バレー

東海大、相次ぐ大会中止にも確かな手応え インカレ決勝を知るメンバーが目指す日本一

昨年、東海大は全日本インカレ決勝で敗れた(右が横田、左が宮部、撮影・松永早弥香)

昨年度の全日本インカレで、優勝した2015年以来となる決勝進出を果たしたものの、頂点にはあと一歩届かなかった東海大学女子バレーボール部「マーメイズ」。収束の気配が見えないコロナ禍で、思うように実戦経験を得られない中、今年度をどのように戦いながら悲願の日本一を目指すのか。藤井壮浩監督と主将の横田紗椰香(4年、古川学園)、エース候補の宮部愛芽世(2年、金蘭会)が、今の思いを語ってくれた。

鹿屋体育大が4年ぶりインカレV 金本彩花主将「私たちは日本一幸せな4年生でした」

「CONSTRUCTIVE」一人ひとりが積極的に

チームが最大目標とする全日本インカレでは、2015年に通算7度目の優勝を手にした後、16年は4回戦敗退、17年は2回戦敗退と苦しい時期もあった。しかし、今の4年生が入学した18年はベスト8、一昨年は3位と、再び浮上の兆しを見せ始め、昨年は決勝で鹿屋体育大学に1-3で敗れたものの、準優勝に輝いている。ただ、藤井監督は前回大会に関して、思い描くような形で大会に臨めなかったことを明かす。

「去年は先が見えないというか、バレーをやろうと思えば足止めをくらうようなことが続いていましたので、秋季リーグ戦の代替大会から全日本インカレに向けても、全て準備ができたというところまで持っていくのが難しかった。1試合1試合、1セット1セットを重ねながら修正していくという形でしたので、完成度的には鹿屋さんとは随分差があったかなと。そこから次に向けては、やはり時間をかけてトレーニングや練習をしていかないといけない。もう一度、原点に返り、一つひとつ丁寧にということで今年のチームはスタートしました」

今年も様々な大会が中止になっているが、藤井監督から見て、選手たちは前向きな気持ちで練習に取り組めているという(撮影・小野哲史)

今年度のチームテーマは、4年生が中心に考えた「CONSTRUCTIVE~日本一への拘り 仲間の頑張りを自分の力に変えられるチーム」。この狙いを横田は、「本来は『建設的な』という意味ですが、自分たちは『積極的』という意味で捉えています。私たちの学年は自ら何かをやろうとする意識が低いという話から、日本一を目指している東海大学の部員として、一人ひとりがバレーでも生活でも積極的に取り組もうと、CONSTRUCTIVEという目標を掲げました」

しかし、新型コロナウイルスは今年に入っても収束の気配が見えない。例年3月に行っていた合宿は中止となり、4月からの春季リーグ戦も3試合を消化した時点で打ち切り。Vリーグ勢と真剣勝負ができるはずだった5月の黒鷲旗全日本選抜大会と6月の東日本インカレも、昨年に続いて中止を余儀なくされた。藤井監督は「今年はやっと(バレーができる)、という矢先でしたので、落胆はあったかもしれません」と語りながらも、「本人たちは自分たちでコントロールできる範囲内のことはやろうよと、上級生を中心に練習やトレーニングに取り組んでくれたので、私自身はそんなに質が落ちているとは感じませんでした」と、選手たちのポジティブな姿勢を高く評価する。

元気印の横田主将がチームを牽引

「誰かに頼るチームは、あまり好みじゃない。誰でも得意な分野や苦手な分野があり、一人ひとりにその場面、場面でリーダーになれたらいいなと。リーダーや上級生が引っ張るべきという考えもありますが、うちの場合は、いかに周りがフォローアップできるかをチーム作りの根底として考えています」

理想とするチームの形を藤井監督はそう話すが、それでもチームの精神的支柱であり、「元気印で、旗振り的存在」の横田には絶大な信頼を寄せている。

横田は姉・真未の背中を追って、バレーと向き合ってきた(撮影・小野哲史)

横田はこれまでバレーの名門校で、常に日本一を目指す日々を送ってきた。愛知県豊田市出身ながら、長野県の裾花中学に進学し、2年生の時に全国制覇。高校は宮城県の古川学園に進み、春高バレーやインターハイで活躍した。東海大に進学した18年には、U23日本代表に選出され、アジアカップでの銀メダル獲得に大きく貢献している。そうした歩みの背景には、Vリーグのデンソーエアリービーズで1年目の昨季、Vリーグ新人賞に輝いた2歳上の姉・真未の存在がある。横田はいつもその背中を追いかけるように、姉がたどってきたのと同じ道を歩んできた。

