若い力台頭、結実したアスリート強化 パラのメダル数は倍増51個
東京パラリンピックに向けた日本の強化は2013年の大会招致決定後に始まり、金メダルゼロだった16年リオデジャネイロ大会以降に本格化した。
大会延期前に設定した目標は「金メダル20個、国・地域別メダルランキング7位」。結果は金メダル13個、ランキング11位だった。ただ、世界を追う立場の日本にとって、コロナ禍の影響を考えれば、前回の2倍超となる51個のメダルを積み上げたことは一定の成果があったといえる。
光ったのは、若い力の台頭だ。競泳では20歳の山口尚秀が男子100メートル平泳ぎ(知的障害)で金メダル。14歳の山田美幸は背泳ぎ2種目(運動機能障害)で銀メダルに輝き、日本選手メダリストの最年少記録を塗り替えた。現役生活が五輪よりも長いパラリンピックでは、経験豊かなベテランが活躍することが多い中、新風を吹き込んだ。
今大会から採用されたバドミントンでも19歳の梶原大暉(男子シングルス車いすWH2)、23歳の里見紗李奈はシングルス(車いすWH1)とダブルスで2冠に輝いた。
また、バドミントンは14種目のうち、金3、銀1、銅5の計9個のメダルを獲得。メダル量産の背景には、充実した競技環境があった。不動産会社から東京都内の体育館を競技団体に無償で提供され、いつでも練習することができた。
パラ選手の強化拠点「味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)イースト」(東京都北区)が19年に完成し、さまざまな競技の長期合宿も可能になった。強化予算は選手発掘や育成プロジェクトのほか、メダル獲得の可能性が高い車いすテニスやボッチャなどに重点的に充てた。
今大会では、競技の公平性を保つためのパラ独自のルール「クラス分け」にも注目が集まった。北京大会金メダリストで陸上男子車いすの伊藤智也は開幕直前に障害が一つ軽いクラスに変わり、メダル獲得が遠のいた。それでも自己記録を更新し、競技にかける執念を見せつけた。
新たな潮流を感じさせたのが義足の走り幅跳びだ。男女4種目のうち3種目で障害が重い両足義足の選手が、片足義足の選手を抑えて優勝を果たした。障害をカバーする道具の特性を最大限に生かし、いかに使いこなすか。五輪にはないパラの魅力の一つだ。
(榊原一生)=朝日新聞デジタル2021年09月05日掲載