レスリング

特集:東京オリンピック・パラリンピック

女子50kg級須﨑優衣、あきらめなかった早大初の夏季五輪女性金メダリスト

八田一朗氏の書の前で金メダルを掲げる須﨑優衣(撮影・全て朝日新聞社)

東京オリンピックのレスリング女子50kg級で金メダルを獲得した早稲田大学4年の須﨑優衣(東京・安部学院)が9月1日、母校のレスリング場で開かれた「称(たた)える会」に出席。「初めての五輪でどうしたら勝てるのか、何をしたら正解なのか思い悩んだ時期もあった。試合では練習してきたことを信じて絶対勝つという信念を持ってやりきれたことが金メダルにつながった。本当にたくさんの方々に応援して頂いたおかげだと思っています。これからは金メダリストとしてふさわしい人間になれるようにさらに強くなりたい」などと喜びを語った。

レスリング女子50キロ級、須崎優衣が金メダル 「本当に夢みたい」

国内レスリング発祥の早大

早大レスリング部は日本レスリングの父とも呼ばれる八田一朗氏が1931年に創部した国内レスリング発祥のクラブ。同部出身者ではフリー90kg級で1984年ロサンゼルス大会と88年ソウル大会で連続銀メダルの太田章氏(現・早大スポーツ科学学術院教授)以来の五輪メダル獲得となったが、夏季オリンピックでは卒業生も含めて早大初の女性金メダリストになった。

2004年のアテネ大会から採用された女子では、五輪4連覇の伊調馨さんや東京大会を制した川井梨紗子と友香子(ともにジャパンビバレッジ)の姉妹ら日本代表は至学館大学(前中京女子大)勢が席巻してきた。須﨑は中学2年から寮生活のJOCエリートアカデミーに入校し、レスリングの英才教育を受けてきた。そして、父や姉も所属していた早大レスリング部へ進んだ。「自分が(早大女子金メダリスト)初めての人になりたいという思いが入学した当初からずっとあり、達成できてよかった」と振り返った。

父の康弘さん(左)は早大レスリング部出身

ぎりぎりまで授業も

スポーツ科学部の4年生。石井昌幸教授のゼミで国際スポーツ文化論などを学んでいる。石井教授は「欠席するときは必ず連絡が入るし、オリンピック直前も前期終盤の授業にオンラインで出席した」と最終調整中のナショナルトレセンから参加するなど須﨑の授業態度の一面を紹介した。卒業論文について本人は「授業の中でいろんな発表があったので、その発表をもとに最終的にテーマを決めたい。まだ、決まっていないので急ピッチで頑張らないと」と話した。

オリンピックでは開会式で日本選手団の騎手を務めた後、レスリングの出番は大会最終盤だった。「テレビで見ていて他競技の方の活躍からすごく刺激をもらい、頑張る活力になった。女子バスケの方々とお友達になれ、エリートアカデミーで同期だった平野美宇ちゃん(卓球)とも話せ、すごく楽しい閉会式でした」と振り返った。

卒業後もレスリングを続け五輪連覇を目指す

オリンピック連覇へ

オリンピックでは全4試合をテクニカルフォール勝ちし、1点も失わない完勝だった。しかし、大学1年の時に大けがをしたこともあり、五輪代表入りが絶望視された時期もあった。世界を目指す後輩たちにアドバイスを求められて、須﨑は言った。

「自分が今回感じたのは、あきらめなければ夢はかなうということ。一度は自分も東京オリンピックの夢が絶たれて厳しい状況になった。そんな中でも周りの方々に支えられて、少しの可能性を信じてあきらめずに頑張ってこれたことが、今回の金メダルにつながった。どんなことがあってもあきらめずに、夢を追い続ければ夢はかなうということを、信じて頑張ってもらいたい」

すでに早大でも練習を再開、今後は、就職先を探して卒業後もレスリングを続ける。3年後のパリ大会でのオリンピック連覇を狙うという。

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