相撲

稀勢の里に学んだ「相撲道」 高安、独り立ちのとき

2012年、高安(左)と稽古をする稀勢の里
2012年、高安(左)と稽古をする稀勢の里

 大相撲名古屋場所(愛知・ドルフィンズアリーナ)は6日目の9日、関脇高安が3勝目。腰痛で2日間を休場したが、諦めない。

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 この場所を終えると、高安は「独り立ち」しなければならない。兄弟子だった元横綱稀勢の里(現荒磯親方)が、田子ノ浦部屋から独立するからだ。

 「1万番以上はやっているんじゃないですかね」と振り返る、稀勢の里との稽古。初めて胸を借りたのは15歳の時だ。

 当時の高安は稽古嫌いで、よく部屋から脱走していた。「稽古場で活を入れてもらいました。こてんぱんにしごかれました」。あれから15年余。2人で土俵を独占する三番げいこは、今月1日が最後になった。20番。高安によると、結果は「五分」だったという。

 稀勢の里から言葉でアドバイスを受けた記憶はない。代わりに「体を使って、身をもって指導してくれる。胸を合わせると、わかることがありました」。稀勢の里の生き様がそのまま「自分の相撲道」だという。最後の稽古の後、高安が伝えたのはひと言。「ありがとうございました」。結果こそが恩返しだと思っている。

 過去2場所を三役で10勝、10勝。大関復帰へ大事な今場所だが、腰痛で初日から2日間休場し、機運はしぼんだ。負け越すと振り出しに戻るが、三役の地位を守れれば、再挑戦への権利は残る。

 この日、大栄翔を沈めて3勝目。「残り、集中していきます」。うまくいかなくても腐らない。そんな姿勢も、兄弟子の背中から学んだつもりだ。

(鈴木健輔)

=朝日新聞デジタル2021年07月10日掲載

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