ラグビー

帝京大の誇る「スポーツ医学センター棟」とは

帝京大学スポーツ医科学センター棟の外観(撮影・斉藤健仁)

帝京大学(東京・八王子市)に、「帝京大学スポーツ医学センター棟」が完成し、今秋から本格的に稼働している。同大学だけでなく、大学スポーツ、そして日本のスポーツ医科学の発展に大きく貢献すると目される同施設を取材した。

大学選手権9連覇中のラグビー部も使用

同センター棟は地上5階建て、延べ9,000平方キロメートルほど(=約2,700坪)の建物で、約50名(うち約30名が常勤)の専門家が勤務。研究室やトレーニングルームだけでなく、メディカルルーム、治療室、リカバリー施設、測定エリア、室内練習場、アリーナ、食堂など8つのゾーンからなる充実した施設が整えられた。

主に、強化クラブに指定されている、大学選手権9連覇中のラグビー部、箱根駅伝常連の駅伝競走部、硬式野球部、チアリーディング部の4つの強豪クラブの学生たちがすでに使用している。

帝京大学スポーツ医科学センター(TUISSM)は、2007年に設置された医療技術学部スポーツ医療学科の一部を基盤とし、2011年にアスリートのスポーツ医科学的なサポートを進めるために設置された。同センターは「うちかつ強さを」をテーマに「帝京大学のスポーツを強くする」「日本のスポーツを強くする」「スポーツの力で日本を豊かにする」という3つのビジョンを掲げて活動している。今回、同センターの新たな拠点として同センター棟が新設された。

ケガを負った後の競技への復帰やアスリートパフォーマンスの向上には横断的、多角的なサポートが必要ということで、同センター棟では、「メディカル」「フィジカル」「サイエンス」「テクノロジー」の各分野のスタッフがチームを結成し、分野を超えてアスリートをサポートしている。またスポーツ医学の発展に貢献するために、アスリートサポートに関する研究活動も同時に行っていく。

複数のカメラで動作を解析し、けがからの復帰を支援する(撮影・斉藤健仁)

日本の大学レベルでは唯一のハイクオリティーな施設

目玉は、同センター棟の4Fに置かれた「MPI Tokyo」だ。MPI(Movement Performance Institute)とは南カリフォルニア大学にある施設で、アメリカ国外では初めて作られたもの。大学レベルでは日本では同センター棟にしかないというハイクオリティーな施設だ。バイオメカニクス的分析を利用して、動作評価をした上で、ケガからの復帰支援やケガの予防をする。複数のカメラによってマーカーレスで動作解析する機器や歩行やランニングの関節角度などを計測する機器があり、例えば、ケガした後の足の圧力や関節の角度を計測し評価することで、本格的に復帰していいかなどの判断をする。

他にも1Fにはスポーツ医科学クリニックが設置され、スポーツ医療専門の医師が2名おり、持ち運びができる超音波診断機や体の大きな選手でも利用可能な最新のMRI、単純X線など画像診断機器が備えられた。さらに、近年、スポーツ傷害の急性治療に有効性が注目されている、高気圧酸素治療室も設置。ねんざや打撲によって腫れた組織は低酸素状態になるため、高気圧酸素治療によって通常の10~20倍の酸素を血中に溶かすことで、早期に痛みや腫れが軽減するという。スポーツ治療専用に8人同時に入ることができる高気圧酸素治療室を導入している施設は国内では唯一だという。

また1Fの環境制御室では、低酸素の環境を作るだけでなく、温度、湿度もコントロールすることにより、高地や暑熱環境でのトレーニングが可能だ。例えば高地&真夏でマラソンをするときの環境を作りだすことができる。他にはウォーターリカバリー室はプールと、人工炭酸泉、サウナを導入し、トレーニング後に効率よく身体のケアをすることができる。2Fには200名ほどが収容可能な食堂や、ミラーボールが設置されたトレーニングルーム、治療室があり、すでに帝京大学の強化クラブの学生たちは授業の合間に利用している。

授業の合間に利用できるトレーニングルーム(撮影・斉藤健仁)

同センター棟は、帝京大学の八王子キャンパス内にあり、各分野の施設が一つの建物の中に置かれている。そのため、アスリートにカウンセリングを行った上で、各分野のスタッフが連携して情報を共有化できる。選手の効率的なパフォーマンス向上やケガをした時の速やかな復帰といったアスリートの日々のサポートに大きく寄与することが可能になったというわけだ。

1Fにあるスポーツ医科学クリニックでは外来も受け付けており、同センターにはすでに2020年の東京オリンピックに出場する選手が多数いる陸上の強豪国やプロチームからも問い合わせが多数来ている。またプロサッカー選手の本田圭佑選手も帝京大学と契約し、同センターのサポートを受けながら2020年東京オリンピックを目指すことになった。

本田選手はビデオレターを寄せ、その中でこう意気込みを語った。

「ワールドカップを終えてから、自分自身、今後何を目指すか考えた時に、もう一度だけ世界の舞台でやりたいということで、2020年の東京オリンピックを目指して、そしてそこで金メダルを取ることを目指して、頑張ろうということを決意しました。その上で自分が32歳になって、フィジカル的にもう伸びないというふうに言われがちですが、僕はまだ諦めずに、フィジカル的に、また更に、今まで以上に、しかも小さな成長ではなく、大きな成長を目指してやっていきたいと思っています。テーマは、『キング・オブ・ザ・アスリート』、この世界中に存在するアスリートの中で、本当にトップを目指して、残り二年間、死ぬ気でがんばりたいと思っておりますので、帝京大学の持ってる全てを、僕はフル活用したいと思っています。是非、サポートの程よろしくお願い致します」

将来的には本田選手ばかりでなく、日本のトップアスリートたちにも門戸を開いていく予定だ。

帝京大学スポーツ医科学センターと同センター棟が、八王子から帝京大学や大学スポーツという範疇を越えて、日本のスポーツとアスリートたちをサポートし、日本のスポーツを強くしていく。

in Additionあわせて読みたい