まずは集団の中で脚をためて、ラスト1000mで勝負しようと考えていた。

スタートしてすぐに服部壮馬(順天堂大1年、洛南)が飛び出す。予想外の展開だったが、焦らず集団の中でレースの流れを見定めた。当日は強い風が吹いており、一気に出るなら追い風のバックストレートでいこうと考え、ラスト700mで集団から抜け出す。ラスト1周、服部のペースが落ちている。まずは追いついて様子を見る。「いける」と踏んだ菖蒲は一気に追い抜き、そのままフィニッシュ。8分45秒95の自己ベストではあったが、ゴールの瞬間、菖蒲にガッツポーズはなかった。

3000mSCはラスト1000mで勝負と決めていた

自信があったスパートが決まり、予定通りのプランでしっかりと勝ち切った。タイムは特に考えていなかったというが、日本選手権の参加標準記録(8分40秒00)も頭の片隅にはあった。「参加標準に届かなかったので、悔しい気持ちはあるんですけど、大学では5000mと10000mをやりたいという気持ちが大きいので、(3000mSCは)ここで引退でも悔いはありません」。菖蒲は笑顔で言い切った。

27分台が3人いるチームに鍛えられて

ルーキーイヤーは全日本大学駅伝で5区を走り、区間9位。トップで渡された襷(たすき)をそのままトップでつないだ。しかし箱根駅伝ではエントリーメンバー入りを果たすも、メンバーからは外れた。箱根駅伝に向けて距離を踏み、長めのポイント練習にも取り組んできた。しかし総じて見るとけがで走れなかった時期もあり、思うように強化できない1年だったと振り返る。「やっぱり箱根に出ることがお世話になった方々への恩返しだと思っているので、それでうまくいかなかったのは悔しいです」

関東インカレはブロックの垣根を超え、早稲田大学競走部が一丸となって挑む舞台だ。チームのために少しでも得点を稼ぎたいという気持ちがあったが、5000mに出られないことが決まった時は、正直、モチベーションが下がってしまったという。

しかし今は相楽監督や仲間に感謝している。「上級生がタイムを出しているので、それで僕は1500mと3000mSCになっちゃったんですけど、負けてないぞというのを見せられたと思うので、3年生以上を焦らせることはできたんじゃないかなと思っています」。特に昨年は新型コロナウイルスの影響で集団での練習が一時できなくなり、菖蒲はひとりでスピード練習をしていたという。その成果が今回の1500mに現れ、大きな自信になった。

今後は5000mや10000mで勝負したい

前述の通り、チーム内競走は熾烈(しれつ)だ。「27分台が3人いるのはチームとしてはかなりいいことなので、その中で練習させてもらえるのはものすごくありがたいです。その中で鍛えられれば、他大学と差を広げられるだろうし、どんどん上の選手に近づけたらと思っています」。横に目を向けると、三浦をはじめ菖蒲たちの世代はこれまでも多くの記録を更新している。「同じ学年でよかったなと思います。できればいてほしくないんですが、かなり高い目標があるのはありがたいです」

厳しい環境は自分が成長できるチャンスでもある。「負けたくない」という気持ちを胸に、菖蒲は挑む。

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