関学・石井雄也 捕手から三塁に転向し打撃開眼、全国の舞台でも躍動
28年ぶりに関西学生野球春季リーグを制覇し、全日本大学選手権でも57年ぶりの8強に進出するなど、旋風を巻き起こした関西学院大学硬式野球部。石井雄也(2年、大阪桐蔭)はメンバー登録された野手の中で唯一の2年生だ。パワフルな打撃が売りの6番打者に注目していく。
本職は捕手だが「三塁をやらせてください」と転向
石井の持ち味は何と言っても打撃だ。力感のない構えからフルスイングで鋭い打球を飛ばし、本人も「思い切って振れることが武器」と語る。1年時から評価され、リーグ戦に出場。昨年度の秋季リーグ同志社大第1戦では自身の大学初安打をサヨナラ打で決めた、まさに実力派だ。
今年4月の春季リーグ開幕戦。先発オーダーの一覧に「6番・三塁手」で石井雄の文字があった。しかし、「どれだけ通用するだろうか」と不安を抱えていた石井。あることが「初めて」だったのだ。
実は石井の本職は捕手。甲子園の常連・大阪桐蔭高で背番号2を付けた男が、サードのレギュラーとしてスタメンに名を連ねたのだ。さかのぼること、新チームが始動した昨秋。同じ捕手では経験豊富な先輩・佐藤海都(3年、市立尼崎)や山田来刀(4年、関西学院)らがおり、技術面で未熟さを感じていた石井は決断を下した。「自分から『サードをやらせてください』と監督に伝えました。何とかして試合に出て、打撃を生かしたかった」。一片も迷いはなかった。三塁手への転向を決めたその日から内野守備の猛練習は始まった。
打撃で活躍、ベストナインにも選出
打球が多く飛んでくることもあり「難しい」と話すが、リーグを終わってみれば失策はたったの2と無難にこなした。もともと定評のあった打撃では、宿敵・関大との一戦で勝利を決定づける2点適時三塁打を放つなどチーム1位の打率.341と7打点をマーク。活躍が評価され、三塁手としてベストナインにまで選出された。
「クリーンナップは先輩が入ってくれて、プレッシャーを感じずに打てました」。ポジション転向から誕生した「恐怖の6番打者」。打線に厚みを増した関学は、春は1993年以来のリーグ制覇を成し遂げた。
全国の舞台でも物怖じしない
全日本大学選手権でも1回戦の松山大戦から左中間を深々と破る適時二塁打を放つなど、強気な振りは健在。そして、真骨頂を見せたのは2回戦の国際武道大戦だ。1-4のビハインドで迎えた8回表1死一塁での打席。石井は甘く入った球を強振した。打球はものすごい速さで舞い上がり、神宮のレフトスタンド中段に着弾。反撃の狼煙(のろし)を上げる2ラン本塁打となった。
「あの場面なら走者をためてつなぐ、というのが普通だと思います。でも正直狙っていました」と笑う。この一打をきっかけに国武大を逆転し、全国8強へ躍り出た。
全国の舞台で感じたことがある。「慶大の福井章吾さんを見て、『やっぱりキャッチャーはかっこいい』と思いましたね」。同じ大阪桐蔭高の2年先輩で共に扇の要を務めた福井の姿がまぶしく映った。また、「将来的には捕手もやりたいです」と胸の内を明かした。
捕手に再び挑戦するのか、はたまた三塁手を極めるのか。打撃はもちろん、どの守備位置に付くのかにも着目してみてはおもしろいのではないだろうか。