ラグビー

丸和運輸と東大がスポーツ科学の共同研究、20億円の寄付で最先端のラグビー場

東大の藤井輝夫総長(右)に寄付目録を手渡す丸和運輸機関の和佐見勝社長(写真・全て斉藤健仁)

物流会社「丸和運輸機関」と東京大学スポーツ先端科学連携研究機構(UTSSI)がタッグを組んでスポーツ科学の共同研究を行うことになった。スポーツ活動にも力を入れる丸和運輸の和佐見勝社長の寄付により最先端のラグビー場を整備することが決定、同社ラグビー部と選手の動作解析等を究めていく。UTSSIでは意欲ある学生の参加も広く求めるという。7月6日に東大の安田講堂で会見が行われ、藤井輝夫総長や和佐見社長らが発表した。

東大柏にグラウンド2.5面など

計画では、社会人ラグビーチームを所有し大学のラグビー部員を積極的に採用している株式会社丸和運輸機関の和佐見社長が個人で約20億円を東京大学側に寄付、東大柏キャンパス(千葉県柏市)の敷地内に約52,000平方メートルに天然芝と人工芝の2面のグラウンド、さらに屋根の付いた半屋外の練習場、食堂やトレーニングルームだけでなく研究室も併設されたクラブハウスなど備えた「柏センシングフィールド(仮)」が整備される。

「柏センシングフィールド(仮)」完成イメージ(丸和運輸機関提供)

このグラウンドで2014年創部され、将来、国内最高峰のリーグ参入を視野にトップイーストCリーグ(ディヴィジョン2)で活動する丸和運輸ラグビー部「AZ-MOMOTARO’S(アズーモモタロウズ)」の選手たちが練習する。なお2022年春には人工芝グラウンドやクラブハウスなどが、同年9月には天然芝のグラウンドが完成する。公式戦も行う予定で、移動スタンドを設置する方向だ。駒場キャンパス(東京都目黒区)で活動する東大ラグビー部は練習拠点としないが、交流などは考えていくという。

グラウンドが整備されることに伴い、UTSSIとアズ-モモタロウズの間で、選手の身体能力向上、動作解析、戦力強化等のスポーツ科学についての共同研究を行う。現在、東大では運動施設のスマート化計画があり、その一貫として新グラウンドにはカメラやセンサーなど最先端の設備が設置され、選手の動きを解析し、個々の選手のコンディションやメンタル、フィジカルの強化、戦術の強化につなげていく。

トップ目指すアズ-モモタロウズを強化

グラウンド横にできるクラブハウスには研究室も設置される。ラグビー選手のメンタルやフィジカルを最適化するシステム開発の研究も行われ、その研究成果はサッカーや野球などのラグビー以外のスポーツ、高齢者やリハビリなど社会全体に応用していくことを目指している。またグラウンド以外にも共同研究の費用として、丸和運輸側から毎年1000万円を15年間、トータルで総額約2億円が寄付される。

クラブハウス完成イメージ(丸和運輸機関提供)

以前から丸和運輸とBCP(災害などの緊急事態における企業や団体の事業継続計画)の研究で協力しているという東大の藤井総長は「共同研究で構築するシステムは、ラグビーはもちろん他のスポーツや将来的には福祉施設、病院などに広く応用することが可能で社会的意義は大きい。(新しい)グラウンドの整備は現在、東京大学では各種運動施設の計測フィールド化を進めようとしている構想ともオーバーラップしていて、丸和運輸と東大の連携が一層深まることを期待したい」と説明した。

丸和運輸機関は法人として京都大学のラグビーグラウンド整備に寄付をしており、今回、個人として寄付した和佐見社長は「東大とのご縁で、柏キャンパスに新たなグラウンドがでる。環境が人を招きます。安全、安心なグラウンドを整備しないといい選手も来ていただけない。将来、間違いなく優秀な人材を確保できます。また東大と当社ラグビー部で、スポーツ科学に関する共同研究に取り組むことができるのは大きな喜びです。どのような成果が出るか私も非常に期待しています」と話した。

グラウンドの周りに複数台のカメラを設置することなどにより、個々の選手の動作解析だけでなく、メンタルの状態なども計測できるという。最先端の設備により選手に装着するGPS(全地球測位システム)などとは違い、選手の動きをなるべく邪魔せず、さまざまなデータを取ることが可能になる。こうした試みは日本で初めてで、選手のコンディションの最適化と強化をより合理的に達成していく。

来たれ、研究生!

UTSSIの機構長を務める中澤公孝教授は「マンパワーが足りない部分もあるので(バイオメカニクスなどのスポーツ科学に)興味があれる学生にはぜひ、来てほしい」と話した。学部であれば教養学部、大学院では総合文化研究科で研究できる。丸和運輸アズ-モモタロウズのキャプテンFL眞野拓也(京都産業大)は「(新グランドの整備は)素直にうれしいです。トップリーグを目指しいく中でも、素晴らしい環境で練習できるのは光栄です。はやく弟(泰地=東芝ブレイブルーパス)と試合をやりたいですね!」、内山将文ヘッドコーチは「(新しいグラウンドができて)入ってくる人も増えると思います。新リーグへの参入は早くても3年後です。一つひとつ頑張りたい」と意気込んだ。

アズモモタロウズの内山HC(左)と眞野主将(撮影・斉藤健仁)

共同研究の成果も大いに期待しつつ、今春、天理大や明大などラグビーの強豪大学や高校などを中心に26選手が加入したアズ-モモタロウズは最先端のラグビー練習場と東大の知を背景に強豪への階段を上ることができるか。

in Additionあわせて読みたい