サッカー

流通経大が12年ぶり関東リーグV 合言葉はあのJ監督へ「恩返し」

優勝を決めた13日の明治大戦で決勝点を決めて喜ぶ流通経済大のMF仙波大志(撮影・勝見壮史)

 サッカーの関東大学リーグ1部は13日、全日程が終了し、流通経大が12年ぶり、4度目の関東王者となった。大学サッカーの雄も、低迷して2部降格を経験した。1年での1部復帰、そして優勝を達成できた要因として選手らが口にしたのは、ある人への恩返しの思いだった。

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 「いなくなって1年目に、優勝という結果で示すことが恩返しだと思っていた」。3連覇を狙った明大に2―1で競り勝った流通経大の主将FW満田誠は、そう喜んだ。勝った方が優勝という最終戦だった。

 前半に先取点を許す苦しい展開をはね返した。後半3分に右CKのこぼれ球をMF佐藤響(きょう)が豪快に蹴り込んで同点。攻勢を続け、同29分にMF仙波大志がゴール左からのパスから決勝ゴールを決めた。中野雄二監督に「試合を決めてこい」とハグされて送り出された4年生は、ベンチの選手たちにもみくちゃにされながら喜んだ。

 流通経大は、2006年に関東大学1部で初優勝。以降、毎年Jリーガーを輩出するなど、大学サッカー界の顔的な存在だった。全日本大学選手権を2度、全日本大学トーナメントを3度制したが、関東リーグでは09年を最後に優勝から遠ざかった。19年には11位に沈んで2部に降格した。

 1998年に就任して強豪に育て上げた中野監督も「流経の一つの時代の炎が消えかけた」と思うほど、自信を失っていた。

 そんなチームを変えたのが、現在J2京都サンガを率いる貴裁(チョウキジェ)氏だった。降格当時、選手やスタッフにパワハラ行為をしたとして、J1湘南ベルマーレの監督を退任し、プロで監督をするために必要なコーチライセンスが1年間停止されていた身。再起をめざす指導者とチーム。互いに、これ以上ない「パートナー」だった。

 氏が「学生たちと一緒に日々を過ごす中で、学ぶことはたくさんある」と言い、選手たちはプロの指導者から多くのことを吸収した。

 選手たちの急成長に驚いた中野監督は言う。「さんが、またチャレンジする集団にしてくれた」。チーム内で新型コロナウイルスの感染者が出て、40日ほど活動できない苦難にも選手たちはめげなかった。悲願のタイトルをかけた大一番も、見事な逆転勝利だった。中野監督は「今日の勝利も9割以上、さんの魂を選手たちが持っていたおかげ」と改めて感謝した。

 決勝点を決めた仙波はいう。「さんがいないから負けた、とは思われたくなかった。京都も12年ぶりのJ1昇格がかかっている。まずは僕らが優勝して、京都が続いてくれたら、うれしい」

 貴裁監督が率いる京都はJ2で現在、J1昇格圏内となる2位につけている。氏はテクニカルアドバイザーとして流通経大に名を残しており、中野監督によると、J2終了後にはチームに合流し、全日本大学選手権に向けて指導する予定だという。

(勝見壮史)

=朝日新聞デジタル2021年11月14日掲載

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