野球

特集:2021年 大学球界のドラフト候補たち

関西学院大学の山本晃大、熱く冷静に腕を振りプロ入りへ最後のアピール

上背のある左腕から繰り出すキレのある球がアピールポイントだ(写真提供・関西学院大学野球部)

強い気持ちを持ちながら思うような結果を残せなかった関西学院大学の大型左腕・山本晃大(こうだい、4年・佐久長聖)が、最後の最後にようやく殻を破ろうとしている。

全力で抑え「気合出しまくっていきました」

関西学生野球連盟の秋季リーグ第3節1回戦(9月25日)、同志社大学と関西学院大学の試合は、その前に行われた2試合が熱戦続きだったこともあり、プレーボールがかかったのは17時01分。4分後には早くも照明が点灯した。プロも使用する美しい球場、ほっともっとフィールド神戸でのナイトゲームという贅沢な環境で、関西学院大学は1点を追う八回表に主将・杉園大樹(4年・明豊)の2点適時打で逆転に成功。4-3と試合をひっくり返すとその裏の守備で山本の名前がコールされた。「杉園が打ってくれて良い場面で回ってきたんで、全力で抑えるようしっかり投げました。気合い出しまくっていきました」

ナイター照明に照らされたマウンドから、身長186cmセンチの左腕が繰り出す球が映える。2つの三振を奪って三者凡退。イニングを跨いだ1点リードの九回も得点圏に走者を背負ったものの、ホームベースを踏ませない。3つのアウトを全て三振で奪い、2回5奪三振の内容で試合を締めくくった。

ナイター試合の緊迫した終盤に好投した(撮影・小中翔太)

この好投に本荘雅章監督は「気持ちの入るところはすごいなと思います。悪い時は気持ちが入り過ぎて乱れるんですけど、今日は気持ちが入りつつもうまくコントロールして良かったですね。中々殻を破れなかったんですけど、この春ぐらいからボールが強くなってきたんで、今日もスピード感と言いますか、だいぶ強さが出てきました。中々数字も出なくてそれが課題だったんです。『ランニング1つとっても強く走れ』と言ってきて、それがボールに繋(つな)がってきた。今日はたいしたもんだと思います。ナイスピッチングでした」と称(たた)えていた。

勝利目前の九回に、その悪い面が少しだけ顔を覗かせていたが崩れなかった。この回に対戦した4人の打者は全てボールが先行、特に2死二塁の場面では3ボールとしてしまう。勝ちを意識し投げ急ぎがちなこの場面で、山本は「熱くなってまっすぐ、まっすぐになって打たれちゃうことがあったのでそこは冷静に、相手がストレート狙ってるなと思ったんで、変化球で攻めようと思って投げました」

1番自信のある球はストレートを見せた後のチェンジアップ。それまでの三振は全てこの配球で奪っていたが、最後の打者に対してだけは捕手のサインに何度も首を振り変化球攻めを続けた。そしてフルカウントとしてから初めて投げたストレートをコースいっぱいに突き刺した。ワンテンポためた球審の手が上がると、山本はマウンド上でガッツポーズを見せた。

実力ある同級生に刺激されて

入学した時からプロへの思いは強かった。「プロ野球選手になりたいというのがずっと目標だったので、入学した時からそういう思いでやってました。同学年に黒原がいて、入学した時から負けないようにやってきました。幼い頃からの目標だったので、残り何試合投げるかわからないですけど全力でアピールしたいと思います」

神宮で先発し3回無失点も「もっと長いイニングを投げられるようなピッチャーにならないと。悔しい思いの方が強かったです」(写真提供・関西学院大学野球部)

同級生には今年のドラフト上位候補の黒原拓未(4年・智辯和歌山)がいた。「入学した時からこいつはプロになるなと思っていたんで、僕も一緒になりたいなと思ってました」。1年春からリーグ戦で活躍するライバルに追いつけ、追い越せと山本も1年秋にリーグ戦デビュー。しかしその後は公式戦マウンドが遠かった。高校時代に目立った実績はなく入学時の体格は182cm、70kg。野球選手としてはひょろい体型で、最速は130km/h台後半とよくいるタイプの1人に過ぎなかった。

関西学院大学のエース・黒原拓未 心身共に充実し好投を続けるプロ注目の左腕

最後は笑って終わりたい

そのスタートから「プロになるにはスピードが絶対必要なので、ストレートのスピードアップに1番ウェートを置いて練習しました。最初は線が細かったので、とにかくスピードアップにつながるように体重を増やそうと思って、体を大きくすることはずっとやってました」。努力が実り、現在は186cm、88kgの大型左腕を名乗れるまでになり、3年の冬から4年春にかけて球速アップ、ウィニングショットのチェンジアップのキレも増した。

「最後なんで、どこで投げても全力でいきたいです」と熱く冷静に腕を振る(写真提供・関西学院大学野球部)

4年春の同志社大学戦で148km/hをマーク、6月には全日本選手権での先発マウンドも任された。「優勝した以外は自分、結果出てなくて、苦しい悔しいピッチングの方が多かったんで、最後ぐらいは笑って終われるようにしたいなと思います。将来はスケールの大きい選手になりたい」と4年間を振り返る。球の強さと冷静さがようやく噛(か)み合い、ベストピッチを見せた翌日も2点リードの九回に登板し勝利の瞬間をマウンド上で迎えた。大学でもまだ身長は伸びている。最後のアピールはプロに届くか。

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