矢野監督が泣いた 阪神が九回2死から劇的サヨナラ勝ち
20イニング連続無得点だった阪神打線が、土壇場で突如目覚めた。
九回2死から近本、糸原、マルテの3連続適時打で追いつき、最後は4番大山が中前にサヨナラ打を運ぶ。「あきらめない野球」を掲げる矢野監督の涙腺は決壊した。
「感動しています。苦しかったですけど、一人ひとりが……」。目は真っ赤で言葉は途切れた。「一年間で一番苦しい時期」と自覚する中で、想像を超える試合を見せられたからだ。
前夜は1安打で零封負け。この日は佐藤輝を先発から外したが、走者を出してもホームが遠かった。
九回に潮目を変えたのはそのルーキーだった。2死一塁、代打で登場。簡単に追い込まれたが、3球目の甘いフォークをたたき、中前安打。DeNAの三嶋にやや油断があったか。
直後の近本から適時打が続く。同点打のマルテも追い込まれながら中前へ。続く大山は勢いに乗り、初球をたたいた。
大山は前夜からずっと音無しだった。「モヤモヤした気持ちはあったんですけど、打つしかないと割り切れた」。前半戦の首位ターンをほぼ手中にする1勝。「誰か一人ではこういう試合展開にならない」と矢野監督。インタビューの最後まで涙ぐんだままだった。
■佐藤輝「無我夢中で食らいついて」
佐藤輝(神) 今季3度目のスタメン落ちだったが、九回に代打で安打。サヨナラへの流れを作った。「もう無我夢中で、食らいついて。価値ある一本になったかなと思います」
近本(神) 九回、チームに21イニングぶりの得点を生む適時打。「とにかく後ろにつなぐことしか考えていませんでした。その後のみんなが本当によく打ってくれて、勝つことができて良かったです」
糸原(神) 「僕も何としても次につなぐという気持ちでした」
マルテ(神) 九回に同点打。3球目のきわどい外角直球がボール判定され、次の球を中前へ。「素直にうれしい。自分だけじゃなく、みんなの仕事なんで」
(伊藤雅哉)=朝日新聞デジタル2021年07月13日掲載