サッカー

福岡大・谷川勇磨 アウトプットと振り返りが、課題を明確にしてくれる「教科書」に

ラストイヤー、プロを目指して努力をつづける谷川(写真はすべて本人提供)

福岡大学サッカー部で副キャプテンを務める谷川勇磨(4年、ヴィッセル神戸U-18)。最終学年のいま、プロを目指してサッカーにすべてをかけている。成長するために、自らの課題をどのように見つけ、向き合ってきたのだろうか。

諦めずに目標にたどりつく

小学校から高校までヴィッセル神戸の下部組織でプレーしていた谷川。常にトップチームが身近にある環境で、プロを目指すことはごく自然なことだった。しかし高校時代に、このままの実力ではプロに行けないと自らの立ち位置を悟り、大学に進むことに決めた。だが、入学前の合宿で右足のすねを骨折。入学からまる1年間、プレーができない状態が続いた。2年生になってけがが治っても、調子が上がらず。3年生では肉離れを2度も起こしてしまった。

ようやく昨年末に復帰し、3月13日にトップチームでデビュー。くしくもその日は、3年前に谷川がすねを骨折した日でもあった。「本当に苦しかったけど、目の前の瞬間に左右されることなく、諦めずに自分の目標から逆算すれば目指すところにたどり着けるんだという経験は、自分の財産になりました」

アウトプット、振り返りを繰り返して

谷川が目標にたどり着くために、高校から続けていることがある。毎日ノートを取ることだ。その日の自分の状態や、プレーの良し悪しを記録し続けている。サッカーだけではなく、本を読んで感じたこと、人と話して印象に残ったことなど、自分の力になりそうなことを記録し続けている。

「自分で教科書を作っていくイメージです。そこまで細かくやっているわけではないです。努力、継続することが一番だと思っていて、どんな形でもいいから少しずつ継続していく。悩んだ時に昔のノートを引っ張り出して、参考にしたりもできています」。そうして継続していることは、谷川の財産にもなり、自信にもつながっている。

自らの気になったことを書き出し、振り返ることでそれが「教科書」となる

しかしただアウトプットするだけではなく、振り返ることも重要だと考えている。「書くだけ、出すだけだと自分の力になっていかないと思います。出したものを取り込んでいく作業ができないと、何のために努力しているのかがわからなくなってきてしまうなと」

そうして積み重ねてきたノートは、谷川にとって「立ち返る場所」となった。調子が良くない時は、振り返りもじゅうぶんにできておらず、文字も雑だったりする。振り返りがちゃんとできて頭の中が整理できている時は、日常生活でも丁寧に過ごせていると感じる。サッカーの調子がいいときは、部屋もきれいに整っている。「だから逆に、部屋をきれいにすればサッカーも調子が良くなるのでは、と思っています。部屋もそうですし、道具を丁寧に扱うといったことも、プレーに直接つながっていないように見えてすべてがつながっていると思います」。インプット、アウトプット、振り返り。その繰り返しこそが日々の課題の発見、そして解決につながっている。

「伝え方」を常に考えながら

ヴィッセルのユース時代は小中高すべてでキャプテンを務めていた谷川には、周りの人のために動きたいという思いと同時に、「周りに影響を与える人間になっていきたい」という思いもある。後輩の相談にも積極的に乗ったり、コーチとも相談するなど、サッカーができなかった分、コミュニケーションの数が増え、「伝える」すべが身についた。「自分と似たような経験で迷っている選手がいたら、伝えられることはたくさんあるなと思っています。プレーできなくてグランドから一歩離れて見たことも、チームのためにできる限り伝えようと考えています」

サッカーで考え抜いたことはその後の人生にも役立つはずだ

3年生で肉離れをしてしまったときには、リハビリ中に自ら願い出て、学生コーチも経験。「こうしたほうがいい」と発信する側になって気づいたことがある。「選手の考えていること、育ってきた環境、それまでプレーしてきたチーム。それぞれバックグラウンドが違うので、そこを理解してどう伝えるか、ということを考えました」。それは学生コーチから選手に復帰した今でも生かされている。「なんでもかんでも言っても伝わるものではないなと。その選手にあった目線で、どう伝えるかが重要なんだと思います」。ある意味、サッカーをやめたあとでも応用できる考え方だと思います、ともつけ加える。

3年時にはもうプロは無理なのではとも考え、一時期は就活のための自己分析やOB訪問などもしていたという谷川。しかし就職活動をすればするほど、「サッカーでどこまでいけるか挑戦したい」という気持ちが大きくなっていった。「サッカーから離れていた時間がある分、思いがますます強くなって……あと1年、サッカーにすべてをかけようと決めました」

幼い頃からの夢、目標だったプロの世界。その扉をあけるため、谷川はラストイヤーを懸命に駆け抜けている。

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