バレー

特集:全日本バレー大学選手権2021

順天堂大が11年ぶりの決勝へ、高橋和幸主将が徹底したシンプルだけど強い“武器”

リベロで主将の高橋(右)を中心にチームは1つになり、11年ぶりの決勝を決めた(撮影・全て松永早弥香)

第74回 全日本大学男子選手権 準決勝

12月4日@大田区総合体育館(東京)
順天堂大学3(22-25.25-21.25-19.20-25.15-13)2筑波大学

12月4日の全日本インカレ準決勝で順天堂大学はフルセットの末に筑波大学を破り、11年ぶりの決勝進出を決めた。関東1部秋季リーグでは7位と満足いく結果ではなかったが、自分たちのバレーができれば優勝できる可能性も自信もある。リベロで主将の高橋和幸(4年、駿台学園)は大会前から公言していた。

「力が発揮できれば結果はついてくると思っていました。(準々決勝の)日体大に対しても徹底的に対策をして臨んだし、筑波に対してもどう戦うかめちゃくちゃ考えた。映像を見ていても、嫌になるぐらい相手の攻撃が強いんです。それでもサーブで乱すことができれば絶対にチャンスはくると思っていたし、クイックに対してもとにかくタッチを取りにいく。その結果、相手のミスにつながって、大事なところで岡野(恵大 3年、愛工大名電)のサーブも決まった。狙い通りの展開になりました」

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戦力は相手が上でも、絶対に勝機はある

日本代表選手どころか、大会プログラムの表紙や注目選手として取り上げられるような選手もいない。いわば“ダークホース”と言うべき存在のように見える。実際にエースの岡本捷吾(4年、開智)はこう言う。「個人の力も含めて、実力的に見れば昨日の日体、今日の筑波の方が圧倒的に上。でも戦力は相手が上でも、やるべきことを徹底してやれば絶対に勝機はある。そこをどう作れるかが勝負だと思っていました」

飛び抜けた選手がいるチームではないからこそ、何を“武器”として戦うか。全日本インカレに向けた短い時間だけでなく、今季のチームがスタートした段階から毎月必ずミーティングを行い、その都度課題を抽出してきた。ディフェンス面に関しては高橋が中心になり、ブロックとレシーブの連携を組み立てる。各々がやるべきことを明確にすべく、周囲に出す指示はシンプルなことばかりだった、と高橋は言う。

高橋は「責任は自分たち4年生が取る」という意識で後輩たちを引っ張ってきた

「ブロッカーに対しては、まずストレートを締めてクロスに打たせる。センターバック(のレシーブ)はこの位置に入って、ここまで自分が取るから、ライトバックはもう少し下がって、と簡単なことしか言いません。でもそれだけでできる選手が揃(そろ)っているので、データを分析して簡単に伝える。責任は自分たち4年生が取るから、後輩たちは楽しんでくれればいい。レシーブでつなげば、攻撃は岡本を中心にこっちが驚くようなプレーをする選手ばかりなので、安心して任せることができました」

相手が嫌がるプレーを全員で考え、練習から徹底

味方すら驚かせるプレー。まさにその言葉通り、どれほど堅守を誇ろうと相手より点数を取らなければ勝てない。そのために不可欠なのが攻撃力で、中心になったのが岡本だ。身長180cmとエースアタッカーとしては決して恵まれた高さがあるわけではないが、攻めるべきところとつなぐ場面を見極め、ここぞという時を逃がさず、着実に点を取る。自身が意識するだけでなく、チーム全体で共有してきた。

「ゲーム練習の時から『ここはつないだ方がいい』とか、『ここで勝負する』と口うるさく言ってきました。そのうち自分たちが言わなくても後輩も自然にやるようになったし、相手の攻撃に対してもただ見送るだけでなく、例え決められたとしてもブロックやレシーブで触りにいく。それだけでストレスがかかるし、守りから流れを作って、二段トスを打つ場面でも無理に勝負するのではなく、リバウンドを取ってもう1回つなぎ、万全の状態で勝負する。相手がどういうことをされるのが嫌かというのを全員で考え、練習から徹底した成果をこの2戦(準々決勝、準決勝)で出すことができました」

岡本が攻撃の軸となり、チームプレーで1点、また1点と得点を重ねた

準々決勝で勝利した日本体育大学戦や筑波大との準決勝、象徴的なプレーが何本もあった。染野輝(2年、駿台学園)が相手ブロックに当て、チャンスをつないで再び攻め、着実に決める。そうかと思えば、同じアウトサイドヒッターの金澤琉也(3年、足利工大付)が高いブロックに対し、叩(たた)きつけるのではなくブロッカーの手先や指先を狙い、うまくブロックに当てて飛ばす技ありのスパイクを放つ。準決勝の最終セット、10-8と順天堂大がリードした場面で見せた岡本のフェイントも、筑波大の陣形が強打に備える中、空いた中央のスペースに落とす。まさにしてやったりと言うべき1本でもあった。

11年ぶりの決勝は「楽しむ」気持ちも大切に

優勝候補と目された相手を立て続けに打破し、日本一まであと1勝。決勝で対するのは早稲田大学だ。昨年も準決勝に進出したが、なすすべもなく敗れた相手でもある。

1年を経て再戦する5連覇を狙う相手は、今年も強い相手であることに代わりはないが、ここまで接戦を勝ち抜いてきた自信だけでなく、ミーティングを繰り返して作り上げてきた“すべきバレーボール”が展開できれば、十分戦える手応えも感じている。何より、この2年間ほぼ限られた公式戦しかない中、ようやくたどり着いた全日本インカレの決勝。そんな絶好の舞台を、楽しまない理由はない。岡本が言った。

「ここまでやってきたことを発揮するのはもちろんですが、勝つ、勝つ、と結果ばかりを求めすぎるのではなく、いい雰囲気で楽しめればコートの中も明るくなる。みんなで声をかけ合って、盛り上げて、流れをつかみたいです」

相手が5連覇がかかった早稲田大であっても、これまでと変わらず自分たちのバレーを貫くだけだ

11年ぶりの頂点まであと1つ。最後までどれだけ“驚かせる”ことができるか。最高の舞台は整った。積み重ねた全てを発揮するだけだ。

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