ラグビー

近畿大学が学生王者に快勝発進、天理大学は6年ぶりの黒星 関西大学A開幕

前半22分、近畿大学の植田和磨が先制のトライ(写真は全て関西ラグビーフットボール協会提供)

関西大学ラグビーA(1部)リーグは波乱の幕開けとなった。昨シーズン初めて大学日本一となりリーグ6連覇を狙う天理大学が昨季は最下位(8位)に沈んだ近畿大学に7-23(前半0-10)で敗れた。天理大のリーグでの黒星は2015年以来、5年間続いていた連勝は「32」(16~19年各7勝、20年4勝)で止まった。同志社大学は関西大学から11トライを奪い、好スタートを切った。コロナ禍で京都産業大-摂南大は10月に延期となったが、12月まで通常のリーグ戦と入れ替え戦も実施する予定。勝ち点制となり、勝ち4点、引き分け2、負け0。負けても7点差以内と、勝敗に関係なく4トライ以上を挙げたらボーナス点1が加わる。

天理出身、福山竜斗主将の思い

近大の天理大戦にかける思いが結実した。試合後、中島茂総監督はまず、リーグ戦が始まったことへの謝辞を述べてから切り出した。「直近5年間の関西のAリーグの成績をみますと、天理大学が関西リーグを制している。そして、同志社大学と京都産業大学が3強に食い込んできている、そういう図式だったと思います。何とかここらあたりで一矢報いたい、ということを思っていたんです」。中島総監督は1971年に近大の監督に就任し、関西大学ラグビー界の生き字引でもある。オンライン会見で、殊勲の福山竜斗主将(4年)を横に言った。「今年のキャプテンの福山君は天理高校出身です。本来なら天理高校の学生は天理大学へ進む人が多いのですが、彼は近大を選んだ理由の一つに近大に入って天理を破ると4年間、本気で言い続けてきたということです。そういう意味で今年はキャプテン福山を中心に、本気で天理を倒すためにはどうしたらいいのかということをずっと続けてきていた」

天理大に快勝し会見する近大の福山主将(左)と中島総監督

変則日程だった昨年、近大は天理大に0-50で完敗した。7トライを浴びた。シーズン後半はコロナ禍で出場できなくなり、最下位で終わった。メンバーが入れ替わった今年の春季トーナメント2回戦(5月30日)、また敗れたが22-27の接戦を演じた。「5点差で敗れて、そこで初めて天理大学さんの背中が見えた気がして。そこからはチームの雰囲気や練習に取り組む態度がすごく上がった。自分たちの持っている全ての力を出さないと天理大学さんには勝利できないとわかっていたので、今日の試合は間違いなく今年1番の出来でした」。福山主将の言葉には思いが詰まっていた。

近大が接点で圧力

天理大の小松節夫監督が「近畿大学さんのブレークダウンの圧力は、正直、予想以上にプレッシャーをかけてこられた。そういうところで慌ててミスが出て、いいテンポでボールが出なかった」と振り返った。22分の前半唯一のトライは、近大が中央付近での相手の攻撃をしつこく食い止め、左プロップ紙森陽太(4年、大阪桐蔭)がこぼれ球を拾って逆襲したのがきっかけだった。ゴール前左ラインアウトから素早く右へ展開した。ラインアウトから離れた位置にいたスクラムハーフやループプレーで天理大の防御を機能させず、ウィング植田和磨(1年、報徳学園)が右隅に飛び込んだ。

結局、近大は一度もリードを許さなかった。失った1トライは、パスが乱れてこぼれた球を天理大ロックのパトリク・ヴァカタ(1年、日本航空石川)に拾われ一気に運ばれたもの。最後まで防御網は崩れなかった。福山主将は「天理さんの強みであるFWのところで戦ってくるのは予想していた。そこで(近大の)FWが80分間、引かずにずっと上がり続けてくれたからこそバックスラインもプレッシャーをかけ続けられた」とFWの奮闘に感謝した。

近大はスクラムでも天理大(黒)相手に互角以上の健闘をみせた


近大が後半に追加した2つのトライはともにスクラムが起点だった。セットプレーの安定が大きかったが、紙森は「とてもバックスに感謝しています」。バックスはFWを、FWはバックスを、お互いの信頼感が垣間見えた。プレーヤー・オブ・ザ・マッチは4年間の思いを実らせた福山主将だったが、けが人続出の右プロップで天理大スクラムと渡り合った稲場巧(近大附)、身長171cmながらFWとバックスのつなぎ役として非凡さをみせたNo.8古寺直希(石見智翠館)、先制トライの植田と1年生トリオの活躍も光った。近大は10月9日の次戦で同志社大に挑む。

「この負けをどう捉えるか。始まったばかり」

天理大・小松節夫監督 「前半、風下で一つ(トライを)取られて、後半、巻き返そうと思ったがなかなかチャンスがなく、自陣での戦いをしいられた。敵陣に入るチャンスはいくつかあったが、自分たちのミスとかペナルティーでチャンス生かせなかった。この負けをどう捉えるかしっかり考えて、まだ、始まったばかりなのであきらめずに頑張っていきたい」

天理大・佐藤康主将 「自分たちのペナルティーで自陣に来てしまい、そこから相手の思うようなアタックをさせてしまった。ずっと引いて引いて、受けて受けての状態だったので、相手ペースになってしまった。近畿大学さんに対してセットプレー、特にスクラムで準備していたが、(準備したことを)できなかったというよりプレッシャーを受けてしまった」

関西大学ラグビーA(1部)リーグ日程

【9月】
18日 同志社75-8関西大
19日 立命館43-24関学大、天理大7-23近畿大
【10月】
03日 関学大-摂南大、天理大-関西大
09日 立命館-京産大、同志社-近畿大
16日 関学大-関西大、天理大-摂南大
17日 京産大-近畿大、立命館-同志社
24日 京産大-摂南大
30日 近畿大-関学大、摂南大-同志社
31日 関西大-京産大、天理大-立命館
【11月】
06日 同志社-京産大、天理大-関学大
07日 摂南大-関西大、近畿大-立命館
20日 関学大-同志社、京産大-天理大
21日 近畿大-摂南大、関西大-立命館
28日 関西大-近畿大、摂南大-立命館
【12月】
04日 京産大-関学大、同志社-天理大
11日 入れ替え戦=A8位-B1位、A7位-B2位

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