「去年の自粛期間中に、実家で久しぶりに姉と1、2カ月を一緒に生活をして、自分とタイプは違いますが、しっかりしているし、勉強になることが多かった。今でも悩むことがあれば、聞いたりしています。教えてもらったことをそのままできなくても、こういう捉え方ができるという自分の引き出しのひとつにもなる。姉はいつになってもすごいなと思えて、尊敬の気持ちがなくならない存在です」

とはいえ、大学2年目からの横田は逆風に晒(さら)されることの方が多かった。2年生の春にアキレス腱を痛め、約1年に及ぶ長期離脱。ようやく完治したところで、今度はコロナの猛威に襲われた。チームの活動ができるようになる昨年8月までの1年4カ月間、全くプレーができず、実戦復帰は10月の秋季リーグ戦代替大会まで待たねばならなかった。それでも横田は「体が覚えているので、技術的にブランクは感じなかった」と代替大会で優秀選手賞に選ばれ、全日本インカレではブロック賞に輝くなど、下級生中心のチームで力強く後輩たちを引っ張った。

中学時代から一緒に練習をする機会があった宮部は、横田について、「リーダーシップがあるというか、まさにリーダーという人で、チームをぎゅっとまとめてくれるので自分たちもやりやすい。でも、あまり縛り過ぎないところもあって、私たちの意見も聞いてくれるし、自由に発言したりプレー面で戦略を提案したりできるやりやすさがあります」と語り、学年は違えど、同じ目標を目指すチームメートとして良好な関係を築いている。

リザーブだったメンバーも台頭

今年4月に松蔭大学、筑波大学、国士舘大学をいずれもストレートで下した春季リーグ戦では、先発の顔ぶれが昨年の全日本インカレ決勝と全く同じだった。メンバーが変わらないというのは、バレーにおいて不可欠な連携の面で大きなアドバンテージがある。

セッターには高校時代に春高連覇を成し遂げ、19年U20世界選手権優勝メンバーでもある中川つかさ(3年、金蘭会)が入り、その対角には山下晴奈(3年、福井工大福井)。ミドルブロッカーは横田と伊藤麻緒(3年、富士見)、両レフトは宮部と佐々木遥子(2年、市立船橋)、リベロは川畑遥奈(3年、京都橘)が務めた。3年生の4人は、2年前のルーキーイヤーから主力を担う実力者。宮部は春高連覇や大会の最優秀選手賞に加え、高校3年生だった19年にはシニアの日本代表に選ばれた、エース候補のサイドアタッカーだ。

宮部は高校生の時、日本代表に選出されている(撮影・松永早弥香)

リーグ戦は3試合しか戦えなかったが、藤井監督は「春の時点での完成度としては、上級生を中心に十分納得のいくところまで、しっかり組み立てていた。ワンパターンではなく、いくつかのパターンを使いこなす域にいきたいという試みから、スパイクやパス、バックアタックなどで去年よりテンポを少し速くし、これまでリザーブだったメンバーも台頭してきました。トライしていることが少しずつ形になりかけてきた感じです」と話し、横田も確かな手応えを感じている。

「(合宿などで練習試合の場がなかったため)春に実際に戦うまでは、相手とどこまで、どういうふうに戦えるのか分からない状態でしたが、春の3試合で、バックアタックのテンポを速めたり打数を増やしたり、自分たちが強化してきた部分が成果として出たので、いいスタートが切れました」

Vリーグ勢と戦ったV・サマーリーグで自分の強みを実感

宮部はさらに6月下旬のV・サマーリーグで、中川らとともに東日本大学選抜の一員として、Vリーグ勢と6試合を戦い、「大学卒業後もバレーを続けたいと思っているので、V・サマーリーグはいい経験になったし、通用しないところもありましたが、『ここが自分の強みなんだ』と再認識できるところもあった」と、リーグ戦も含めて、チームや個人の成長を感じている。自身はエースという自覚を強く持っているわけではないが、「攻撃の効果率を上げることが今の目標。そこは毎日のゲーム練習から意識しています。それを積み重ねていければ、攻撃面でチームに貢献できるし、全日本インカレではチーム最多得点を目指したいです」と、絶対的エースへの階段を一歩一歩昇っている。

先行きが見えない中でも、気持ちを切らすことなく挑み続ける(撮影・小野哲史)

こうしたメンバーを中心にチームは夏にレベルアップを図り、秋以降の戦いに備えていく。とくに全日本インカレに懸ける思いは強い。横田は「去年は半年近く活動を自粛した状態で、完成度は1年かけて作るチームのように高くなかったけれど、準優勝までいった。そのメンバーが残っている今年はこのチャンスをものにしなかったらもったいないし、チャンスがあるからこそ必ずつかみたい」と力を込める。

マーメイズはあらゆる困難をチーム全員で乗り越え、6年ぶりの日本一に向かって突き進む。

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