サッカー

京都産業大・今岡陽太 何度も乗り越えた挫折、仲間とともにラストイヤーの集大成を

サッカーを続ける上で挫折は何度もあったと話す

京都産業大サッカー部でキャプテンを務める今岡陽太(4年、大阪桐蔭)。関西学生リーグでは優勝を目指して臨んだものの、惜しくも2位。しかしインカレへの切符をつかんだ。ラストイヤーにチームを全力で引っ張る彼に「逆境を乗り越えた経験」というテーマで話を聞いた。

高校で昇格できず「やめようとすら」

「めちゃくちゃいっぱいありますよ!」

サッカーをやっていて、挫折した経験はありますか? とたずねると、今岡は明るい声とともにそう答えてくれた。

小学校1年生のときにサッカーを始めた今岡。「仲のいい子が小学校のサッカークラブに入ってたんです。平日はずっとその友達と遊んでたんですが、サッカークラブの練習があるから土日は遊べないって言われて。だったら自分もクラブに入ろうかなって、それぐらいの気持ちでした」

友達と遊びたい、ただ楽しいから。はじめはそんな動機だったが、やっていくうちにサッカーの面白さにどんどんのめり込んでいった。転機は中学入学のとき。今岡は学校の部活動ではなく、ヴィッセル神戸の下部組織であるユースチームに入団した。言うまでもなく、トップチームはJリーグに所属するプロ。指導者やスタッフも元プロや、トップチームに関わっていた人がほとんどだった。体のケアや、日々食べるもの、飲むものなどにも気をつけるように言われ、プロの世界の厳しさについても常に伝えられていた。その中で自然と「プロになるんだ」という気持ちが芽生え、強くなっていった。

サッカーを続ける上で挫折は何度もあったと話す

中3の時はエースナンバーの10番をつけ、副キャプテンを務めていた今岡。同学年には自分を含め15人のメンバーがいたが、高校生カテゴリのユースチームは1学年10人。誰かが落ちるとはわかっていたが、チーム内で活躍していた今岡には、「自分は上に上がれるだろう」という自信があった。だが、今岡は上のチームに上がれなかった。

当時、身体能力の高さで勝負していた今岡。だが先を見据えた際に、高校生になると他の選手にも身体能力の高さが身についてくるので、勝てなくなるのではというのが理由だった。「そうですか、としか言えませんでした。絶対に上に上がれる、そしてプロになると思っていたので、本当にショックでした。サッカーを続けるかどうかすら悩みました」

夢を打ち砕かれ、落ち込んだ今岡。立ち直れたのは家族の存在が大きかった。「2つ上に兄がいるんですが、普段はサッカーの話はまったくしなかったんです。でもその時は兄が『(やめるのは)もったいないぞ、お前はいいものを持ってるんだから、他のところで勝負するべきや』と言ってくれて、それでもう一度やろう、と思えたんです」

「人間性」を重視し基礎を作る

高校は大阪の強豪校のひとつである大阪桐蔭高校へと進んだ。「入学当初は正直、天狗になってました」と笑いながら振り返る今岡。プロの下部組織でトップでやってきたから、試合にも出られて当然だろう。そんな気持ちを正してくれたのは永野悦次郎監督だった。長野監督は技術よりも、とにかく「人間性」を重視する監督だった。「僕が天狗になっているのも一発で見抜かれて。怒られて、怒られて、『謙虚な気持ちで頑張ろう』と思うことができました。1年生のはじめにそれに気づけたのは、すごく良かったと思います」。先輩たちも素晴らしい人間性の持ち主ばかり。彼らと戦うには、しっかりと人としての土台を固めていく必要があるな、ということにも気づけた。

「人間性」こそ重要。高校時代の教えは今にも生きている

挨拶はどんなときでも欠かさず。そしてサッカーノートを毎日監督に提出した。監督は部員80人弱のノートを確認し、誤字脱字もチェック。「そういうところを雑にするやつは、プレーにも出てきてるんだと言われました。高校3年間が今の自分の基礎を作ったと思います」

仲間の存在を糧にして

そうやって日々人間性を鍛えられていたからこそ、2年生で試合に出られないときもしっかりと考えることができた。「その時はチームの戦術にフィットしなくて、ベンチには入ってたんですが出場機会がほとんどなかったんです。めちゃくちゃ焦ってました。でもベンチにも入れない選手もたくさんいるし、こんなことでふてくされていたら人間性が欠けていると思われる、と思い直しました。(ベンチに入れない)彼らのためにもっと頑張らなきゃという気持ちになりました」

高校3年生の時は、ほとんどの試合にフル出場。しかし京産大に入学するとまた周りのレベルが上がり、3年生まではほとんど試合に出られなかった。メンタル的にもきつかった、と振り返るが、そのときに支えになったのは仲間の存在だ。同じ立場の者同士、お互い励ましあってみんなで高めあっていこう。チームにその雰囲気があったから今日までやってこられた。

自分には支えてくれる人達がいる。そう思うこと、それに気づくことで今岡はくじけそうなときもやってこられた。ラストイヤーの集大成はまもなく。全力で駆け抜ける。

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