筑波大が3位決定戦で順大に勝利 万代真奈美主将が流した悔しさと感謝の涙
第67回 全日本大学女子選手権 3位決定戦
12月5日
筑波大学 3(26-24.23-25.25-21.23-25.15-11)2 順天堂大学
うれしさよりも、悔しさが勝る複雑な涙。順天堂大学とのフルセットに及ぶ激闘を制し、3位を決めた筑波大学主将、万代(まんだい)真奈美(4年、就実)は試合直後のインタビューで声を詰まらせた。「(インカレで)自分たちが3連覇することを目標にしてきました。それが達成できなくて本当に申し訳なくて。でも、最後に勝てたのはみんなのおかげです」
悔しさで寝つけず、でも最後の試合だから
準決勝で鹿屋体育大学に敗れ、その夢はかなわなかった。それでもまだ試合は続くし、最後の試合で勝つか、負けるかは大きく異なる。何より主将として、これからのチームへつなげるために果たさなければならない役割がある。頭では分かっていても、寝つけぬ夜を過ごし、朝を迎えて思った。
「あー負けたんだ、と。切り替えなければいけないと思っていても、スパッと切り替えるのは無理でした。それでも結果は変わらない。こんな顔でコートに立つわけにはいかない、やらなきゃ、と。負けたことも認めて、“次、次”と自分に言い聞かせて臨んだ試合でした」
しかもセッターというポジションはどんな状況であっても、冷静でなければならない。何が何でも勝つんだ、と思いが強くなればなるほど丁寧さに欠けてしまう場面もあったと反省するが、自ら得点を取ることができないポジションだからこそ、仲間を信じて託す。レフト、ライト、ミドル、バックアタックと攻撃を散りばめ、相手にリードされても焦らず取り返す。第1セットは26-24で先取し、第2セットは23-25で順大が奪取。互いが譲らず、全てを出し尽くす総力戦。
順大主将・島田、春高の悔しさを今
たとえこの舞台が決勝ではなかったとしても、最後の一戦にふさわしい、1点を巡る好ゲームが展開された。互いが2セットずつを取り合い、フルセットを迎える中、順大の主将、島田美紅(4年、金蘭会)の脳裏に4年前の記憶がよぎった。
「(筑波の万代主将が在籍した就実にフルセットで負けた)春高がフラッシュバックしました。ここでやらないとまた負ける、と思ったんです。結果的に負けたとしても出し切らずに終わるのはいや。自分は周りを引き上げることに徹底して、やるべきことをやろう、と前だけを向いて、勝つためにとにかく全力でした」
春高やインターハイなど高校時代の公式戦で対戦しただけでなく、ともにアンダーカテゴリー日本代表にも選出されたふたりは旧知の仲だ。万代主将も島田主将に対して「仲間であり、ライバルでもあり、戦友でもある」と言うように、負けたくない相手であるとともに、互いにいつも日本一を目指してぶつかってきた相手でもある。
就実高と金蘭会高を卒業し、ともに大学へ進学。それぞれの進路でどちらも主将となり、最後に頂点へ立つことを目指した最後の年。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、春季リーグ、東日本インカレが中止になり、なんとか秋季代替試合が開催された。直接対決は筑波大が3-1で制したが、同勝敗によるセット率で順大が1位となり、筑波大は僅差で2位だった。
たくさんの支えの中で、みんなと最後まで戦えた
これまで流した涙、そして主将として数えきれないほどの苦しいこと、つらいことに直面し、乗り越えてきたラストシーズンでどれだけチームをまとめ、つくることができたか。個対個ではなく、それぞれが率いるチームとして上回るのはどちらか。様々な思いがぶつかり合うかのように、互いに2セットずつを取って迎えた最終セットも白熱した攻防が繰り広げられた。
開始早々、2点を先行した筑波大に対し、追う順大。ブロックがそろった状態でも「味方を信じて託した」という万代のトスワークでリードする筑波大に対し、島田はサーブレシーブやブロックフォローに務め、点差が広がっても「大丈夫、笑顔で!」と周囲に声をかける。長いラリーが繰り返される中、最後は島田のスパイクがラインを割り15-11。筑波大が大熱戦を制し、3位決定戦に勝利した。
まさに死力を出し尽くした総力戦。試合後、勝利した万代は涙しながら「インカレがなくなってしまう競技もある中、たくさんの支えのおかげで最後まで戦わせてもらえた」と周囲に対する感謝を述べ、敗れた島田は「心残りもあるけれど、出し切った」と笑顔で仲間を労う。最後まで、主将として振る舞う2人の姿があった。
4冠、3連覇はかなわなかったけど
準決勝で敗れた翌日の3位決定戦。両校ともに、「なぜ」や数えきれないほどの「たら」「れば」に後悔を巡らせながら、それでも「勝って終わろう」と臨んだ最後の一戦。学校にも通えず、練習すらできない期間を経て迎えたインカレは、大学最後の大会という以上に大きな意味を持つ、特別なものだったと万代は言う。
「自分たちの代がスタートした直後から、4冠、3連覇を目標にエンジン全開でした。でも試合がなくなり、それがいきなり絶たれてしまった。その時に、自分たちにとってどれほどバレーボールが大事で、ストレスなく練習や試合ができることは当たり前じゃないと教えてもらいました。(敗れた)鹿屋との試合でも『もっとできる』とか『もっとうまくなりたい』とか、いろんな思いを感じることができたし、そういう全部を含めたこの1年。4年間積み重ねてきたことは無駄じゃなかったし、成長させてもらった大事な時間でした」
かけがえのない経験を糧に、それぞれが新たなステージでレベルアップを誓う。仲間として、ライバルとして。かなええられなかった夢を、後輩たちに託すように。ふたりの物語も、またこれからへと続いていく。