大学野球

連載: プロが語る4years.

壁のなかった1年目、目指すは2年連続盗塁王と日本一 阪神タイガース・近本光司4完

2019年9月19日、154安打目を放ち新人最多安打記録を更新した(撮影・白井伸洋)

連載「プロが語る4years.」の第7弾は、関西学院大学OBでプロ野球・阪神タイガースの近本光司(25)です。最終回となる4回目は、プロ入りを初めて見すえた大阪ガス時代と、プロ1年目の昨シーズンについてです。

大学時代に冷静さと情熱のバランスが大事と気づいた 阪神タイガース・近本光司3

都市対抗でMVP「勝負してええかな」

プロを意識し始めたのは遅かった。子どものころから野球をやっていると、思いの強弱はあっても1度はプロ野球選手へのあこがれを持ちそうなものだが、近本は違った。「あまりなかったですね。自分は身長が低い方だったんで、『なりたい』より『なれない』って思ってました」

関学出身の現役プロ野球選手は、近本のほかに宮西尚生(日本ハムファイターズ投手)と荻野貴司(千葉ロッテマリーンズ外野手)がいる。現在、オリックスバファローズで1軍野手総合兼打撃コーチを務める田口壮さんも関学OBだ。それでも「関学=プロ」というイメージはあまりない。近本も、これまでこの連載で書いてきたように、プロという未来を描いていなかったからこそ関学を選んだ。

大阪ガスに入ったのも「野球をしながら仕事ができるから」。それが一気にプロへの道につながっていった(写真提供・関学スポーツ編集部)

そんな近本がはっきりとプロ入りを意識したのは、社会人野球の名門である大阪ガスでプレーして2年目の2018年だった。4月のJABA岡山大会で、5試合で3本塁打を放った。7月の都市対抗で5割2分4厘の高打率をマークして首位打者となり、最優秀選手賞(MVP)にあたる橋戸賞に輝く。大阪ガスの初優勝に大きく貢献した。「勝負してええかな、って考えになりました」と近本。一気に注目を集め、評価も高まり、プロへの扉が開かれた。同年秋のドラフト会議。地元球団の阪神タイガースから1位指名を受けた。

「野球をやってきて、結果的にプロ野球選手になれたのはよかったと思います。サラリーマンでもやりたいことができるんだったらいいんですけど、なかなかそうもいきませんよね? ドラフト1位でタイガースというすごい球団に入れたのは、すごくよかったです。メディアを使ってうまく自分を表現したり、アピールしたりできるんで、そういった意味でドラフト1位というのはいいと思います」。自分の立ち位置を独特の言い回しで表現した。

関学で田口壮さんの講演会があった際に、ドラフト指名の順位も重要だという話があり覚えていた(撮影・藤井みさ)

「想像できなかった」ことばかりの1年目

野球好きの方ならよくご存じの通り、近本はルーキーイヤーから大車輪の活躍だった。2019年のペナントレース開幕戦は2番センターでスタメン。6回のプロ初ヒットがタイムリースリーベースになった。「やっぱり開幕戦の初ヒットっていうのは印象深いですね。プロ野球生活で1本目っていうのが」。昨年9月19日には、長嶋茂雄さん(読売ジャイアンツ終身名誉監督)のセ・リーグ新人最多安打記録(153)を61年ぶりに更新。最終的に159安打で1年目を終えた。

ドラフトで指名されたときから目標に掲げてきたのが、盗塁王と新人王だった。新人賞は逃したが、36盗塁で盗塁王となり、新人特別賞を受けた。近本は1年目に放った9本のホームランについて「驚きました」と話す。「よく9本打ったなって思いますね。打てて5本ぐらいだと思ってたので。とくに甲子園での3本にはびっくりしてます」。甲子園のスタンドを埋めたファンに見守られての一発は「完璧、っていうのはない」と振り返る。「おっ、入った! って感じで、驚きの方が大きいです」

オールスターゲームでは史上2人目のサイクルヒットを達成、MVPにも選ばれた(撮影・金居達朗)

「こんだけ毎日、試合があることも想像できなかったですし、しんどいことも想像できなかった。こういう結果が出ることも想像できなかったですね」。1年目を振り返って、こう語った。

プロ野球でよく使われる「2年目のジンクス」という言葉も、自然体で受け止めている。「1年目はたまたま大きい壁がなかったということ。だから『2年目……』とは言われると思います。いつかは壁が来ると思うんで、とくに意識することなく、(壁が)来たら来たでそのときの考えであったり、どういうふうに感じるのかを考えたりしていきたい。それが野球人生で一番大きい糧(かて)になると思うんで」。数多くの苦境を乗り越えてきた近本らしい受け止め方だ。

「人生一度きり」、後悔のないように。後輩にはそうメッセージを贈る(撮影・藤井みさ)

2年目の目標を問われ、こう言った。「2年連続の盗塁王を狙いたい。それで、しっかりチームを引っ張って、リーグ優勝、日本一を目指して頑張りたいと思います」。活躍の先に、子どもたちに夢や希望を与える選手となることを誓い、ここからオープン戦、公式戦に臨んでいく。

「何度も逃げそうになった」亜細亜大での4年間 千葉ロッテマリーンズ藤岡裕大1

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